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【発酵】東京唯一の“村”にある山奥パン屋さんの自家製酵母パン

島しょ部を除いた東京都では唯一の村・檜原村。その山の麓にある「まい酵母 たなごころ」は、酒まんじゅうからヒントを得た自家製酵母パンを15年以上つくり続けている。最近は薪窯や2棟目の宿泊コテージも完成して、自然豊かな環境に楽しくフルコミット中ということだ。

わざわざ行きたくなる、奥多摩のパン屋さん

「まい酵母 たなごころ」は“わざわざ”行く場所に建っている。三頭山(みとうさん)の麓、中央自動車道の上野原ICから約20kmに位置し、周囲をぐるりと山に囲まれ、眼下には南秋川のせせらぎが、頭上には鳥のさえずりが聞こえる東京とも思えないロケーションだ。

車で行くことをおすすめするが、公共の交通機関を使うなら、JR線武蔵五日市駅から1時間1本ペースの路線バスに約50分揺られなければならない。ロードバイクが好きという人なら、奥多摩の激坂や絶景を楽しみながら立ち寄るといった遊び方もおすすめ。実際、自転車好きの常連も多いのだとか。

行きにくい場所であることは否めないけれど、地元の人だけではなく遠方から訪れる人もあとを立たない。オープンから15年、山小屋のような佇まいはいっそう周囲に溶け込み、初めて訪れてもどこか懐かしさを覚える。

「ずっと土日だけのオープンでしたが、最近は週5日営業しています。2020年夏からは薪窯を使った手づくりピザも出しているんですよ。スタッフも私ひとりからピザ焼き職人とフロアスタッフの3人体制。コロナ禍でお客さんは減るどころか、増えている感じがします」

そう語る店主の井上百合子さんは、「もともとパン屋をやるつもりはなかった」と笑う。

パンづくりのきっかけは郷土の発酵菓子「酒まんじゅう」

もともとは檜原村の出身の井上さん。一度は村外に移り住んでいたが、ご主人が家業を継ぐため1994年にUターン。この地でお隣の山梨県上野原市(旧:棡原村)の名物「酒まんじゅう」がよくつくられていることに興味をもち、近所の女性たちに教わっては自身もつくっていたそう。

「おまんじゅうに使う酒種を使えばパンができるかも。そう思って1日だけパン教室に通って、あとは独学で試行錯誤しながらです。酒まんじゅうのつくり方が脈々と受け継がれているように、パンも昔ながらのシンプルな製法でつくりたくて、使うのは国産小麦と自然塩と酒種酵母だけ。使う素材はオーガニックが中心です。近所の人や友人につくってはあげていたのですが、いつしかみんなの喜ぶ顔が見たくてつくるようになっていました」

有機米に酒種酵母を加えた元種でつくる井上さんのパンは、素朴ながら噛むほどに小麦の風味、甘みが口の中に広がり、人気が人気を呼ぶまでに。周囲からの「お店を開いて」という声に押されて店舗開設に踏み切ったそうだ。

「主人が継いだ家業は、林業と燃料販売管理で、丁度、山で伐った間伐材を保管する『林場』(りんば)をつくろうとしていたところでした。そこをお店にしたいといって、広さ約5坪とテラス付きのお店を2年がかりで完成させました」

「パンを買う」プラスαの楽しみも発酵中

2006年オープン当初はブログ全盛期で、ロードバイクでツーリングに来た人に次々とブログで紹介されたことから、一気に全国規模で知れわたった。井上さんとご主人も、パンを買うだけではなく自然豊かな環境をもっと楽しんでもらえたらと、敷地内に宿泊コテージを増設。バーベキューや川遊びが楽しめる「たなごころビレッジ」へと発展させていった。

「薪窯と同時期にもう一棟、東京観光財団の助成金を活用して、愛犬と泊まれる一棟貸しコテージもつくりました。サウナブームに乗っかってサウナ環境を整えようかなと計画中です(笑)」

敷地内で育っている約30本のブルーベリーをパンやジュースに使ったり、手づくりのおかめ笹のカゴにパンを並べたりと、パン以外にも井上さんの“手づくり”がそこかしこに見られる。

「お店が木造なので酵母菌がお店に住み着いているのか、一年を通して発酵がスムーズです。ぷくぷくと元気に発酵するパンから、私も日々元気をもらっています。この環境だからできることをお客さん、スタッフと一緒になって、これからも楽しんでいきたいです」

地元の「酒まんじゅう」という発酵食文化を独自にパンづくりに発展させ、さらに「食」だけではなく「住」も体験できるようにとコテージもある「たなごころ」。テラス席でせせらぎを聞きながらパンを頬張るだけでも至福のひとときだが、川遊びやバーベキュー、そしてサウナ(仮)など多彩な“楽しい”がまだまだ増えていきそうだ。

■DATA
「まい酵母パン たなごころ」
東京都西多摩郡檜原村人里2100-1
営業時間:10:00〜18:00(冬季は17:00まで)
定休日:月、火曜(祝日の場合は営業。翌日休み。冬季は定休日変更の場合あり)
TEL.042-598-6307
https://www.tanagokoro.biz

⽇本⾷の未来地図をデザインするために、発酵醸造に特化したシンポジウム。「Fermentation Future Forum(F3)」が2022年再始動します。
http://fermentationfutureforum.org/

当記事に掲載されている情報は、2017年にスタートした「F3|発酵醸造未来
フォーラム」の活動で取材された当時のものです。

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buono 編集部

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使う道具や食材にこだわり、一歩進んだ料理で誰かをよろこばせたい。そんな料理ギークな男性に向けた、斬新な視点で食の楽しさを提案するフードエンターテイメントマガジン。

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