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荻窪圭のマップアプリ放浪「台風19号の被害とiPad地図アプリ。地形と歴史で知る水害危険度」

2019年に甚大な被害をもたらした台風19号。今後温暖化の進行とともにより大きな台風の襲来が予想されるという。僕らの住む土地が安全かどうかは、実はiOSのアプリで分かると荻窪圭氏は言う。『スーパー地形』がそのアプリだ。『スーパー地形』を使って、高低差や、その土地が何に使われていたかの歴史を見れば、どんな性質を持つ土地なのか一目瞭然で分かるはずだ。流言に惑わされず、自分で見て判断しよう。

あぶない地形は地図アプリでわかる

2019年10月の台風による被害はデカかった。被害に遭われた方、お見舞い申し上げます。

これだけたくさんの地域に被害があると、自分が住んでいる土地がどんな場所なのか、安全なのかそうじゃないのか、高所なのか低地なのか、気になるよね。

そんなときは地図アプリの出番。

でもGoogleMapはダメ。重要なのは『地形』と『その土地の歴史』だからだ。その両方を見せてくれる都合のよい地図アプリなんてあるのか。

あるのだ。それは『スーパー地形』という。

まずこのアプリで表示した下の地形図を見て欲しい。東京都周辺の地形だ。見事に台地と低地に分かれてる。

『スーパー地形』で表示した東京周辺の地形。東京と千葉の間にある低地が埼玉の方まで伸びる。

これに地図と合成したものを用意した。

隅田川や荒川が流れている東京と千葉の間が低地(東京低地と呼ばれている)なのは有名だが、実はこの低地、内陸部の方までずっと続いているのである。

スーパー地形は今の地形に様々な地図を自由に選択して、重ねて表示できるのがウリだ。地形図に国土地理院の地図を重ねると、実は埼玉県南部は低地だったことがわかる。かつては水害も多かったのだ。

海から離れるほど標高は高いと思われがちだが、実は東京都新宿区より埼玉県越谷市や蕨市の方が海から遠いにもかかわらず標高は低いのである。そういうことはGoogleMapを見てもわからないけど、『スーパー地形』なら一目瞭然だ。

田園調布は低地?それとも高台?

台風19号で被害に遭ったところ……は無数にあるのだけれども、話題になった箇所をふたつ見てみよう。

まずはネタにされやすい『田園調布』。田園調布で浸水があった、と話題になった。田園調布は高級住宅地なのになぜ?

現在の田園調布の駅前。高台にある駅前近くには本当に高級そうで、名家の方が住んでいそうな最近のものではない豪邸が並ぶ。

さあ『スーパー地形』の出番だ。iPhone版で『田園調布』の地図を表示してみよう。

ひと口に田園調布といっても、五丁目まであり、その北には『玉川田園調布』、南東には『田園調布本町』や『田園調布南』もある。みんなよほど『田園調布』を名乗りたかったのだな。

で、今回浸水したのは『田園調布五丁目』だ。地形図と重ねてあるので、田園調布三丁目は高台だけど、五丁目は多摩川沿いの低地を含んでいることがわかる。

多摩川沿いってヤバそうだよね。

『スーパー地形』がスゴいのは、オンラインで公開されている各種地図データに対応していること。明治前期の地図と地形を重ねてみよう。

(左)『関東迅速』が『明治時代に作られた関東地方の地図』。これが一番古い地図になる。
(右)重ねる地図を明治14年頃の地図に切り替えてみた。田園調布周辺は田畑で小さな谷が多かったことがわかる。
田園調布駅と周辺を『スーパー地形+地図』で。色や陰影で高低差がわかる。駅前の扇形の土地が本来の田園調布。

すると、今回浸水したあたりは崖下の細い川(丸子川)と多摩川に挟まれた水田地帯だったことがわかる。ふたつの川に挟まれた水田地帯……専門知識がなくてもあぶなそうだ。

明治時代前期では今と違いすぎるので1920年代ごろに『田園調布』ができる、その前と後の地図を並べてみた。田園調布は、高台の何もないところを開発した分譲地の名前だったのがよくわかる。有名になりすぎて、本来の田園調布以外も周辺のエリアを『田園調布にしちゃった』から話がややこしくなったのだ。

昔の地図+地形を見るとそれがよくわかる。

(左)『今昔/首都』は埼玉大学谷謙二研究室が公開する『今昔マップ』。これが素晴らしい。
(右)『今昔マップ』は各年代の地図が用意されているので見たい時代を選ぶ。
(左)1917~1924年頃の田園調布。まだ開発されておらず民家も少なかったはずだ。住所も『調布村』と記されている。
(右)1927~1939年になると田園調布が分譲され東急線も敷かれた今の形に近いが、民家は少なく住所も『東調布町』だ。

川崎市民ミュージアムの残念な失敗

現在の等々力緑地。工事中の場所が多いが大半は、低く、競技場やグラウンドや公園になっている。ミュージアムにも良い土地に見えるが、水害は想定しておくべきだった。

もうひとつ多摩川沿いで起きた悲劇を紹介したい。等々力緑地にあった『川崎市民ミュージアム』の地下に浸水し、古文書や絵画、漫画など多くの収蔵品が被害を受けた件だ。なぜそんなことに?

スーパー地形で川崎市民ミュージアムがあった場所を見てみよう。

等々力緑地あたりの『スーパー地形+地図』。等々力緑地の中にミュージアムがある。対岸が田園調布五丁目。

ミュージアムは等々力陸上競技場(川崎フロンターレの本拠地)や池などがある等々力緑地の一角にある。そして、地面の色が多摩川の川原と同じだ。

なぜなのか。古地図で見るとよくわかる。

同じ場所の明治後期の地図。なんとかつての府県境はここにあり、周りの道路は多摩川の堤防だったということがわかる!

ここは『もともと多摩川が大きく蛇行していた名残り』であり、等々力緑地はかつて『多摩川の堤防の内側』にあったのだ。これ、誰が見ても何かあったら水没しやすい低地ってわかるよね。

まさかそこに建てたミュージアムの地下収蔵庫に浸水対策を取っていなかったとは……信じられない。

『スーパー地形』はハザードマップも重ねてみることができる。川崎市民ミュージアムのある等々力緑地は……案の定真っ赤でした。ヤバすぎる。このように『スーパー地形』の地図は地味だし、流行の店やランドマークはわからないけれども『地形』と『歴史』を可視化してくれる。

ハザードマップを重ねて見ると、等々力緑地は見事に真っ赤。そもそも水害の危険性が非常に高い場所だったのだ。

どこは安全、どこは危険っていう情報に振り回される暇があったら、自分がどういうところに住んでいてそこは昔何に使われていた土地だったかをこのアプリでチェックすべし、である。

今回紹介した地図アプリは「スーパー地形」

『カシミール3D』を開発したDAN杉本氏が手がけた地図アプリ。地形や各種地図を重ねて見られる他GPSログ機能もある。
「スーパー地形」
販売元:Tomohiko Sugimoto 取材時のバージョン:4.0.6
価格:無料(App内課金、機能制限解除980円)

■App Storeで「スーパー地形」をダウンロード
■Google Playで「スーパー地形」をダウンロード

(この記事は『flick! 2019年12月』に掲載された「荻窪 圭のマップアプリ放浪」を再編集したものです)

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PROFILE

荻窪 圭

flick! / ライター

荻窪 圭

老舗のIT系ライター、デジカメライターなるも、趣味が高じて『古地図と地形図で楽しむ東京の神社』(光文社知恵の森文庫)など歴史散歩本執筆や新潮社の野外講座『東京古道散歩』講師なども手がける。 https://ogikubokei.blogspot.com/

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老舗のIT系ライター、デジカメライターなるも、趣味が高じて『古地図と地形図で楽しむ東京の神社』(光文社知恵の森文庫)など歴史散歩本執筆や新潮社の野外講座『東京古道散歩』講師なども手がける。 https://ogikubokei.blogspot.com/

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