荻窪圭のマップアプリ放浪「iPhoneで、ご近所痕跡探し散歩のすすめ」
荻窪圭
- 2020年09月30日
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外出はできない。でもじっとしていては身体がなまる、ってんで誰にも会わず人混みにもいかない、『密』ならぬ『疎』な散歩(あるいはウォーキング)が増えてる昨今。
どうせならiPhone を手にもっと密度の濃い『疎』な散歩をしよう、である。勝手知ったる地元でもちょっと視点を変えればそこは小さな歴史の宝庫。まさに『灯台もと暗し』。
そんなご近所散歩をより深く楽しむためのあれこれを紹介したい。
歩く道にテーマを設けるべし
我々が歩くのは道である。そうじゃないところを歩くと不審者として通報されたりする。それは困る。
無数にある道から何らかの基準で歩くルートを決めるとそこにテーマが発生する。
お勧めは3つ。ひとつは『古い道』、ひとつは『暗渠』、ひとつは『制覇』だ。
古道と古地図で歩く
住んでる場所にもよるが、昔からの道ってけっこう残っているもの。『スーパー地形』の『今昔マップ』から明治時代の地図でも開いて当時の道筋をできるだけ辿ればそのまま『ご近所歴史散歩』だ。道のないところに集落なし、道を作ったことにより人や物資が行き来して初めて歴史が始まるのだ、と思うと、昔の人と同じ道を歩くのは感慨深いのである。
面白いことに古い道の方が歩いていて気持ちいいのである。光景に旧家が多くて道がナチュラルにカーブしてて落ち着くからかも。たとえば上の写真。明治以前の道と戦後以降の道。写真は平行して走る2本の道だけど、違うでしょ。新しい道の方がまっすぐで味気ない。
暗渠を歩く
10年以上前、どっかの記事で何気なく『暗渠』と書いたら、編集者から「読めない人が多いと思うので簡単な解説を入れてください」と言われた。でも今はすっかりメジャーになった。ほぼブラタモリのおかげだ。暗渠は『川や水路に蓋をした』ものだ。
自然河川の川跡はくねくね曲がってて、幅が狭く歩行者専用道になりやすく、起伏が少ないなど「歩きやすくて探検感を味わえる」のが良い。
もうひとつの良さは「方向感覚が狂いやすい」こと。何しろ川なのだからあっち曲がったりこっち曲がったりするうちに自分がどっちを向いてるのかわからなくなる。これもまた『探検感』が増す。
家を出たら適当に歩き、暗渠っぽいところを見つけたらそちらに進入するのがよい。ときどき橋の欄干が残ってたり、古い護岸跡があったりするのもまたよし。
地図を赤く塗りつぶせ
どうせなら、近所の道を全制覇しちゃえ、というのも楽しい。『スーパー地形』はGPSログ(トラックログ)機能がある。これをオンにして歩くと地図上に軌跡が記録されるのだが、軌跡を『非表示』にしない限り、どんどん重なっていくのだ。そうすると『一度でも歩いた道には赤い線』が敷かれる。同じ道を何度も歩くと色が濃くなる。だから家の近くは真っ赤になる。で、徐々に『まだ歩いてない道』も赤く染めたくなるのだ。
衝撃だったのは『東京電柱クロニクル学会』(電柱マニアな人たち)の人と歩いたとき。彼らが見るのは電柱の『番札』。それは電柱に付けられた名前。電力会社やNTT(昔の電電公社、さらに昔は逓信省)が電柱を管理するために名前をつけているのだが、その名はずっと変わらないので、今は失われた古い地名、さらには個人名や施設名が残ってたりするのだ。
電話がレアだった頃、その地域で最初に電話を敷いた施設や旧家の名前がそのまま使われたのかと思う。たとえば港区の乃木坂駅近くに『聖路加支』という番札がある。なぜそこに聖路加? と、戦前の地図にあたると近くに『聖路加支院』があったのだ。歴史発掘の瞬間である。
街で見かけた何に心惹かれるかはほんとに千差万別なので、自分の琴線に触れるものを見つけるべし。
世の中にはマンホール好き、電線好き、団地好き、境界好き、建築好き、擁壁好き、路上猫好き、送水口好きなどいっぱいいるのだ。そうやって観察眼を養えば、どこを歩いても楽しくなるのだ。
ご近所痕跡探し散歩を楽しむコツ
どこを見て歩く?
ご近所散歩を楽しむには、小さい秋みつけたレベルの発見が大切。なんてことない住宅地にも発見はある。
プチ史跡……なんて言葉はないけれども、地図に載ってないような小さな神社、なんてことない狭い道路の脇に残る野仏(庚申塔や地蔵、道祖神などさまざま)、江戸時代の道標といったものを勝手にそう呼んでいる。ささやかなな歴史の痕跡だ。明治以降の痕跡も人によってすごく興味深いものになる。軍事遺構好きは、軍の境界標を見逃さない。戦前、軍の敷地を示していた石標に現存しているものがいくつか残っている。旧家があると表札に目が行く人もいる。古い住所が残っていることがあるからだ。
iPhoneとスーパー地形を組み合わせれば最強
今回使った写真はすべてiPhoneで撮ったもの。なぜなら、iPhoneで撮った写真には位置情報がつき、写真から撮影場所を調べたり、撮影地の地図から写真を探せるからだ。散歩して撮り続けるだけで、自分だけの画像記録になる。しかもスーパー地形のログ機能を組み合わせれば、軌跡に合わせて撮った写真を表示することもできる。地形や古地図に合わせて写真を表示すればそのまま歴史散歩記録だ。
今回紹介した地図アプリは「スーパー地形」
『カシミール3D』を開発したDAN杉本氏が手がけた地図アプリ。地形や各種地図を重ねて見られる他GPSログ機能もある。
「スーパー地形」
販売元:Tomohiko Sugimoto 取材時のバージョン:4.0.6
価格:無料(App内課金、機能制限解除980円)
■App Storeで「スーパー地形」をダウンロード
■Google Playで「スーパー地形」をダウンロード
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(この記事は『flick! 2020年6月』に掲載された「荻窪 圭のマップアプリ放浪」を再編集したものです)
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