【新城譲】新感覚サーファーが考えるマジックボードとは
FUNQ NALU 編集部
- 2021年09月20日
『マジックボード』。それは、外見上のアウトラインやロッカー、さらにデータ上の数値といったものでは計り知れないような、特別なフィーリングを伴ったサーファーとサーフボードとの一期一会の出合いである。そして時に、自分や自分の周りの者達の人生までをも一変させてしまうような、強烈な体験となるのだ。そこで、著名なサーファー達が経験した『マジックボード』との出合いやストーリーに耳を傾けてみた。
湘南・片瀬海岸に従来とは異なる自由なコンセプトのサーフコミュニティを作り出そうとしている新城譲。新感覚サーファーが考えるマジックボードとは。
◎出典: NALU(ナルー)no.121_2021年7月号
どんな波でも、技が安定してかけられる。ボードが自分を助けてくれる。
マジックボードの基準。それはサーファーによって異なるだろう。サーフボードに求める条件や性能が乗り手によって違うからだ。新城譲は過去を振り返ると、多くのマジックボードに出合ってきたと語る。
「その時期によって、自分がやりたいサーフィンや思い描くサーファー像、目指したいスタイルが変わってくるんです。その時にフィットしているボードが、僕にとってのマジックボードなので、結構ありますね」
だが、現在も手元に残っているボードはゼロだ。
「僕は基本的に過去のものを残さない性格なんです。どんどん先に進んでいってまた新しいものを作り上げたいので、人に譲ってしまうことが多いんです」
▲「サーフィンの枠を作りたくない」と語る新城。「3本のフィンはダサいとか、シングルフィンだから格好いい、というような考え方はしません」
とはいえ、新城にとってのマジックボードの定義はブレることはない。
「調子がいいというのはもちろんですが、僕にとっては、いつ乗っても、どんな波でも、技が安定してかけられるボードですね。ボードが助けてくれる、と言うんですかね」
ボードが助けてくれる。一般のサーファーには少々わかりにくい表現だが、具体的にはどのようなことだろうか。
「調子がいいボードは、それなりにクセがなくて乗りやすくて、ストレスは少ないんです。だけど、ある程度、例えばテイクオフの角度だったりとか、自分で考えて部分部分である程度調整しながら乗っていきます。ですが、『マジックボード』は、そのストレスが全くない。何がいいのかわからないんですけど、ボード自体が自分の思い描く方に行ってくれたり、自分が思っているラインを超えてくる動きをしてきてくれる。例えば、ロングでいうとノーズライディングで調子いいボードでは普段板が浮かないところが、いきなり浮いてきてくれるとか。結果、技がどんどんかけられる」
なるほど。マジックボードは、サーファーの意志にこたえて忠実に動くだけでなく、乗り手の想像を超えて、サーファーのポテンシャルを引き出してくれるということか。そんなボードに出合えたら、どんなにラッキーだろうか。だが、現在の新城のマジックボードであるTappyシェイプとの出合いを聞くと、巡り合いは偶然の産物でもあるようだ。
▲クラブ員の誰が乗っても調子がいいと言う「EVENFLOW」。シェイプもする新城だが、同じように削ってもフィーリングを再現するのは難しいそう
「シェイプルームでTappyと相談をしながら、シェイプしてもらったんです。ただ仕上がったら、自分がイメージしていた厚さとかと違ったんですよ。実は、失敗したなって思っていた板で。もう1本、違うタイプも作っていて、そっちの方が自分はズバッて来ていたんですよ。こっちは手直ししないとって正直思っていたんですけど、千葉の一宮で下ろしたら、すごく調子よくて。9’7”なんですけど、長さも感じないし、フレックスの柔らかいレスポンスもほどよくあって、1発目からハングテンがめちゃめちゃ簡単に決まったんですよ。何本乗っても、ハングファイブじゃなくて全部ハングテン、全部ができて。初下ろしにしてはいつもと違う感覚でしたね」
こんなマジックボードに出合えたら、どんなに波乗りが楽しくなることだろう。こればかりはサーフィンの神様のご褒美を待つしかない。日々、海の中で精進しつつ。
Profile
1983年生まれ、神奈川県出身。2000年JPSAロングボードプロトライアルに合格し、当時最年少プロとしてデビュー。コンペティションで活動した後に、活躍の場を海外に広げる。従来のサーフショップとはコンセプトが異なる「ZLAND」を片瀬海岸でオープン。またシェイパーTAPPYとコラボして「TRANSISTOR BRAND」レーベルのボードをプロデュース。後進の育成にも力を入れて、新しいサーフコミュニティ作りを目指す。
▲「TRANSISTOR BRAND」から「EVENFLOW」モデルとしてリリースされている
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FUNQ NALU 編集部
テーマは「THE ART OF SURFING」。波との出会いは一期一会。そんな儚くも美しい波を心から愛するサーファーたちの、心揺さぶる会心のフォトが満載のサーフマガジン。
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