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ジェリーロペスが語る「バド・ブラウン」との物語|PART3

サーフィンの神様とまで言われ、世界中から尊敬を集め慕われ続けるジェリー・ロペス。そんな彼は、ストーリーテラーとしても貴重な存在である。めったにメディアには出てこないが、サーフィンの歴史に大きな影響を与えたサーファー達や海から学ぶ様々な教えを、シンプルな文体で私達に伝えてくれる。早速、その物語に耳を傾けてみよう。
◎出典: NALU(ナルー)no.120_2021年4月号

晩年のバド。友人たちと久しぶりの再会

2008年、バドの友人たちであり数十年に渡って作られていた彼の多くのフィルムに出てくる出演者、ウルター・ホフマン、フレッド・バンダイク、ピーター・コール、ジョン・ペック、そして私はバドの功績を讃えるためにサンルイスオビスポ映画祭に集まった。これをオーガナイズしたのはアナ・トレント・ムーアで、彼女の両親バジー・トレントとバイオレットはバドの親友であった。バドはとてつもなく独立心が強く、なんでも自分でやってのけた人物だったが90代半ばになると少しスピードが落ちてきた。両親が親しかった心優しい友人、そして自分が子供の頃かわいがってもらったことを思い出し、アナはバドのケアギバー、介護士となった。
バドは目が見えなくなっていたが、頭は以前と変わらずシャープ、もしくは目が見えない分さらに鋭くなったか、少なくとも聴力はより増したかのようだった。なぜなら私が会いに行った時、「Hi Bud」と声を出しただけで彼は「Hi Gerry」と返して来たからだ。一言だけでそれが私だとわかったようだった。
私たちは皆何十年もバドと一緒に撮影してきた仲間だったので座り込んで当時の素晴らしい思い出を語り合った。

バドに見出されたジョン・ペック

バドはある朝フォスタービレッジに行こうとしていて、当時18歳だったジョン・ペックが住んでいた家を探そうとしていた。やっと見つけたら、今度は彼を起こさなくてはならなかった。そして彼がやっと起きたら、彼をパイプラインに連れて行き、早く沖にパドルアウトしなさいと言わなくてはならなかった。けれどその日そこで若きジョン・ペックは今でも語り継がれる彼の評判を勝ち取り、その後もその伝説は続いた。それはバドがその彼のパフォーマンスを撮り続けたおかげなのだ。フィル・エドワーズが初めてパイプラインで波に乗り、あの場所の氷を割ったのが1961年 だった。最初の波を岸まで乗りつないだ時、他の サーファー達が、彼に続けとすでにパドルアウトし始めていたという。フィルはその翌年1962 年の話を聞かせてくれた。彼とマイク・ディフェンダーファーがビーチに家を借り、そこのバックポーチからはビールを飲みながらパイプラインを眺めることができたそうだ。本当にたくさんのサーファーがパイプラインで自分の運を試したが、ペックとブッチ・バン・アーツダレン以外はまともに乗ることができなかったとか、ブッチとジョンがお互いをプッシュしあって相手より奥に行こうとしたり、長くストールさせたりしようとしていたことも話してくれた。
バドはブッチがパイプで初めてチューブに乗った時も撮影していたし、ジョンがバックサイドでレールグラブをして乗っていたのも撮影していた。バドの映像はその後何年にも渡って彼らの後に続こうとするサーファー達にどうやったらいいのかのビジョンを与えてくれた。

レジェンドサーファーたちの思い出

ウオルター(ホフマンファビリックの創始者であり、ビッグウェイブサーフィンのパイオニアの一人)はバドとジョージ・ダウニング(エディーアイカウコンテストのディレクター、レジェンドビッグウェイブサーファー、ウォーターマンのハワイアン)と一緒にグラビー・クラーク(クラークフォームの創始者)のボートに乗ってメキシコ国境近くティワナの干潟近くに潜りに行った時のことを話してくれた。バドは他の3人があまりの寒さにボートに戻ってあったまろうとしているのに、一人で泳いでいた。バドが海面に上がって来て、何かをリーフの洞穴で見つけたからそれを取るのを手伝ってくれとウオルターに頼んだ。彼が穴の中に泳いで入っていくから左足を左右に振っらウオルターがその足首を掴んで引っ張りあげてくれと頼んだ。ウオルターは彼について深く深く潜って行き、限界まで潜った、そこからさらにバドは穴に潜り込み見えなくなった。ウオルターは彼に続くしかなかった。バドはその後もさらに深くまで泳ぎ続けやっと止まった。バドが左足を振ってるのが見えたとき、ウオルターはあまりに深いところまで来ていて真っ暗で息ももたないくらいになっていたのでパニック寸前だったという。とにかく必死の思いでバドの両足首を掴みバドを後ろ向きに引っ張り上げた。穴から体が抜けた瞬間ウオルターは手を離し息を吸うために必死で海面へとのぼっていった。彼が浮かび上がったすぐ横にボートは停泊しており、グラビーとジョージが船からのり出すように覗き込んでいた。

バドは唯一無二の存在

「何を見つけたんだ?」二人は興味津々だった。ウオルターはボートに捕まり必死で息を整えながら答えた。
「わかんないよ、そんな深くまで俺は行けなかったから」

「で、やつはどこなんだ?」
彼らは尋ねた。
「わからない、僕は彼を洞穴から引っ張りあげなきゃならなかったんだけど、その後息が続かなくてのぼってきた」
やっとその時になって、バドは海面に顔を出した。そして彼らに手伝ってくれ、と声をかけた。そして手にした今まで見たこともないような巨大なロブスターを引っ張りあげて見せた。

「バド、あのロブスター覚えてるかい?」
ウオルターは尋ねた。
聴いていた僕らは周りでその話に魔法にかかったように呆けていた。

「ああ、あれは結構大きかったな」
バドはほんの少し口元を緩めて答えた。

ああ、まさにバドらしい対応。なんて男なんだ。もうこの時代にはあんなタイプは存在しなくなった。

出典

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FUNQ NALU 編集部

FUNQ NALU 編集部

テーマは「THE ART OF SURFING」。波との出会いは一期一会。そんな儚くも美しい波を心から愛するサーファーたちの、心揺さぶる会心のフォトが満載のサーフマガジン。

FUNQ NALU 編集部の記事一覧

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