
いつまでも気持ちよくクライミングを楽しむために。マイトイレキットを忍ばせて|筆とまなざし#413

成瀬洋平
- 2025年03月12日
岩場利用者が考えるべき、し尿問題
いまどき、近郊の岩場にクライミングに出かけるなら携帯トイレは必須アイテムといっていいだろう。岩場のアクセス問題の最たるものが駐車場とし尿問題。岩場は民家の近くだったり地元住民の水源地だったりそもそも個人の私有地だったりする。知らない連中がやってきて自分の山に野糞を垂れていくなど、土地所有者の立場から考えれば憤慨ものである。岩場が臭くなるのはクライマーとしてもごめんだ。自然に還るものではあるけれど、クライマー人口が大幅に増加した昨今、以前よりもオーバーユースには気をつけたい。
そういう自分も、携帯トイレを持参するようになったのは比較的最近のことである。昨年訪れたシャモニには、氷河でのキャンプ用にモンベルの「 O.D.トイレキット」を持参した。氷河では排泄物は分解されにくく、大きな問題となっていると耳にしたからだ(実際、氷河と岩壁との間の窪地がキジ場となっていて汚かった)。モンベルの携帯トイレはとても優れていた。持ち運びもコンパクトで使いやすく、ジッパー袋が丈夫で匂いも漏れない。ただし1回分330円とそれなりの金額がするので、日常的なクライミング(といっても毎回使うわけではないが)には少しもったいない。そこで便利なのが百均の携帯トイレである。
百均の携帯トイレが経済的で日帰りに携行しやすい
昨今の百均は防災グッズも充実していて、携帯トイレも防災コーナーに置いてある。1回分で税込110円だが10回分入りで550円というものもあり、これなら常用するのにも苦にならない。防臭袋が小さいので別に大きなものを購入し、ストックバッグに一回分をまとめて入れておけば携行しやすい。袋に耐久性がないため長期間の山行には向かないが、日帰りのフリークライミングなら十分である。
ちなみに、イタリアの岩場は所構わずキジ場となっていて閉口した。しかもトイレットペーパーがそのまま捨てあって、まるで白い花が群生しているかと見間違うほどなのである。中世ヨーロッパでは窓から道に人糞が投げ捨てられていたという話もあるが、文化の違いとせずにイタリア人ももう少し意識を高くしてほしいものである。
岩場のアクセス問題はいろいろと取り沙汰されるが、携帯トイレの話題はほとんど聞かない。いつまでも気持ちよくクライミング(アウトドアスポーツ)を楽しむためにも、バックパックの雨蓋にマイトイレキットを忍ばせておきたい。
著者:ライター・絵描き・クライマー/成瀬洋平
1982年岐阜県生まれ、在住。 山やクライミングでのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作したアトリエ小屋で制作に取り組みながら、地元の岩場に通い、各地へクライミングトリップに出かけるのが楽しみ。日本山岳ガイド協会認定フリークライミングインストラクターでもあり、クライミング講習会も行なっている。
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