
宮崎県・比叡山にあるエンドウォールへクラック合宿へ|筆とまなざし#414

成瀬洋平
- 2025年03月19日
2023年に新しく開拓された、クラック練習に適した岩場
宮崎県比叡山にあるエンドウォールは、2023年に公開された新しい岩場である。比叡山、矢筈岳、鉾岳、大崩山、行縢山、宮崎県北部にはスケールの大きな岩壁を持つ山がたくさんあり、古くからマルチピッチルートを中心として登られてきた。近年はボルダリングが有名で海外のエリアにも勝るとも劣らない規模と質のボルダリング課題が人気である。
トポによると、九州ではクラックのある岩場はアプローチが遠く、クラック(トラッド)クライミング自体あまり馴染みがないらしい。そもそも九州にはルートクライマーが少なく、クラックを登る人はさらに少ないと耳にしたことがある。アプローチが近くてクラックの練習に適した岩場を。エンドウォールはそんな思いで開拓されたということである。
先週、そんなエンドウォールへ「クラック合宿」と銘打って講習会に出かけた。生憎、4日間の滞在期間はずっと雨予報。出発まで天気予報と睨めっこをするが、飛行機のチケットも取っているしジタバタしたって仕方がない。とにかく行ってしまえと、セントレア中部国際空港から宮崎ブーゲンビリア空港へと飛んだ。
宮崎空港に降り立ったのは午後9時をすぎていた。夜にも関わらず気温が10度以上で南国感を味わう。空港からレンタカーを借りるのだが、通常のレンタカー会社はすでに営業時間をすぎていて借りられない。いろいろなサイトで探していると、サーファー向けのレンタカー会社があり、夜でも借りられることがわかった。しかもほかのレンタカー会社よりも安くてありがたい。預け荷物を受け取ってスタッフに電話するとすぐに落ち合うことができた。30代くらいのスタッフの男性は色黒でロン毛。見るからにサーファーという出立である。このレンタカー会社は車中泊仕様のレンタカーも取り扱っていて、なかには走行距離36万キロの改造されたトヨタ・デリボーイもあったりする。ぼくらはシルバーのトヨタ・ヴォクシーを借りたのだが、ギアを満載したダッフルバッグも余裕で詰め込めてとても快適。宮崎へクライミングや登山に行かれる際はおすすめなレンタカー会社である(https://www.surfersrentacar.net)。
夜道を走って拠点となる延岡市の宿へ。翌朝、市街地から車を走らせると深い谷を挟んで左右に大きな岩壁を有した山が現れた。比叡山と矢筈岳である。安直な表現だが、まるで海外のような風景である。道はその深い谷に沿って車一台がようやく通れるほどの細さになった。途中で集落を幾つか通りすぎるのだが、古い家や段々畑の向こうにふたつの山がそびえる光景はまるで桃源郷で、運転しながらしばし見惚れてしまう。車はさらにくねくね道を通り、岩をくり抜いて作られたトンネルを抜けるとそこが岩場の駐車場だった。(次回へ続く)
著者:ライター・絵描き・クライマー/成瀬洋平
1982年岐阜県生まれ、在住。 山やクライミングでのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作したアトリエ小屋で制作に取り組みながら、地元の岩場に通い、各地へクライミングトリップに出かけるのが楽しみ。日本山岳ガイド協会認定フリークライミングインストラクターでもあり、クライミング講習会も行なっている。
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