
【山小屋泊登山】目の前は黒部川。うれしいリバー・ビュー。「薬師沢小屋」|北アルプス山小屋大全

PEAKS 編集部
- 2025年05月09日
INDEX
北アルプスの中でも特別に“キャラが立っている”小屋だろう。なにしろ小屋の位置は黒部源流部。狭い谷間にある小屋は北アルプスでは珍しく、川が増水して困ることはあっても、稜線上の小屋のように水不足で苦しむことはない。強い雨が降ると沢には滝のように水が流れ込み、その荒々しい風景が小屋の中からも眺められるほどだ。そんな険しい地形に建設した小屋は小規模にならざるを得ず、小屋内は広いとはいえないが、そのぶんだけアットホーム。登山客以外に釣り人にもリピーターが多く、食堂やテラスでの会話が弾む。
注意したいのは、この小屋へのアプローチ。黒部川に吊り橋はかかっているものの河床を歩く場所もわずかにあり、雲ノ平から下ってくると、小屋の前まで来ながら増水した黒部川を渡れないこともある。状況判断が重要だ。
\スタッフボイス/
黒部源流部の水の景色が楽しめる小屋です。沢登りや釣り人も多いですが、釣りをしなくても吊り橋の上から黒部源流のイワナが泳いでいる姿を眺められますよ!
インフォメーション
テント場 | 個室 | 自炊室 | 乾燥室 | お風呂 | 生ビール |
ー | ー | ◯ | ◯ | ー | ー |
ドコモ | au | ソフトバンク | 楽天 | 公衆電話 |
× | × | × | × | × |
■連絡先
076-482-1418
https://ltaro.com/lodge/yakushizawa-goya/
■営業時間
7月1日~10月10日
■収容人数
60人
■標高
1,920m
■宿泊料金
1泊2食:¥13,000
1泊夕食:¥12,000
1泊朝食:¥10,000
素泊まり:¥8,000
お弁当:¥1,300
※上記の小学生:80%、幼児50%
■水
無料
館内施設
1.雰囲気がよい食堂
谷間にある小屋は暗くなるのが早いが、暖かな光で満ちる食堂は宿泊者のオアシス。スペースには限りがあり、食事の際は少々狭いが、だからこそ宿泊者同士がなじみやすい
2.小屋前のテラス
険しい地形をカバーするように、完全に板張りにして作り上げられた開放的な空間。黒部川を渡る吊り橋の真ん前でもあり、記念写真を撮る人でにぎやかだ
3.玄関奥の受付
テラスとつながった玄関口。ここにはテレビも置かれていて、天気の情報などを流している。ここを通過するだけの登山者でも立ち寄り、最新の情報を得たい
4.小屋前に冷たい飲み物がずらり
対岸から長いホースで引いてきた水により、小屋で販売している飲みものはつねに冷え冷え。ここの蛇口からは飲み水を汲むこともできる。しかも無料だ
5.食堂の本棚
宿泊者にイワナの釣り師が多いことで知られる山小屋だけに、本のラインナップは釣り関係ばかり。これほど偏った本棚は北アルプスでもここだけかも?
食事
【夕食】定番のメニューだという豚の角煮をメインに、スパゲティサラダ、野菜炒め、煮物に枝豆など。冷たいとろろそばがうれしい。ご飯は地元・富山のおいしい米を使っている。
【朝食】鮭の切り身にスクランブルエッグ、キンピラ、佃煮、梅干し、缶詰のフルーツなど、旅館の朝食風。なお、昼食としてのお弁当は中華ちまき。これがじつにうまいことを報告しておこう。
部屋
大部屋(一枚目)は上下のカイコ棚になっている。斜めに入れられた梁のためか雑魚寝感が薄らぎ、見た目以上に居心地がいい。グループで使いたい個室(二枚目)も二部屋(片方は二段部屋)ある。こぢんまり落ち着いた空間だ。
トイレ
おがくずを使ったバイオトイレ。「大」と「小」を区別して処理するため正しい使い方をしよう。
洗面所
洗面スペースは自炊室と共用。モノクロの写真が飾ってあって、小屋の中でもとくにきれいな空間である。
お土産・売店
Tシャツなどのほか、小屋番の大和景子さんの著書『黒部源流山小屋暮らし』(山と溪谷社)も購入可能。
黒部川源流部への玄関口
黒部川上流域は区間によって呼び名があり、黒部ダムより下流が「下ノ廊下」と称されているのは有名だ。ダムよりも上流は「上ノ廊下」で、薬師沢小屋はもっとも源流に近い「奥ノ廊下」に位置している。小屋よりも上流に比較的大きな沢はあるものの、平時に流れ込む水量は少なく、険しい崖や大きな滝もないので、増水時でもなければ河床に沿って奥ノ廊下を歩くのはそう難しいことではない。
沢登りとしては初心者レベルのコースで、1日で黒部川の「最初の一滴」まで歩くことができる。経験者とともに挑戦するのもいい。また、小屋よりも下流方向は大東新道。こちらは一般登山道としては難路だが、整備はなされている



COLUMN
受付近くには現在の「小屋の傾き」がわかる、こんな表示が!斜面に立つ小屋は冬の雪の重みで次第に傾斜が強くなっているのだとか。いずれ建て直さねばならない時期が来そうだ。
※この記事はPEAKS[2024年9月号 No.167]からの転載であり、記載の内容は誌面掲載時のままとなっております。
※最新の情報を直接ご確認の上ご計画ください。
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PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
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