ザ・ノース・フェイスのウインターウエア ふたつの選択
PEAKS 編集部
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雪山登山のみならず、通年欠かせない存在となった防水透湿素材「ゴアテックス」。ハードシェルとは思えないほどの蒸れにくさとしなやかさをもつ「フューチャーライト」。持ち味がまったく異なる両者を、ダブルフラッグシップとしてラインナップするその意図は。
文◉森山憲一 Text by Kenichi Moriyama
写真◉黒田 誠、ゴールドウイン、熊原美惠 Photo by Makoto Kuroda, Goldwin, Yoshie Kumahara
なぜふたつの選択肢が必要なのか?
冬の雪山登山で選ぶべきウエアは、かつては簡単な話だった。
「ゴアテックスを買っておけ」
これで話は終わっていたからである。
それが変わったのは20年ほど前。ソフトシェルが登場し、状況によってはソフトシェルのほうが有利ということもあり、雪山ウエアの選択が多様化しはじめた。
しかし湿雪の多い日本の山では、防水性の高いウエアのほうが合うケースが多いため、海外ほどソフトシェルは一般化しなかった。
その後、現在では、多くのメーカーが防水透湿素材を使用したハードシェルを雪山用としてラインナップしている。採用素材はメーカーによってさまざまになったが、メイン素材はほとんどの場合ひとつ。複数の素材を採用している場合は、どちらかが廉価版という位置づけになる。
ところが、ザ・ノース・フェイスでは、ふたつの素材を同格でラインナップしている。それは「ゴアテックス」と「フューチャーライト」。どちらかがフラッグシップというわけではなく、いわばダブルフラッグシップ。このような態勢を取っているメーカーはあまりない。なぜ、ふたつの異なる素材をこのようにラインナップしているのだろうか。
「それはふたつの素材がかなり異なる持ち味をもっているからなんです。ザ・ノース・フェイスでは、2年前に独自開発した『フューチャーライト』を発表して、これを軸としてアイテムを展開していく予定だったんです」
日本のゴールドウイン社でザ・ノース・フェイスの商品企画に携わる小澤由紀子さんはそう語る。
「フューチャーライトはソフトシェルに近い特性をもっているハードシェル素材で、乾燥した海外の山では非常に具合がよかったんですが、日本ではゴアテックスもほしいという要望が多かったんです。それはゴアテックスに信頼をおく登山者が多いというお国柄もありますし、雪山といえど、湿雪が多く、海外より濡れる機会が少なくない自然環境のせいでもあると思います。フューチャーライト一本では、少なくとも日本では登山者のニーズに応えきれないと判断して、こういう二本立てのラインナップにすることにしました」(小澤さん)
ザ・ノース・フェイスでは、「ヒートロス」と「オーバーヒート」というキーワードを用いて、ふたつの素材の違いを説明している。その意味は以下のようなものだ。
まずはヒートロス。これはゴアテックスのことを示している。ゴアテックスの持ち味は、強固な防水性と防風性。これによって、体温をウエア内側に閉じ込めて逃がさない。これがゴアテックスの重要な機能であり、「ヒートロスを防ぐ」イメージだ。
一方、フューチャーライトは、わずかな通気性をもつことが大きな特徴。歩き続けて体が暑くなってきても適度に体温を逃がし、オーバーヒートするのを防いでくれる。ハードシェルはシチュエーションに応じて着脱を繰り返すものだったが、可能な限り着脱を減らし、着たまま動き続けられる――これがフューチャーライトのコンセプトなのだ。
それぞれの長所は以上のとおりだが、短所もまた表裏。ゴアテックスは大量の汗をかいたときの透湿性には限界があり、着心地も比較的硬くなりがち。一方のフューチャーライトは、防風性は完全ではなく、風雪に叩かれたときの快適性はゴアテックスに劣る。
このように、同じハードシェル素材とはいえ、かなりベクトルが異なる両者となっている。ただし、それはどちらが上とかどちらが高級かという違いではない。おたがいの短所を補完し合うような関係にあるため、ユーザーの求める状況により合ったほうを選んでほしい。それがフラッグシップをふたつ設けた目的であり、「ヒートロス」「オーバーヒート」というキーワードが示す意味なのだ。
「動きの激しいアクティビティにはフューチャーライト、時間をかけて登っていくような登山にはゴアテックス、使い分けとしてはそんなイメージですね。体質やコンディションによって使い分けるのもいいと思います」(小澤さん)
冬のアクティビティのあり方は多様化してきている。ふたつの異なる選択肢は、よりふさわしいものを着てほしいという、ザ・ノース・フェイスからのメッセージだ。
定評ある防水性と防風性のゴアテックス
防水性がありながら、かいた汗を外部に排出する透湿性を併せ持つ、いわゆる防水 透湿素材の元祖的存在。登場から現在まで、さまざまなフィールドでその性能は実 証されており、耐久性を含めた信頼性は現在でもトップレベル。着心地が硬くなり がちなところが難点だったが、長年にわたる研究開発の末、現在ではかなり改善されてきている。防風性が非常に高いことも特徴で、これはとくに冬季登山では大きなアドバンテージとなる。厳しい環境であるほど真価を発揮する素材だ。
圧倒的なしなやかさと透湿性を誇るフューチャーライト
ザ・ノース・フェイスが独自開発した防水透湿素材。最大の特徴は、わずかな通気性をもっているため蒸れにくいことと、生地が非常にしなやかなこと。体を大きく動かしても突っ張るような感覚が少なく、汗をかいても体がオーバーヒートしにくい。そのため、防水透湿素材とは思えないほど自然な着心地が得られるのが魅力だ。防水性や防風性はゴアテックスに及ばないので、風雪に叩かれ続けるような使用には向いていないが、安定した天候下での快適性は高く、着たままで動き続けられるのが大きな利点。
過酷な環境下での対応力を求めるか。激しく動ける運動性能を求めるか。
防護性能を高めれば着心地は重くなり、軽快な仕様にすれば保護性は低くなる。そのどちらも両立できるウエアは存在しない。自分が重視する機能はなにか。それによって選択は変わってくる。
過酷な環境で求められるウエア
保温性はミドルレイヤーで
保温性はアウターではなくミドルレイヤーで調整する。フリースかアクティブインシュレーションが主流。寒いときは厚手の、暖かいときは薄手のものを。
アウターシェルで防水、防風
防水性と防風性に優れたアウターシェルは必須。アウターシェルが破れると致命的な事態に陥ることもあるので、耐久性の高さも見逃せない。頭をしっかり覆えるフードなども重要。
耐久性も重視したシェルパンツを
シェルパンツも考え方はジャケットと同様。防水性と防風性、耐久性の高いものが必要。暖かく、風雪が浸入しにくいビブタイプも、環境が過酷であるほど役に立つことが多い。
激しく動くシーンで求められるウエア
ミドルレイヤーは薄めに
ミドルレイヤーは体の動きを妨げない薄手のものが有利。写真のセットアップは、中綿入りアウターを使うことでミドルレイヤーを省略したパターン。気温が高めならこれで十分。
アウターはハードシェルが理想的
着心地がしなやかで動きやすく、激しく動いたときでも蒸れにくいウエアがいい。ソフトシェルがそれにあたるが、防護性能に不足を感じる場合もあり、ハードシェルが理想。
動きやすいのはソフトシェルのパンツ
パンツはソフトシェルが動きやすくてなにかと有利。表面撥水性があり、ある程度の防風性を備えるものならば、雪山でもかなりのところまでハードシェルなしで行動できる。
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PROFILE
PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
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