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スポルティバジャパンでの展覧会に向けて。本拠地ドロミテの岩山を描く|筆とまなざし#314

6年前に登ったとき撮っておいた写真を素材に「Tre Cime」を描く。思い浮かんできたのはセピア単色の風景。

3月にスポルティバジャパンのショールームで展覧会を計画している。スポルティバはイタリア北部、ドロミテ山麓を拠点にする登山靴ブランドだ。高所靴、クライミングシューズ、トレランシューズなどあらゆるジャンルで世界のトップアスリートから絶大な信頼を得ていることは、ご存じの方も多いだろう。展示するのは今年のスポルティバカレンダーに描いた6枚の水彩画がメインなのだが、せっかくならとイタリアの絵も展示することにした。

イタリアは三度訪れたことがある。そのうち一度は6年前にドロミテへ。そして昨年はオルコ渓谷に出かけた。あまり知られていないけれど、いわゆる「ロッククライミング」が登山のひとつのジャンルとして行なわれるようになったのは、19世紀後半のドロミテだといわれている。アルプスの端っこに位置するドロミテは、夏になると雪が溶け、純粋な石灰岩の岩山になる。夏でも雪と氷で覆われたほかのアルプスの山々と大きく異なるのはその点で、傾斜の強い大岩壁でロッククライミングの技術が磨かれていった。また、元々貴族のスポーツとして発展してきたアルプス登山である。氷雪壁の高峰を登るにはお金がかかることも多く、若く貧しく情熱的なクライマーはドロミテを舞台に高度な登攀を行なっていたといわれる。南チロル出身のラインホルト・メスナーもまたそのひとりである。現在ドロミテには3万本ものクライミングルートがあるともいわれるが、正確な数字はわからない。

前置きが長くなってしまったが、スポルティバはそんなクライミングのメッカで創業されたブランドなので、ドロミテとオルコの絵も展示したいと考えたのだ。これまでに描いた絵はもちろん、せっかくならばとドロミテの象徴である「Tre Cime di Lavaredo」の絵を新しく描こくことにした。

「Tre Cime」は「Cima GrandeCima 」「Ovest」「Cima Piccola」のみっつのピークからなる岩山群である。「Cima Grande」はもっとも標高が高く2,999m。その北壁は垂直、あるいはオーバーハング帯を要し、標高差は500mを超える大岩壁となっている。もっとも有名な「コミチ・ルート」は1933年に初登されたクラシックルートでグレードはなんとⅦ+(5.11a/b)。「Cima Ovest」にはアレックス・フーバーによるグレード8cのルートさえ築かれている。

ドロミテを訪れたのは9月だった。「コミチ・ルート」は登ってみたかったがすでに季節が遅かった。雪が降ってしまい断念したのだった。そのときは南面の「ノーマル・ルート」から「Cima Grande」に登り、「Spigolo Giallo」という、やはり1933年に初登されたクラシックルートで「Cima Piccola」に登った。グレードは易しいけれどどちらも充実した非常に思い出深いクライミングとなった。ちなみに「ノーマル・ルート」はCima Grandeの初登ルートでもっとも易しいのだが、しっかりとクライミング要素が入っている。ドロミテでいう「登山」とはすなわち「岩登り」のことを指すということがよくわかる。

「Cima Grande」を登ったときに撮っておいた写真を素材に、「Tre Cime」を描くことにした。思い浮かんできたのはセピア単色の風景。最初に描いた一枚は滲みを効かせた濃いめの空に浮き上がる「Tre Cime」。けれど、山の印象が弱くなってしまって失敗。次に水彩色鉛筆を使って描いた一枚は、悪くはないけれどイメージと違う。もう一枚描いてみたのがここに挙げた一枚で、思い浮かんだ印象にだいぶ近づいた。2日間で3枚の「Tre Cime」を描いた。けれど思った。やはり現地に行って描くべし、と。まだ「Tre Cime」とは仲良くなれていない。そして仲良くなるには登るのがいちばん。全身でこの岩山を感じながら登ったとき、また新しい絵が描けるのだろうと思う。

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PROFILE

成瀬洋平

PEAKS / ライター・絵描き

成瀬洋平

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

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