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ギプスと松葉杖生活に入る前の準備期間。手術前にミッションをこなす|筆とまなざし#368

充実したインドア生活をすごすための準備。

右足首のケガの手術のため、今週水曜日から入院することになった。木曜日に手術を行ない、土曜日が退院の予定である。その後3週間はギプスと松葉杖生活となり、順調にいけばひと月ほどでスポーツに復帰できるらしい。およそ2カ月間思うに任せない日が続く。とくにギプスの3週間はほとんど動けなくなるので、手術前に幾つかのミッションをこなした。

ひとつはヌンチャクの回収。足首を捻ったルートには先月末からヌンチャクが垂れ下がっており、まともに登れるようになるころにはすでに初夏。その前に回収しておきたかったのである。30分ほどのアプローチはストックを使えばそれなりに歩けた。件のルートは特別難しいものではなく、試しに登ってみると案外登れる。おまけにケガをしたムーブをしなくても登れることがわかった。あんな体勢になるものではなかったなと思うけれど、こればかりは仕方がない。ケガをするときは大体そんなものなのだろう。問題なく回収できることがわかったのでついつい欲が出た。ついでに完登しようと思ったのである。

レッドポイントトライ中、さっきは置かなかった高めのフットホールドに右足で乗り込んだ。遠いポケットを右手で取りにいった瞬間……激痛が走りそのままフォール。ああ、さっきのムーブにしておけばよかった。いや、その前にやっぱり登るものではなかったか。仕方なくエイド混じりで終了点まで登り、ひとまず無事にヌンチャクを回収して帰宅した。

クライミングができない期間は絵を描くのにちょうど良い。この時間に大きな絵を描きたいと、耐水コンパネをアトリエに運び込んだ。キャンバスなどに油彩やアクリル絵の具を使って描くための画板である。とくにギプスが外れるまでは出歩くこともままならないので、これで充実したインドアな時間をすごせるはずだ。

足は使えないが上半身のトレーニングはできる。クラックでも結局は指の力が重要だと思っていたところで、フィンガージャムトレーニングマシーンを自宅とアトリエに自作した。これは2×4の角材の間にフィンガーサイズ幅の角材を挟み込んだもので、順手、逆手ともにパッシブのフィンガージャムができるようにしたものだ。自宅に設置したものは懸垂用でアトリエに設置したものはキャンパシング用。これがなかなか効果的で、指のトレーニングはもちろん痛さへの耐性トレーニングにもなりそうだ。

山岳保険への報告を済ませ、入院中に読む本をいくつかセレクトして準備万端。そうだ、しばらくお酒も飲めなくなるので今晩は美味しいビールを飲んでおこう。

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PROFILE

成瀬洋平

PEAKS / ライター・絵描き

成瀬洋平

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

成瀬洋平の記事一覧

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

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