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イタリア・オルコ渓谷、ロカーナ村のマウンテンフェスティバルへ|筆とまなざし#379

友人、グラチアーノに誘われて。息子の絵をお土産に、この夏再びオルコ渓谷へ。

「7月20、21日に行なわれるマウンテンフェスティバルにゲストとして来てくれないか?」

グラチアーノからそう連絡があったのは4月6日だった。エイプリルフールの冗談か? と思ったが、4月に入ってすでに1週間。

「いやいや、エイプリルフールじゃないよ(笑)。ロカーナの役場からヨーヘーに声をかけてくれって連絡があったんだ」

グラチアーノはオルコ渓谷にあるロカーナ村に住んでいる。ぼくより一回りくらい年上で、見た目はいかついけれどとても優しい男である。一昨年、クライミングトリップでロカーナに滞在していたときに出会った。たまたま村の小さな飲み屋に出かけていくと、ほかの村人たちといっしょにワインを飲んでいた。みんな気の良いおっちゃんたちで、通りで見かけると「いっしょに飲もう!」と言っていつもワインをおごってくれた。そのなかでグラチアーノはいちばん若く、SNSで繋がったこともあって親しくなった。昨年は日本からお土産を持っていって再会を喜んだ。ハリーポッターのように色白で大きなメガネ(丸めがねではない)をかけた息子マテオと奥さんの3人で暮らしている。

マウンテンフェスティバルはロカーナ村が主催するようで、村出身のクライマーでありガイドだったロベルト・ペルッカを偲んで開催されるということだった。ペルッカはオルコ渓谷のクライミングルートをたくさん開拓したレジェンドだ。1980年代終わり、その後世界的に知られるようになるルーフクラックに緑色のハンガーボルトを設置し、エイドクライミングで初登した。やがてスイス人クライマー、ディディエ・ベルトーによってそのボルトは外され、フリークライミングで初登。「Green spit 8b+」(現在は8b)とされる。「Green Spit」をフリーで登ることはなかったが、このルーフクラックを発見して初登した功績は大きいし、非常に優れたクライマーだったことは間違いない。80年代にフレンチグレードで7台のクラックを初登しているほどの実力の持ち主だったからである。しかしある日、登山に出かけてなんでもない斜面で滑落、この世を去ってしまった。

グラチアーノにとってペルッカはヒーローであり、クライミングに連れて行ってくれた師匠でもある。ワインを飲みながら、グラチアーノはペルッカとの思い出を話してくれた。そしていつしかぼくもペルッカという人物に興味を抱くようになっていた。

ところで、ぼくはマウンテンフェスティバルのゲストに呼ばれるような功績はなにも残していない。Green Spitを登った人ならほかにもたくさんいる。しかし、ロカーナの人たちと仲良くなったという点は、ほかのクライマーにはないことかもしれない。グラチアーノはもちろん、ちょび髭のピエール、文房具屋のコンティ、村長のマウロ、地元クライマーのマリオ。そしてピエールの家族や水道工事のおじさん。毎年は難しくても、気の良い村の人々に度々会いに行きたいと思っていた。足をケガしてクライミングもままならないし、次回は日本酒をお土産に持ってくると約束していた。まさか3年連続でオルコに行くことになるとは思ってもいなかったが、これも何かの縁だろう。グラチアーノにはふたつ返事でいくことと声をかけてくれたことに感謝を伝え、息子のマテオの絵を描いてお土産にすることにした。

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PROFILE

成瀬洋平

PEAKS / ライター・絵描き

成瀬洋平

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

成瀬洋平の記事一覧

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