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ケガ以来、およそ2カ月ぶりにクライミング講習会を再開|筆とまなざし#375

地域の人たちが日常的にクライミングを楽しめる環境をつくること。

先週の金曜日から、およそ二カ月ぶりにクライミング講習を再開した。とはいえ、足首はまだ完治しているわけではない。とくに正対での乗り込みはしないようにと担当医からいわれていて、できるだけ右足に体重をかけないように登っている。体重をかけ始めてもいいのは来週からだとのことだが、無事に3日連続の仕事を終えることができた。

アプローチが近く、勝手知ったる笠置山なら講習の再開も安心である。ひさしぶりに触る岩の感触。もう何度登ったのかわからないルートでさえぎこちない動きでびっくりしたが、何度か登るとさまざまな感覚が呼び戻されてきた。易しいルートといえども三日間登ると指皮が痛くなった。少し大きめのクライミングシューズがちょうどよく、本気シューズは痛くて履けたものでない。そのうちに慣れてくるだろう。

5月初旬の笠置山は一年でもっとも気持ちの良い季節である。麓では田植えが終わった水田が湖のように一面に広がり、山は新緑の緑で覆われている。街は夏のような暑さなのに標高1,000mの岩場にはすばらしく爽やかな風が吹き抜けていく。そして乾燥した岩肌。寒くもなく暑くもない、最高のコンディションである。

ひさしぶりの講習会にはこれまでにも参加してくださっている方が多かったが、地元の女性が初めて参加してくださった。一度ボルダリングジムに行ったことがあるだけでクライミング自体2度目。もちろん岩場は初めてである。子育てが一段落して時間が取れるようになり、チャレンジしてみたということだった。ふだんはヨガのインストラクターをされていて、身のこなしが非常にうまい。柔軟性、バランス感覚はいわずもがな。体の使い方に精通されているのだろう、何度か登るとムーブの組み立てもできしまう。こんな方もいらっしゃるのだなと、羨ましくなった。

クライミングを続けていくこと、ましてや上達していくことは、じつはとても難しい。クライミングジムのないこの地域ではさらに至難の業だ。せっかく興味を持ってくれたのだから、ママさんクライマーとして楽しく続けてほしい。地域の人たちが日常的にクライミングを楽しめる環境をつくることが、ケガから回復したあとのミッションである。

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PROFILE

成瀬洋平

PEAKS / ライター・絵描き

成瀬洋平

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

成瀬洋平の記事一覧

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

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