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『青い山脈』といえば恵那山|筆とまなざし#274

春の恵那山はわずかに明るい緑を混ぜた群青色だった。

久しぶりに山の大先輩である久保田さんと会った。恵那山の登山口、萬岳荘でお会いしたこともあり、話題は自然と恵那山のことになった。

「そういえば『青い山脈』のモデルって恵那山だったんですね」

敗戦後間もない昭和22年に発表された石坂洋次郎の長編小説『青い山脈』。抑圧的な戦時下から新しい民主主義の社会となった時代背景のなかで描かれた青春小説で、著者自身が高校教師を務めた青森県の学校がモデルになっているらしい。昭和24年から昭和63年までに5回も映画化されており、2作品目のロケはぼくの住む岐阜県の恵那、中津川地域で行なわれた。しかも撮影に使われたのはぼくの母校の高校だったらしい。父の母校でもあるので自慢気にその話を聞かされていたが、ロケで使われた木造校舎は数年後に火災で焼けてしまったそうである。

久保田さんはたまたま『青い山脈』に関するイラストを目にした際、描かれた山が恵那山だと直感的に気づいたという。イラストを見せてもらったが、それは間違いなく中津川市内から眺望する恵那山だった。本来は特定の山をモデルにしているわけではないそうだが、映画化をきっかけに「『青い山脈』といえば恵那山」というイメージが定着したのだろう。

深田百名山のひとつである恵那山。標高は2,192m。中央アルプスの南端というけれど見た目はほとんど独立峰で、ぼくが住む街を見守るように聳えている。山脈というならほかのアルプスのほうがまったくもって山脈である。けれども、ほかのアルプスは街から見たときに少し遠く、標高が高くて気高いイメージである。それに比べて恵那山は中津川の街から見上げると、濃い青に見える。標高がさほど高くなく、樹林帯に覆われ、街から近いためだろう。夏などは青黒く見えるほど力強い。そんな山容が映画のイメージに合致したのだろうか、ともかく『青い山脈』と恵那山は地元の人間にとってはちょっとした自慢なのである。

リハビリがてら近くの低山に登った際、岩の上から真正面に恵那山が見えたのでひさしぶりに描くことにした。春の恵那山はわずかに明るい緑を混ぜた群青色だった。絵を描きながら気づいた。そういえば、『青い山脈』は観たことがないし小説も読んだことがない。とりあえず今晩、映画を観てみよう。

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PROFILE

成瀬洋平

PEAKS / ライター・絵描き

成瀬洋平

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

成瀬洋平の記事一覧

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