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四角友里のにっぽん“食”名山#06「合戦小屋の波田産スイカ」

『スイカ』の食名山といえば、中房温泉の前にある燕岳登山口から燕岳山頂に向かう途中にある「合戦小屋」。1964年からもう半世紀も登山者の喉を潤してくれているという”夏山の風物詩”です。

私が初めて燕岳に登ったのは、10月のシルバーウィーク。すでにスイカの時期ではありませんでした。2度目は9月初旬に計画していたものの、台風の影響で2度延期され10月に……。

▲北アルプスの女王と呼ばれる標高2,763 mの燕岳

それからというもの、不運(?)は続き、「燕岳に行こう!!」と計画してホームページを開くと、まだスイカの発売が始まっていなかったり、「今シーズンの販売は終了致しました」の文字があったり。ことごとくフラれ続けています。

▲なので合戦小屋ではいつもホットミルクを注文(これも大好物)

▲ちなみに、「合戦小屋 スイカ」と入力すると、みんなチェックしているのか検索候補に「値段」「いつから」「いつまで」とあがります

合戦小屋のスイカは燕岳の麓の安曇野市のすぐ近く、松本市波田町下原地区で作られたもの。有名ブランドにもなっている「下原(しもっぱら)スイカ」です。

▲中房温泉からケーブルで運ばれる。8分の1カットが800円

親族が近くに住んでいて、何度か波田町のスイカを食べたことがあったので、目が丸くなるほどの甘さと瑞々しさは知っていました。だから、「食べたことはあるもん」と思っていました(注:負け惜しみ)。

そんなスイカとご縁のなかった私に思わぬ出逢いが訪れたのは、6月下旬の鳳凰三山。

薬師岳から2つめのピークの観音岳に向かっていると、なにやら山頂が賑やか。その声の主は、早稲田大学の学生さんたち。ワンダーフォーゲル部の10人でした。

「すみません! スイカを食べてもらえませんか?」
「ええええっ!!!??」
突然飛び込んできた、うれしすぎる申し出に、声がうわずる私。
……いやまて。ど、どういうこと?

「合宿出発前にOBに渡されて、ここまでかついできたんですけど」
「まーーーっ!! 大変!」
と、同情しながらも、内心ニヤニヤが止まりません。

「ちょっと食べきれなくって、もしお嫌いでなければ食べ……」
「いただきますっ!!!!」(食い気味で即答)

彼らは南アルプス5日間の縦走中で、今日が最終日だというではありませんか。
でっぷり大きな丸ごとのスイカと旅した行程を考えるだけで、クラクラしました。

▲部歌をうたう彼らの、まぶしさといったら! 黒戸尾根〜甲斐駒ケ岳〜北沢峠〜仙丈ヶ岳〜早川尾根〜鳳凰岳〜観音岳〜薬師岳〜青木鉱泉と、高低差が大きく大変なルートで、5日目まで食べなかったのがすごい!! しかも2玉も担いできたというから、さらにびっくり。

「いっただっきまーーーーすっ!!!!」
遠慮なくかぶりつくと、口のなかに甘い果汁があふれます。

▲ぐふふ。「余るなら、食べてみせよう、其の西瓜」織田ゆり長
汗をかいた体に染みわたる〜。山の神様とOBの方に感謝! もとい、運んでくれた若者たちよ、本当にありがとう!!!

いっしょにスイカを食べていた、登山歴3年の私より年下の山仲間が
「こんなに若いときに、山に出逢えた彼らがうらやましい」と言いました。
「あなたも、この山の世界を知れたんだから、未来が楽しみじゃん!?」と私が返すと
「今年の夏はどの山にいこうかな〜」と、もう一口。がぶり。
爽やかなスイカが、私たちに夏の始まりを告げているようでした。

▲鳳凰三山特有の花崗岩の白い山肌とあいまって、まるで砂浜で食べているような気分

山の出逢いっておもしろい!と体感する出来事。
そして私はついに、山のうえのスイカのおいしさを知ってしまったのです。

山でスイカを食べてみたことで、わかったこともあります。
……べたべたになった手をどうしたらよいか、地味に困るということ。
……食べ終わった皮を持ち運ぶのも、けっこう重いということ。
だからこそ、合戦小屋で提供していただくスイカは貴重だということを。

スーパーにスイカが並びはじめると、「燕岳に行きたいなぁ」と思います。
「食べられなかったもの」が、また同じ山にいきたいと思うモチベーションになる。
それが今回の、食名山認定の理由です。

************************

標高約2,350mにある合戦小屋は、燕岳登山口から「北アルプス三大急登」のひとつである合戦尾根を3時間歩き、燕山荘まであと90分という位置にあります。燕岳登山口から燕山荘までの道のりは標高差約1,260mとひたすらに上りが続きますが、ちょうどよい間隔に休憩ベンチが設けられ、登山道も整備されているので北アルプスデビューにおすすめです。
合戦小屋は休憩所で、宿泊はできませんが、売店では昼食・飲料・果物が販売されています。ここまでで樹林帯歩きは終わり。合戦小屋を出発してしばらくすると、遠くに槍ヶ岳が顔を出し、燕山荘も見え始めます。「もうひとがんばり」にちょうどよい、エネルギーチャージと息抜きができる場所なのです。

Data:合戦小屋
TEL. 090-1420-0008(問い合わせ先は燕山荘)
営業期間:4月下旬~11月上旬
スイカ一切れ 800円
http://www.enzanso.co.jp/gassengoya/

写真◎小澤義人、四角友里

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自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。

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