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モデル仲川希良の「絵本とわたしとアウトドア」#38 よあけ

日の出前のひとときを
ていねいにすくいとった一冊

これまでもお正月の朝なんかには早起きをして、いそいそ日の出を待ってみるタイプではありました。それが山で山小屋泊やテント泊をするようになって、私の人生で日の出を見る機会は圧倒的に増えました。早め行動のために暗いうちから起きるのが基本、さらに眺めがよい場所にいることが多く、山というのは日の出を見るにはうってつけの環境なのです。見ることを予定していなくても、そろそろか、なんてほかの登山客が山小屋のサンダルをつっかけて外に出るのを見送るうちに、迷い出す。やっぱり私も見ておこう……と、結局たいてい眺めに行ってしまいます。

いつだったか山好きの方が、「山にいるからって、普段見向きもしない日の出をわざわざ見なくても」といったことを書いているのを読んで少しドキリとした覚えがあります。たしかに日の出に対しては、せっかくなら見ておこうか、というのが正直なテンションかもしれない。でも結果的に、見えたときはもちろん、たとえ見えなかったとしても、日の出を待ってみて後悔したことはないのです。あの辺から出るかな?ほら空の色が変わってきたよ、なんてつぶやきながら、夜から朝への移り変わりを感じるあの時間は、新しい一日に向けてはやる心を正しくしずめ、整えてくれます。

▲暁の尾瀬ヶ原。青墨の空にところどころ薄桃色がにじみ、優しく光る白い月が浮かんでいた。なんとも詩的な光景。たちこめる靄のなかに響くカッコウの声を聞きながら朝を迎えた

今回の絵本はそんな日の出前のひとときを、ていねいにすくいとった一冊。物音ひとつしない月明かりの湖畔が舞台です。ふとそよ風が水面を揺らしたかと思うと、靄がかかり、コウモリが舞い出て、カエルの飛び込む音が響きます。毛布にくるまって野宿をしていたおじいさんと孫が起き、薄闇のなか少し火を焚いて、荷物をまとめます。すべてが静まり返っていた景色をそこここでかすかに震わせながら、あらゆるものがひとつまたひとつ動き出す。

そうか、私は日の出じゃなくてこの、変化していく時間が好きなのだな、と、この絵本を読んでいて気がつきました。細胞と感覚を、薄明かりのなかで少しずつ目覚めさせる。自分を取り囲む自然の目覚めとおなじスピードで、自分がまっさらな一日を迎える支度をする、夜明けのひととき。

とはいえ日の出の瞬間、太陽のもつインパクトはやっぱり絶大です。深い青のグラデーションで描かれていた挿絵の変化の、なんとドラマチックなこと!今度の山でもきっと、私は日の出の瞬間に思わず声をもらし、手を合わせて見つめてしまうのでしょう。

今回の絵本は……

よあけ
作・絵 ユリー・シュルヴィッツ
訳 瀬田貞二
福音館書店

夜明け前の景色を染める青色には、こんなに幅があったかと驚く。月や焚き火の光の澄んだ表現にもうっとり。柳宗元の「漁翁」がモチーフだそう。こちらもすてきな詩です

モデル/フィールドナビゲーター
仲川希良

テレビや雑誌、ラジオなどに出演。登山歴は14年目。里山から雪山まで広くフィールドに親しみ魅力を伝える。一児の母。著書に『わたしの山旅 広がる山の魅力・味わい方』『山でお泊まり手帳』

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PROFILE

仲川 希良

ランドネ / モデル/フィールドナビゲーター

仲川 希良

テレビや雑誌、ラジオ、広告などに出演。登山歴はランドネといっしょの14年。里山から雪山まで幅広くフィールドに親しみ、その魅力を伝える。一児の母。著書に、『わたしの山旅 広がる山の魅力・味わい方』『山でお泊まり手帳』

仲川 希良の記事一覧

テレビや雑誌、ラジオ、広告などに出演。登山歴はランドネといっしょの14年。里山から雪山まで幅広くフィールドに親しみ、その魅力を伝える。一児の母。著書に、『わたしの山旅 広がる山の魅力・味わい方』『山でお泊まり手帳』

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