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モデル仲川希良の「絵本とわたしとアウトドア」#42 おにぎりをつくる

にぎってくれた人の想いと、安心感が詰まった“いのち玉”

おにぎりを自分用に作ることがほとんどなかったので、その思い出の多くは幼いころのものです。夏休みをすごす祖母の家。山や川へ行くときは、魔法瓶に入った冷たい梅酢と、おにぎりを作ってくれました。日差しの下でたっぷり遊んだあとに沁みる塩気がたまらなかった。

塾通いや中学・高校のお弁当生活。時折入れられる母のおにぎりは“爆弾”の名に相応しい見た目で、具材もゴロリ。同級生には必ず驚かれました。自分に子どもがいるいまは、目の届かない場所にいる間にお腹を空かせることのないように、という母の気持ちの大きさであったことがわかります。

息子に作るようになってみると、おにぎりのもつ利便性と安定感のあるおいしさが改めてありがたい。小魚やら海藻やら、栄養をたっぷり摂ってほしい気持ちを混ぜ込んでキュッと握る。すると茶碗につぐよりもずっとたくさん、不思議なほど頬張ってくれるのです。

山のなかでのおにぎりの記憶は、意外にもあまり多くはないかもしれません。登山の行動中はこんな私でも食欲が落ちがちなので、おにぎりはトゥーマッチ。高所や寒い時期は硬くなりやすいという弱点もあります。それでも行きがけのコンビニでサッと一つ買ってバックパックに忍ばせてしまう。結局食べずに下りてくることも多いのですが、これがあれば大丈夫かな、という、ほかのものにはない安心感が、おにぎりにはある気がして。

▲海から山を人力でつなぐ、シートゥサミット。佐渡島大会の金北山でいただいた絶品おにぎり。佐渡米は時間が経ってもおいしいよ、と地元の方が握ってくれたのを証明したくてなんとか完走!

料理家の高山なおみさんが、子どもたちがひとりでもおにぎりが握れるようにという想いを込めた絵本「おにぎりをつくる」。米を測るところから塩で結ぶところまでが、簡潔に綴られています。もちろん私はすでに知ったことですが、後書きが目にとまりました。「はらぺこのおなかには、おにぎりは『いのち玉』です」……これぞ、おにぎりの真髄では。

食事の用意が必要ないような里山歩きのときのことを思い出しました。休憩で立ち止まった東屋で、仲間のひとりが布に包んだ人数分のおにぎりを、バラバラと広げるのを目にして、涙が出そうな気持ちになったのです。早起きして、お米を炊いて、いるかはわからないけれど、背負ってきてくれた。みんなの「いのち玉」。

息子にも、自分で作れるようになってほしい。そして自分のぶんをまかなえるようになったら、そっと周りにも差し出せる人になってくれたら、うれしいなと思っています。

今回の絵本は……

おにぎりをつくる
文 高山なおみ
写真 長野陽一
ブロンズ新社
大人が握る大きなの、子どもが握る小さなの。具だの海苔だのを加える以前の、米と水と塩でできる美しい白い玉。握ることで宿るのは、何はなくともまず命を、自ら守る力

モデル/フィールドナビゲーター
仲川希良

テレビや雑誌、ラジオなどに出演。登山歴は14年。里山から雪山まで広くフィールドに親しみ魅力を伝える。一児の母。著書に『わたしの山旅 広がる山の魅力・味わい方』『山でお泊まり手帳』

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PROFILE

仲川 希良

ランドネ / モデル/フィールドナビゲーター

仲川 希良

テレビや雑誌、ラジオ、広告などに出演。登山歴はランドネといっしょの14年。里山から雪山まで幅広くフィールドに親しみ、その魅力を伝える。一児の母。著書に、『わたしの山旅 広がる山の魅力・味わい方』『山でお泊まり手帳』

仲川 希良の記事一覧

テレビや雑誌、ラジオ、広告などに出演。登山歴はランドネといっしょの14年。里山から雪山まで幅広くフィールドに親しみ、その魅力を伝える。一児の母。著書に、『わたしの山旅 広がる山の魅力・味わい方』『山でお泊まり手帳』

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