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モデル仲川希良の「絵本とわたしとアウトドア」#40 あかんぼっかん

大地が爆発し山ができる様を赤ん坊を通じて描く

大地が大爆発して火山が生まれ、やがて緑豊かな新しい山になっていく……そんな地球の営みを、人間の赤ん坊の姿を借りて表現しているこの絵本。赤ん坊とはいえ火山ですから、煙を吐き上げて泣き続けるし、大岩を投げ、大木を蹴り、硫黄臭のオナラを撒き散らして、周囲はもうめちゃくちゃです。私はというとオナラのページで大爆笑している3歳の息子がまだほんの赤ちゃんだったころのことを思い、わかるわかる……めちゃくちゃだけど、どうしようもないんだよね、赤ちゃんだもの……としみじみしてしまいました。

作者は阿部健太朗さん、吉岡紗希さんによるユニット、ザ・キャビンカンパニー。調べてみるとなんと、吉岡さんが熊本地震のさなかに陣痛を迎え、出産されたことが、作品を仕上げるきっかけとなったのだそう。

実際に噴火被害にあわれる方々もいることを思うと、「仕方がない」という言葉を使うことにはかなり抵抗があります。しかし人間の力を超えた火山活動により山が誕生するようすを、人間の赤ん坊に見立てて理解することは、とても核心を突いているように感じました。

▲火山列である八ヶ岳のひとつ、硫黄岳。火山内部が露出する山体崩壊が見所。この山々はどんな生き方を重ねてこの形になったのか、思いを馳せる山頂からの眺め。左のピークは活火山、横岳。

先日、日本有数の活火山である岩手山のふもと、雫石町を訪れる機会がありました。岩手山の火山防災情報を発信するイーハトーブ火山局では、噴火が起きた場合、町がどのような被害を受ける可能性があるのか、地図や模型を使って表現されていました。地元の子どもたちは航空写真から自宅を見つけ、自分が取るべき行動について考えるのだといいます。

関東平野に住む私が火山について考えるのは、登山のときのみというのが正直なところ。それさえも充分とはいえず、さらに噴煙の規模や影響を知るにつれ、日常においても火山活動というのは、決して他人事ではないことがわかります。

山は生きている、と題されたパネルに「岩手山の生い立ち」と書かれていてハッとさせられました。これまで、その山の人生ならぬ山生を考えたことはあったかしら。その山が生まれたときから重ねてきた計り知れない時間と、内包する力を思うとき、私たちはなんと小さく無力なことか。

翌日登った岩手山は、これまで以上に山肌を生々しく感じました。私が触れたこの岩は、足を置いたこの砂利は、いつ生まれたのだろう。そしていまこのときも、山は生きているのだと改めて思いながら、一歩一歩を重ねました。

今回の絵本は……

あかんぼっかん
ザ・キャビンカンパニー 作
偕成社
赤ん坊の涙は伏流水、ぬくぬくの体温は温泉、絵本では火山の恩恵についても表現されている。たくさんの人、生きものを呼び寄せるところも、赤ちゃんと火山は似ていますね。

モデル/フィールドナビゲーター
仲川希良

テレビや雑誌、ラジオなどに出演。登山歴は14年目。里山から雪山まで広くフィールドに親しみ魅力を伝える。一児の母。著書に『わたしの山旅 広がる山の魅力・味わい方』『山でお泊まり手帳』

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PROFILE

仲川 希良

ランドネ / モデル/フィールドナビゲーター

仲川 希良

テレビや雑誌、ラジオ、広告などに出演。登山歴はランドネといっしょの14年。里山から雪山まで幅広くフィールドに親しみ、その魅力を伝える。一児の母。著書に、『わたしの山旅 広がる山の魅力・味わい方』『山でお泊まり手帳』

仲川 希良の記事一覧

テレビや雑誌、ラジオ、広告などに出演。登山歴はランドネといっしょの14年。里山から雪山まで幅広くフィールドに親しみ、その魅力を伝える。一児の母。著書に、『わたしの山旅 広がる山の魅力・味わい方』『山でお泊まり手帳』

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