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山のユニークさん「ネバリノギラン」|植物ライター・成清 陽のヤマノハナ手帖 #31

登山&撮影をライフワークとする花ライターがお送りする、高山植物の偏愛記。静かに、しかしアツ~く、お花をご紹介します!

暖冬といわれる通り、イヤに暖かい今年。「2月って年間でいちばん寒い時期なんじゃ……温暖化が不安だわ」。そんな声もあるでしょうが、無断熱の古民家に住まうワタクシにとっては、ちょっとありがたい。そして、何よりも暖かくなると待ち遠しくなるのは、花!!ウメが咲いた、次はフクジュソウと気もそぞろな毎日です。しかーし、本連載にはそんな美しきスプリング・エフェメラル(春の妖精の意)はちょっと不釣り合い。今回はあえて、山野草界きっての変わり者をご紹介しましょう。

何がすごいって名前がスゴイ

Data
ネバリノギラン(キンコウカ科)
一般的な花期:7~6月
おもな生育場所:山地の湿地や林床など

一度聞いたら忘れない名前って、ありますよね~。とくに忘れにくいのは、「まんまじゃん!」とド直球でありつつ、ヒネリが効いているもの。ネバリノギランはその名の通り、全草がベタベタするというヘンな植物。そして「ノギラン」のノギは、麦の穂に見られるトゲ状の突起、蘭の仲間じゃないのにランがつく。なかなか絶妙なヒネリでしょう?覚えやすいですね!!ところで筆者は、名刺交換だけで5分は盛り上がる、超絶変わった名前の持ち主なんですよ。気づいてました?

かなり奇妙な「ネバリ」

「筆者の名前なんて知るかい!」。そんなふうに思われたら、ちょっとさみしい。すぐに脱線するのが、本連載唯一の取り柄なんですから(!)。さて、名前もスゴイが、本当にスゴイのがそのネバリ。写真のとおり、なんとツボミ時代からフルスロットルでベッタベタ。小さな羽虫やクモをくっつけるホイホイとして君臨します(注:Gがかかっているのは見たことありません)。蜜が盗まれないようにベタつくノアザミもツボミ時代からネバリますが、ほぼ閉鎖花のネバノギさんって、昆虫から不人気なような。そこまで粘らなくてもいいんじゃないの?

変態はお互い様

いったい、いつから粘るのか?それが知りたくて、爺ヶ岳登山中に見かけた若い個体を触ってみました。すると、こんな“青二才”までも、ベタベタする!茎もベタつく!!花期ほどではないものの、ちょっと変態的!?そんな発見に興奮して撮影していると、「何があるんですか?」と3人組の山ガールに聞かれた私。「ネバリノギランっていう植物なんですけど、触るとほら、ベタベタするでしょう!」と得意満面で説明すると、とってもおもしろがってくれました!……いや、むしろ植物にハマってる変態坊主がおもしろかったのかもなぁ。

ベタベタなくせに美しい!

さてさて、このネバリノギランは、じつはベタつく以外に、すばらしい特技が。それは、秋になると、美麗に変身を遂げること!草紅葉の代表格として語られるチングルマは真っ赤な葉っぱが魅力的。“草紅葉戦隊”があるならば、レッド確定でしょうね。しかし、ネバノギさんはなんともいえない、控えめなオレンジがとってもすてき。二番手へのランクインは確実でしょう!ちなみにこの段階でネバるかというと……お笑いネタではありませんが、「安心してください。ちゃんとネバリますよ」。

枯れ模様まで風情あり

さて、秋も深まった9月末、ネバリノギランを見かけました。すると、白い!それでいて、ほんのりとオレンジが残っている……。この情緒あるお姿に、和の世界を感じてしまうのは、私だけ?工芸菓子のようなエッセンスを感じさせてくれるんですよね。この頃は触ってみたことがないものの、きっとネバネバも収まっているはず。それだけに、もう変態なんて呼べません!そう、変態はこのワタクシだけなんです~(自滅)!!

 

さてさて、今回ご紹介してきたネバリノギラン。いかがでしたでしょうか?いろいろな山で見かける植物でありつつもスルーされがち、でもしっかり主張する花……。なかなかいない三枚目系キャラクターだと思うんです。なお、以前はユリ科だったのがさらに分化して、いまはキンコウカ科という分類になったのだとか。そんなお勉強ネタもある本連載。今後もオモシロイ植物をご紹介していきますよ!お楽しみに~。

それでは、また。
みなさまのココロに、すてきな花が咲き誇りますように。

 

植物ライター
成清 陽
持ち前の強い好奇心で、大学時代から山・海・島を渡り歩いてきた個性派。自然ガイド、環境コンサル、アウトドア誌編集者、市営公園管理人、企業の森づくりなどなど、自然にまつわる職を転々としたのちにフリーランスに。好きな山は尾瀬、白山、御嶽、北岳。2023年春から岐阜県山間部のプチ古民家に移住し、半隠居ライフを通じて、どこまでユルく生きていけるのか絶賛お試し中です!

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PROFILE

成清 陽

ランドネ / 植物ライター

成清 陽

持ち前の強い好奇心で、大学時代から山・海・島を渡り歩いてきた個性派。自然ガイド、環境コンサル、アウトドア誌編集者、市営公園管理人、企業の森づくりなどなど、自然にまつわる職を転々としたのちにフリーランスに。好きな山は尾瀬、白山、御嶽、北岳。2023年春から岐阜県山間部のプチ古民家に移住し、半隠居ライフを通じて、どこまでユルく生きていけるのか絶賛お試し中!

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持ち前の強い好奇心で、大学時代から山・海・島を渡り歩いてきた個性派。自然ガイド、環境コンサル、アウトドア誌編集者、市営公園管理人、企業の森づくりなどなど、自然にまつわる職を転々としたのちにフリーランスに。好きな山は尾瀬、白山、御嶽、北岳。2023年春から岐阜県山間部のプチ古民家に移住し、半隠居ライフを通じて、どこまでユルく生きていけるのか絶賛お試し中!

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