トップライダーから新星まで ジロ・デ・イタリア2021ヒーロー名鑑|ロードレースジャーナル
福光俊介
- 2021年06月05日
INDEX
第8ステージ優勝 ヴィクトル・ラフェ(コフィディス、フランス)
逃げメンバーによる争いを冷静に展開。終盤に独走に持ち込んで勝利を挙げた。エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア)のトレイン牽引が主たる仕事だったが、スプリントに関係しないステージで自由を与えられた。「背中を押してくれたエリアには本当に感謝している」。5歳で競技を始めるも、アンダー1年目に大腿骨の手術を経験するなど苦労が多かった。2017年のアンダーフランス王者を足掛かりに、翌年には欧州選手権銀メダルを獲得した。
第10ステージ優勝 ペテル・サガン(ボーラ・ハンスグローエ、スロバキア)
アシスト陣のお膳立てもあり、フィニッシュ前数百メートルでの混乱にも冷静に立ち回った。昨年の大会では逃げ切りで1勝を挙げたが、今回は“本職”のスプリントできっちり勝ち切った。このステージ勝利でポイント賞のマリアチクラミーノをゲットすると、しっかりとミラノまで持ち帰った。新型コロナ感染でシーズンインが遅れたが、ここまでで3勝を挙げて存在感を示している。次なる目標は、ツール・ド・フランスとなってくる。
第11ステージ優勝 マウロ・シュミット(チーム クベカ・アソス、スイス)
162kmのうち35.2kmを占めたグラベルステージ。これを一番に攻略したのは21歳のシュミットだった。プロ入り前はマウンテンバイクやシクロクロスで走りを養っていた経験が、この日大いに生きた。プロ1年目で、当初はグランツール出場はレースプログラムに入っていなかったという。ジロ出場が決まったのも2週間前。大急ぎで準備して乗り込んだ大会で、最高の仕事を果たした。東京2020五輪のトラック・チームパシュートに出場予定。
第12ステージ優勝 アンドレア・ヴェンドラーメ(アージェードゥーゼール・シトロエン チーム、イタリア)
スタートから70kmまで逃げが決まらず、その間には激しい落車が数回発生。やっとの思いで逃げた選手の中から、最後はヴェンドラーメに女神がほほ笑んだ。ときにチームでスプリントを任されることもあるスピードの持ち主は、ライバルが繰り出す上りでのアタックに対処できれば勝てると踏んでいた。この日一緒に逃げたジョフリー・ブシャール(フランス)とは普段から仲良し。会心のコンビプレーでの勝利に、2人とも男泣き。
第13ステージ優勝 ジャコモ・ニッツォーロ(チーム クベカ・アソス、イタリア)
2015年と2016年にポイント賞を獲得していながら、ステージ優勝とは縁がなかった。悲願のステージ優勝に「諦めかけたこともあったけど、負けることを恐れずリスクを負った結果が勝利につながったのだと思う」。現役のヨーロッパ&イタリア王者に、さらなる勲章が加わった。この2日後に大会を離脱したが、改めて調整してツール・ド・フランスとベルギー・フランドル地方で開催されるロード世界選手権へフォーカスする構えだ。
第14ステージ優勝 ロレンツォ・フォルトゥナート(エオーロ・コメタ、イタリア)
プロ初勝利がモンテ・ゾンコランとは、もはや奇跡的ストーリー。現在の師であるアルベルト・コンタドール氏、イヴァン・バッソ氏も激走した名峰で、グランツール初出場の25歳が躍動した。この日の朝、バッソ氏に「逃げに入ってゾンコランで攻撃しよう」と言われ、その通りに走ってみせたのだった。2016年にトレーニーとして入ったティンコフで、コンタドール氏と接点。今大会では最終的に個人総合16位に入り、今後に期待がかかる。
第15ステージ優勝 ヴィクトール・カンペナールツ(チーム クベカ・アソス、ベルギー)
ラグーナでの大クラッシュで幕が開けた1日は、最終的に2人の逃げ切りに。チームメートとうまくレースを組み立てていたカンペナールツが、マッチスプリントを制した。TT巧者として鳴らしてきた彼も、若手の台頭で30歳を目前にスタイルの変化を余儀なくされている。生きる道は“逃げ屋”になること。早速結果を出して「これで晴れてロードレーサーになれたと思う」。目標達成の2日後、故障により大事をとって大会を去った。
SHARE
PROFILE
サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。