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チームで勝ち取った勝利! 愛三工業レーシングチームの草場啓吾が全日本選手権初優勝

10月22日から10月24日にかけて広島県の広島県中央森林公園を舞台に「全日本自転車競技選手権大会ロード・レース」および「全日本選手権個人タイム・トライアル・ロード・レース」、「全日本パラサイクリング選手権・ロード大会」が開催された。

大会最終日となる10月24日は第89回全日本自転車競技選手権大会ロード・レースの男女マスターズおよび男子エリートのレースが開催された。
男子エリートでは広島県中央森林公園でのレースらしいサバイバルなレースを愛三工業レーシングチームの草場啓吾が制し、プロ2勝目。そして全日本のタイトルも初めて獲得した。

2年ぶりの開催となった全日本選手権ロードレース

これまでお伝えしてきたとおり、昨年は新型コロナウイルスの影響で開催が中止となったため、2年ぶりの開催となった全日本自転車競技選手権大会ロード・レース(以下全日本選手権ロードレース)。
レース前の選手たちからは和やかな、しかし他のレースとは違う緊張感が漂っていた。

男子エリートは12.3kmのコースを15周する、184.5kmで開催。2016年以来の200km未満でのレースとなった。
2019年に行われた全日本選手権ロードレースは227kmのレースだっとことを考えると、2021年の全日本選手権ロードレースは40kmほど短く、距離だけでいえば難易度は下がったと言えるだろう。

しかし、プレビューでもお伝えしたとおり、距離に関係なくサバイバルなレースとなることが多い広島県中央森林公園のコースでは、短くなったからと言って難易度が下がったとは思っていなかった。
むしろ、レース後半に毎周回のようにアタックが繰り返され、エース級の選手しか残らないような、そんな過酷なレースになるのではないかとレース前には予想していた。

今シーズン幾度となく逃げを決めてきた風間が全日本の舞台でも逃げを決める

大会最終日の朝は6時過ぎの段階では6℃と、この3日間で最も寒いコンディションとなった。
ただ、この日も前日までと同様、昼前には気温が上がり、メディア陣も上着を脱いで半袖になる人が出てくるなど、レースに適したコンディションとなった。

レース前の和やかな雰囲気

スタート前には前回大会の王者である入部正太朗(弱虫ペダル サイクリングチーム)と、東京オリンピックのロードレースでの完走を果たし、また前々日の個人タイムトライアルを制した増田成幸(宇都宮ブリッツェン)がシード選手として最前列に並ぶ。

最前列に並ぶ増田と入部
男子エリートのレースがスタート

11時00分に108名の選手がスタートを切ると、序盤は国内コンチネンタルチームの選手たちが集団前方を固め、様子を見るようなそんな動きが続く。

序盤はお互いを見合うような展開が続く

そしてレースが動いたのは4周目。風間翔眞(シマノレーシング)が単独で飛び出し、集団とのタイム差を広げていく。
距離が長いということで序盤から牽制気味だったこともあり、自分がきっかけになればという思いで飛び出した風間。昨シーズンからシマノレーシングに加入し、多くのレースで逃げる姿を見せてきた風間は、このレースでもチャンスがあれば逃げたいという思いをもっていた。

逃げる風間翔眞(シマノレーシング)

何人か追いかけてくるかなと思って飛び出した風間だが、集団からは誰も追いかけてくることはなく、タイム差は徐々に開いていく。最大で2分50秒のタイム差をつけ、レース前半の主役となった。

愛三工業レーシングチームがレースをコントロール

メイン集団をコントロールする愛三工業レーシングチーム

風間が単独で先行する中、メイン集団は愛三工業レーシングチームが先頭を固め、レースをコントロールする。
レース後のコメントでは他チームの協力が得られなかったということだったが、それでもコントロールすると選択したチームからはある種の覚悟のようなものが感じられた。自チームのアシスト選手は力を使ってしまう、いっぽうほかのチームのアシスト選手は力を溜めることができる。重要な場面でアシスト選手がいるかどうかがとても大きな差につながるロードレースにおいて、この選択を取った覚悟が、後の結果につながったのではないだろうか。

100km過ぎから本当の戦いが始まる

キナンサイクリングチームが攻撃を仕掛ける

レースは9周目に集団がペースを上げると、10周目には風間をキャッチし、レースを振り出しに戻す。
さらに、10周目の展望所への上りで山本元喜(キナンサイクリングチーム)がペースを上げ、2番手には弟の山本大喜(キナンサイクリングチーム)がつけ、キナンサイクリングチームとしてレースを動かし始める。
この動きをきっかけに、集団は少しずつ人数を減らし始める。

中根と入部が自らレースを動かす

11周目には一度落ち着くものの、12周目には中根英登(EFエデュケーションNIPPO)が攻撃を仕掛け、10名程度で先行する。この動き自体は集団に吸収されるも、その後も何度も中根は自ら揺さぶりをかけ、レースを動かしていく。

レース後、中根はヨーロッパで戦ってきた力を今日は出せて、その点についてはすごくポジティブだったと振り返る。

何度もアタックした中根

そしてレースが大きく動いたのは13周目。
ディフェンディングチャンピオンの入部が三段坂で仕掛ける。レース前には連覇を達成したいという話も本人からは出ていたが、その思いを体現した形だ。

単独で飛び出す入部

「そこまでもいいペースで来てはいたが、チャンスだと思って飛び出した」と、入部はレース後に飛び出した理由を語ってくれた。

何名か追い付いてきてくれることを期待した入部だが、入部に追い付く選手は現れず、しかしタイム差も少し開いたこともあり、自分のペースで走りながらラスト1周を迎える。

後続もこの入部のアタックで分裂し、以下の18名の選手が入部を追走する。

・伊藤雅和/草場啓吾/岡本隼(愛三工業レーシングチーム)
・山本元喜/山本大喜/畑中勇介(キナンサイクリングチーム)
・中根英登(EFエデュケーションNIPPO)
・小森亮平(マトリックスパワータグ)
・谷 順成(那須ブラーゼン)
・岡 篤志(NIPPOプロヴァンスPTSコンチ)
・木村圭佑(シマノレーシング)
・徳田 優(チームブリヂストンサイクリング)
・小石祐馬(チーム右京 相模原)
・阿部嵩之/増田成幸(宇都宮ブリッツェン)
・石橋 学(シエルブルー鹿屋)
・寺崎武郎(バルバレーシングクラブ)
・金子宗平

追走集団

さらに18名のうちから山本元喜、寺崎武郎、金子宗平が入部へ追走を仕掛け、集団から10秒程度のタイム差をもってラスト1周を迎える。

入部を追う金子、山本、寺崎

草場が狙いどおりのスプリントで全日本選手権を初制覇

20秒ほどのタイム差をもってラストラップに入った入部だが、追走の3名、さらにはメイン集団から飛び出した数名の選手にキャッチされ、ラスト半周ほどでレースは振り出しに戻る。

しかし、入部はキャッチされてもなおもう一度アタックを試みる。
集団も追い付くために力を使ったため、だいぶ疲弊しているように見え、三段坂でもペースが上がらなかったことあって飛び出した入部だが、入部自身もやはり力をかなり使っており、集団を振り切りような動きにはならなかった。

集団は一つのまま最後の下り区間に入り、9名でのゴールスプリントに。
金子を先頭にホームストレートへ姿を見せた集団は、残り200mを過ぎたあたりでスプリントを開始する。

ゴールスプリント

横に広がる集団の左側から残り150mでいっきに前へ出た草場がゴールライン前からガッツポーズを見せる圧巻のスプリントを見せ、プロ2勝目、そして全日本選手権ロードレースでの初めての優勝を飾った。
2位にはゴールライン上で草場に迫った増田が、3位には中根が入った。

ガッツポーズを挙げる草場

優勝した草場のコメント

チームメイトと喜ぶ草場

レースにかける思いについて

祖父が1週間前に亡くなったこともあって、このレースにかける思いというのは何よりも強かったです。天国へいってしまった祖父へは頑張ったよと伝えたいです

レース全体を振り返って

レース前からチームとしては自分と伊藤選手、岡本選手でいくと決めていました。
風間選手が逃げ始めてからは、他チームの協力を得られなかったこともあって、自分たちでコントロールすることを決め、當原選手や中川選手がコントロールしました。
このコントロールのおかげで自分たちは良い位置をキープすることができ、力を温存することができました。
たまたま自分が勝っただけで、今回の勝利はチームの勝利だと思います。

全日本チャンピオンジャージを獲得したことについて

増田選手や中根選手の上に自分が立つというのが信じられないです。
明日もう一度同じレースを走れと言われたら勝つ自信は全くないので、運がよかったというか、愛三工業レーシングチームが他のどのチームよりも勝ちたいと思っていた証拠だと思います。

お互いを称え合う草場と中根

スプリンターチームである愛三工業レーシングチームの戦略について

上りで勝負したら中根選手や増田選手には勝てないとわかっていたので、個人的には小集団でのスプリントを狙っていました。
大集団のスプリントであれば岡本選手が、上りであれば伊藤選手がという形です。

最後のスプリントについて

ラストのメンバーであれば自分が一番スプリント力があるなと自信はもっていました。
自分はトラック競技もやっていて、ハロン(200mのタイム計測)のタイム計測から逆算して150mで出れば勝てると思って、狙いどおりにスプリントしました。

今シーズンを振り返って

昨シーズンからチームは1勝もできていなくて、どうして愛三工業レーシングチームは勝てないんだと言われることもあり、かなり悔しい思いをしていました。
そんな中、南魚沼2連戦で連勝を飾ることができ、周囲からの見られ方も変わったことで、自分らの戦い方ができるようになったと思います。
これからは僕らがレースを引っ張るような、そんな責任感が生まれた全日本選手権になりました。

南魚沼からいい流れができたきっかけについて

南魚沼の前に実施した北海道合宿を通じて、この選手はこんな力を持っているな、この選手ならレースを任せられるなといった相互の理解と信頼を作ることができました。
愛三工業レーシングチームは普段個々の活動拠点で練習を行い、レースのときだけ集合するような、そんなスタイルのチームだったので、そこがチームの歯車がうまくかみ合わない一つの原因だったのではないかと思います。
合宿後にお互いを信用することができるようになった結果、この歯車がうまくかみ合い、南魚沼での連勝、その後の群馬でも3日間通じて表彰台に登り続けることができたんじゃないかなと思います。

愛三工業レーシングチームの集合写真

2位に入った増田のコメント

2位に入った増田

2位という結果について

このレースは1位を取ってこそ意味があるレースなので、悔しいです。
でも、愛三工業レーシングチームは勝った草場選手以外に、伊藤選手や岡本選手を終盤まで残していて、チームとしてもとても強いですし、純粋に草場選手は強かったなと思います。

個人TT後にあった、「マークされるかもしれない、でも正々堂々と戦う」というコメントについて

自分自身弱気だったなというのはあります。
もっとリスクを負っていければよかったんですが、最後単騎になるとスプリンターでもないのに今日はスプリントでもいけるかな?なんて思ってしまったりしていました。

終盤で9名になった展開について

残ってしかるべき選手が残ったなと感じてました。
また来年リベンジですね。
次回は6月にあると思うので、そこに向けてみんなで頑張っていきたいと思います。

3位に入った中根のコメント

3位の中根

3位という結果について

このレースは勝たないと意味がないので、ヨーロッパにチャンピオンジャージを持って帰れないというのはちょっと残念です。
でも、常に集団を小さくしようと攻撃し続けていたのは僕でしたし、アグレッシブな動きができた、ヨーロッパでこれまで戦ってきたものを出せたという意味ではポジティブに感じています。
勝った草場選手はいつも一緒に練習していて弟のような存在です。
本当に不思議なんですが、負けて悔しいという気持ちはなく、本当におめでとうという気持ちです。
これは個人的な思いですが、草場選手のような若い選手がナショナルチャンピオンジャージを獲得したことは日本の自転車界にとって本当に良いことですし、これで草場選手が自信をつけて僕のようにステップアップをしてくれれば、すごくうれしいです。

単騎でのレースについて

単騎参戦の難しさというのはとても感じました。ただ、単騎の自分がここまで集団を絞り込むことができたのは力がついた証拠だと思っています。
攻めるのも自分、守るのも自分、勝ちいくのも自分という経験は初めてでしたが、とてもいい経験になったと思います。

9名まで集団を絞り込んだ点について

僕としてはもっと絞り込みたかったです。けど、減らなかったです。マークされているなとはとても感じました。

中根とともにレースを動かした入部のコメント

2度のアタックについて

13周目のアタックは、三段坂でチャンスだと、損はないと思ってアタックしました。
理想を言えば数名追走が入って、小集団にしていく形でしたが、集団も一瞬牽制が入ったのか、タイム差が若干ついたので、まずはペースで走りました。
すぐ捕まればスプリントに備えるつもりだったんですが、20秒程度と絶妙なタイム差で推移していて、気持ちを固めてチャレンジしました。
僕を追うためには僕以上に力を使わなければならないので、エース級の選手たちばかりで僕を追うためにまとまれるのかなと思いながら、逃げていました。
残り半周ほどで捕まってからも集団も疲弊しているような感じて、また集団には草場選手がいたので、このままスプリントでは分が悪いなと思って、三段坂終わりの平坦区間でアタックしたのですが、自分もそこまでのキレはなく、抜け出すことはできませんでした。

あくまで狙うのは2連覇であり、最後までチャレンジし続けました。最後は余力なく、9位という結果に終わりました。チャレンジできたので良かったとは思いますが、連覇を狙っていたので悔しいです。

一方で、草場選手とは普段から同じレースに出ていて、よく話をする仲でもあるので、草場選手がチャンピオンジャージを着ることについては心からおめでとうと、祝福できます。

チームでの優勝から単騎での参戦となった今回の全日本選手権について

走った人数という意味では単騎ですが、チームやスポンサー様のサポートが非常に手厚く、普段一緒に練習している若い選手たちとも一緒になって高めあっていたので、常にチームメイトがいるような感覚で、チームで戦っていました。

来シーズンに向けて

例年どおりであれば6月にまた全日本選手権が開催されると思うので、そこでまたチャンピオンジャージを狙いたいと思います。

木村圭佑の引退

引退する木村圭佑(シマノレーシング)

木村圭佑(シマノレーシング)が今大会をもって引退する。
京都産業大学を卒業後シマノレーシングに所属し、引退するまで8年間、一貫して同チームに所属し続けてきた。
2016年、2017年と2年連続で全日本選手権ロードレースの3位に入っている木村は、今大会でもラスト1周に入るタイミングまで追走集団に残っており、16位というリザルトを残している。

木村圭佑のコメント

8年間を振り返って

あっという間だったという印象ですが、このチームで8年間活動することができ、とても幸せでした。

全日本選手権について

今大会のスタートラインに立つことができ、それが何よりもうれしいです。
様々なレースがある中で、一番思い入れのある全日本選手権が最後のレースになり、とても感慨深いです。
今回チームとしては結果は出せませんでしたが、野寺監督を中心に一生懸命頑張ってきたので、来年につながるんじゃないかなと思います。

応援してくださった皆様へ最後に一言

8年間、応援ありがとうございました。
皆様に支えられてこの8年間活動することができました。
ファンの皆様や家族、スタッフに対する感謝の気持ちで最後まであきらめずに走ることができ、悔いなく終わることができました。
本当にありがとうございました。

引退する木村圭佑

 

全日本自転車競技選手権大会ロード・レース
男子エリートリザルト

1位:草場啓吾(愛三工業レーシングチーム) 4時間47分16秒
2位:増田成幸(宇都宮ブリッツェン) +0秒
3位:中根英登(EFエデュケーションNIPPO) +2秒

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Bicycle Club編集部

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ロードバイクからMTB、Eバイク、レースやツーリング、ヴィンテージまで楽しむ自転車専門メディア。ビギナーからベテランまで納得のサイクルライフをお届けします。

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