マジソン郡の橋を渡り545km走るウルトラ・グラベル|竹下佳映のグラベルの世界
竹下佳映
- 2022年02月20日
すると目の前に現れたのは、見たこともないような大木でした。砂利道交差点のど真ん中に、Tree in the Roadの文字どおりに、巨大な気がそびえ立っていました。もちろんそのときは暗いので全体の把握ができなかったのですが、後から調べると高さ30.5m、周囲5.5mもあるコットンウッド・ツリーという種類で、言い伝えでは1861年に始まった南北戦争の前に、測量士がコットンウッドの木の棒を地面に刺して郡の境界線を示したそうです。そしてそれが、今の巨大な木に育ったと……。ライトアップされている訳でもなく、装飾されている訳でもなく、ロープやバリアが周りにある訳でもなく、ただそこに生えていました。信じられないような光景でした。
最後の補給可能場所、412km地点
24時間営業の小さな店にたどり着いた頃には朝の4時半を回っていました。CPはもうありませんが、店がこの距離地点にあることは事前に知らされていたので、ここで最終区間に向けての補充をします。かなり疲労した状態でしたが、店の前で待っていた大会主催者・コースデザイナーでもあるサラの顔を見ると、疲れも吹き飛んだ気がしました。彼女も一日・一晩中ほとんど寝ることなくライダーの進行状況を確認していたのです。
温かい飲み物が飲めるのがとてもぜいたくに感じました。安くて甘ったるいコーヒーを飲みサンドウィッチをほおばりながら、ボトルに水を詰めました。サラによると私のドライブトレインが誰のよりも綺麗な状態だったそうです。ドライブトレインのコンディションは、特に悪い天候・道路コンディションでは常に気にかけるようにしています。
ジョナサンはこの時点で棄権することに決めたので、私は独りで暗闇へ再出発となりました。夜間走行のペースは遅めで、ここにたどり着くまでかなりの時間を要しましたが、それでもゴールの制限時間には問題なく間に合うような時間だったのでホッとしました。2回目の日の出を拝むまで、1時間弱。後は一気に進むだけです。
(続く)
竹下佳映
札幌出身、現在は米国シカゴ都市部に在住。2014年に偶然出会ったグラベルレースの魅力に引かれ、プロ選手に混ざって上位入賞するなどレースに出続けている第一人者。5年間グラベルチーム選手として活躍し、2022年からはプライベティアとしてソロ活動。ここしばらく飛んでいないが飛行機乗り。
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PROFILE
札幌出身、現在は米国シカゴ都市部に在住。2014年に偶然出会ったグラベルレースの魅力に引かれ、プロ選手に混ざって上位入賞するなどレースに出続けている第一人者。5年間グラベルチーム選手として活躍し、2022年からはプライベーターとしてソロ活動。ここしばらく飛んでいないが飛行機乗り。