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21歳ギルマイが大金星! 逃げ切った4人の勝負制して初のビッグタイトル|ヘント~ウェヴェルヘム

ベルギー北部・フランドル地方を舞台とする「北のクラシック」の1つ、ヘント~ウェヴェルヘムが現地3月27日に開催された。複数の石畳区間や急坂セクションが組み込まれた248.8kmのレースは、レース後半に飛び出した4人がそのまま逃げ切る形に。最後はこのメンバーによるスプリント勝負になり、21歳のビニヤム・ギルマイ(アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ、エリトリア)が先着。この大会初優勝、さらにはUCIワールドツアーでも初のタイトルを勝ち取った。急遽の参戦となった新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)も奮闘。長くメイン集団でレースを展開し、最終的に78位でフィニッシュした。

ギルマイはアフリカ人ライダー初のクラシック勝者に!

今年で84回目を迎える大会は、北のクラシックの中にあっては通過するパヴェや急坂のセクションが少なめ。ときに「スプリンターズクラシック」と称されるようにスプリンターにチャンスが巡ってくることも多いが、強風によるプロトンの分断やアタッカーたちの攻撃によって波乱の展開となることもしばしば。ここ数年は小集団でのスプリントで勝負が決まっている。

イーペルをスタートし、ウェヴェルヘムのフィニッシュラインを目指すコースは、レース後半に前述のセクションが集中。なかでも3回通過するケンメルベルグが重要ポイントになっており、前2回と最後の1回で通過するルートが異なることも特徴的。1回目と2回目は登坂距離400mで、平均勾配10.7%。上り始めの100mが25%の激坂だ。最後となる3回目は、登坂距離700mで平均勾配10.9%。頂上手前で最大勾配17%に達する。いずれも石畳の路面が選手たちの行く手を阻み、さらにその後の下りもテクニカル。確実に有力選手が動きを見せる区間だ。そのほかにも、2回通過のバネベルグ(登坂距離1.3km、平均勾配6%)なども、集団の絞り込みが起こりやすい箇所になっており、ひとときも気を抜くことは許されない。

なお、最後のケンメルベルグ通過からフィニッシュまでは約35km。そこでの選手間の駆け引きも、このレースの見どころだ。

そんなレースは、7人の逃げで幕開け。それまでに少々の出入りこそあったが、逃げグループが固まってからはレース全体が落ち着き、4分ほどのタイム差で進行した。

プロトンに緊張感が走ったのは、1回目のケンメルベルグに入った残り83km。前回覇者のワウト・ファンアールト(ユンボ・ヴィスマ、ベルギー)と、同じく優勝候補のカスパー・アスグリーン(クイックステップ・アルファヴィニル、デンマーク)がペースアップ。これをきっかけにメイン集団が崩れると、頂上からの下りを終えた先で10人以上が集団から抜け出しを図る。ここにアスグリーンやギルマイ、マテイ・モホリッチ(バーレーン・ヴィクトリアス、スロベニア)らが入り、精鋭グループ化。一方でファンアールトらはメイン集団へと戻って、25秒ほどの差で進行していった。

長く逃げ続けていた先頭メンバーでは、ヨハン・ヤコブス(モビスター チーム、スイス)が1人飛び出したが、フィニッシュまで65kmのタイミングで精鋭グループが追いつく。ただ、このままレースを終えるわけにはいかないメイン集団もペースを上げて、ほどなくして前を走っていた選手たちに合流。オリヴィエ・ルガック(グルパマ・エフデジ、フランス)だけが前をうかがったが、これもほどなくして吸収されている。

2回目のケンメルベルグに達した残り52km。やはり前方では優勝候補たちが動きを見せて、メイン集団の人数がグッと絞られていく。この区間を通過した直後にはクリストフ・ラポルト(ユンボ・ヴィスマ、フランス)がアタックして、集団はさらに活性化。やがて後続が次々と合流するが、いつ決定打が生まれても不思議ではないムードになっていく。メイン集団には新城の姿もあり、良い形でレースを進めていることがうかがえる。

©︎ Jumbo-Visma

着々と残り距離を減らしていくプロトンは、いよいよ3回目のケンメルベルグへ。ここで真っ先に動いたのはファンアールト。力の違いを見せつけるかのごとく、石畳の急坂でライバルを圧倒する。しかし、ここで単独先頭に立つかに思われたが、その後の下りと平坦区間で他選手が続々合流。結局、すべてのセクションを終えた段階で50人近くが前線で生き残る格好となった。

それからはどこで決定打が生まれるかが焦点に変わったが、意外と早くやってきた。流れが変わったのは残り25km。ラポルトのアタックにギルマイ、ドリス・ファンゲステル(トタルエナジーズ、ベルギー)、ヤスパー・ストゥイヴェン(トレック・セガフレード、ベルギー)が追随。4人が先頭交代のローテーションを本格化させると、メイン集団との差は少しずつ拡大傾向になっていく。グレッグ・ファンアーヴェルマート(アージェードゥーゼール・シトロエン チーム、ベルギー)やラスムス・ティレル(ウノエックス・プロサイクリングチーム、ノルウェー)が追走を試みるも、先頭までは届かず。4人逃げの状況が色濃くなっていく。

©︎ PHOTO NEWS

残り7kmでタイム差が33秒となったのを機に、その後はメイン集団が懸命に追ってタイムギャップを減らしていくが、先頭4人も勢いは衰えず。完全に協調体制がとられた状態で最終盤までやってくると、残り1kmを示すフラムルージュ通過で18秒。逃げ切りは濃厚な情勢になって、いよいよ優勝をかけて牽制状態へと移った。

ラポルト、ファンゲステル、ストゥイヴェン、ギルマイの並びで迎えた最終局面。仕掛けどころを図りながらの我慢くらべは、残り250mでギルマイが一番にスプリントを開始。他の3人とは別ラインで加速すると、ラポルトが最後まで追いかけたがギルマイのスピードが勝った。スプリント力のある4人による勝負になったが、ギルマイが大金星でヘント~ウェヴェルヘムを制した。

©︎ Jumbo-Visma

勝ったギルマイは、2000年4月2日生まれの21歳。東アフリカのエリトリア出身で、2020年シーズンにNIPPO・デルコ・ワンプロヴァンスでプロデビュー。デルコで走っていた昨季途中で現チームへと移り、すぐに主力ライダーとなった。昨年のUCIロード世界選手権では、アンダー23ロードレースで銀メダルを獲得。その力は今シーズンも序盤から発揮され、ミラノ~サンレモでは12位、2日前のE3サクソバンククラシックでは5位に入っていた。そしてこの勝利で一気にトップライダーの仲間入り。今後はグランツールデビューも予定され、ジロ・デ・イタリアに出場することを公言。スプリント力に定評があり、ポイント賞候補の1人に数えられそうだ。

波乱のレースは、2位にラポルト、3位にこれまたビッグレース初表彰台のファンゲステルが入線。メイン集団は上位4人から8秒遅れてのフィニッシュとなった。また、しばし好位置でレースを進めた新城は78位。今回も、上位戦線で争ったモホリッチらのアシストとして機能した。

©︎ PHOTO NEWS

毎レース驚きの展開となっている今年の北のクラシック。次戦は現地3月30日、ドワーズ・ドール・フラーンデレンが開催される。ここにはタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア)やフィリッポ・ガンナ(イネオス・グレナディアーズ、イタリア)らが参戦を予定。彼らが石畳をいかに攻略するか、注目度の高い一戦となる。

ヘント~ウェヴェルヘム優勝 ビニヤム・ギルマイ コメント

©︎ PHOTO NEWS

「この歴史的な勝利は、私自身はもちろん、チームやアフリカのサイクリングにとっても非常に重要だ。前回のE3サクソバンククラシックが私にとって初のフランドルクラシックだったが、以来すっかり石畳に魅せられている。個人的にはヘント~ウェヴェルヘムが今年の春のクラシックの締めくくりだが、それについては何の迷いもなかった。とても素晴らしい応援に感動しているし、経験なく挑んだフランドルクラシックでこんな結果になるとは夢にも思わなかった。私を信じてくれたチームに心から感謝している。

いつもチームメートがサポートしてくれて、チームカーからは貴重な情報が得られる。勝てると確信したのは、最後の数百メートルだった。残り250mでスプリント開始し、あとは目を閉じて、できる限りの力を出した。まだ何が起きたのか実感できずにいるが、クラシックを勝ち取った初のアフリカ人ライダーになったことだけは理解できたよ」

ヘント~ウェヴェルヘム2022 結果

1 ビニヤム・ギルマイ(アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ、エリトリア) 5:37’57”
2 クリストフ・ラポルト(ユンボ・ヴィスマ、フランス)ST
3 ドリス・ファンゲステル(トタルエナジーズ、フランス)
4 ヤスパー・ストゥイヴェン(トレック・セガフレード、ベルギー)
5 セーアン・クラーウアナスン(チーム ディーエスエム、デンマーク)+0’08”
6 ティム・メルリール(アルペシン・フェニックス、ベルギー)ST
7 マッズ・ピーダスン(トレック・セガフレード、デンマーク)
8 イヴァン・ガルシア(モビスター チーム、スペイン)
9 マテイ・モホリッチ(バーレーン・ヴィクトリアス、スロベニア)
10 アルノー・デマール(グルパマ・エフデジ、フランス)
78 新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス、日本)+7’06”

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PROFILE

福光俊介

福光俊介

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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