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マチューが「クラシックの王様」2年ぶり戴冠! ポガチャルらとの激闘制す|ロンド・ファン・フラーンデレン

クラシックレース最高峰の「ロンド・ファン・フラーンデレン」が現地43日に行われ、4人による優勝争いをマチュー・ファンデルプール(アルペシン・フェニックス、オランダ)が制した。2020年以来となる2度目の“キング・オブ・クラシック”戴冠。初出場ながら優勝候補に挙がったツール・ド・フランス王者のタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア)は、ファンデルプールとの勝負に持ち込みながらも、最後の最後でスプリントに失敗。初のロンドチャレンジは4位に終わった。

ポガチャルとの勝負に集中したマチュー、後続の追い上げにも冷静に対処

ロンド・ファン・フラーンデレンは、開催地ベルギーにおいては最大のレースとされ、ロードレースシーンにおけるワンデーレース最高権威ともいわれる名誉ある戦いでもある。クラシックレースの中でもとりわけ歴史と伝統を誇る「モニュメント」の1つに数えられ、別名“クラシックの王様”。1913年に初開催され、今回で106回目を数える。

©︎ SprintCycling

きわめて過酷なコース設定がなされ、例年250kmを超える長距離かつテクニカルなルートセッティング。なかでも次々とやってくるパヴェ(石畳)や急坂といった要素が、このレース最大の特徴であり、観る者を魅了する。今回はレース距離をアントワープからアウデナールデまでの273kmに設定し、急坂と石畳合わせて25のセクションを通過する。

なかでも、3回(136km地点、218km地点、256km地点)登坂するオウデ・クワレモント(登坂距離2.2km、平均勾配4%、最大勾配11.6%)と、2回登坂(221km地点、259km地点)のパテルベルグ(0.36km12.9%、20.3%)は、例年勝負どころとなる注目ポイント。2回目のパテルベルグを越えると、フィニッシュまでは14km。この段階でどの程度前線に人数が残っているかで、最終盤の展開は変わってくる。

いよいよ迎えたレースは、リアルスタートから数回のアタック合戦によって9人が逃げグループを形成。同時にメイン集団もタイム差をきっちりコントロールして、420秒ほどの間隔でレース前半を進行させた。

長く続いたこの状況が変化したのは、フィニッシュまで100kmを切ったタイミング。ネイサン・ファンホーイドンク(ユンボ・ヴィスマ、ベルギー)とヨナス・コッホ(ボーラ・ハンスグローエ、ドイツ)が飛び出したのをきっかけに、メイン集団では意識的にペースを上げようとの動きが断続的に発生。やがて13人の追走グループが形成されると、その中には2019年の覇者であるアルベルト・ベッティオル(EFエデュケーション・イージーポスト、イタリア)やゼネク・スティバール(クイックステップ・アルファヴィニル、チェコ)といった実力者が含まれた。

活性化したメイン集団は、追走にメンバーを送り込まなかったトタルエナジーズやUAEチームエミレーツがペーシング。ときおり内部でクラッシュが発生したが、倒れた選手たちの復帰を待たずに先を急ぐ。残り約70kmで迎えた登坂区間カナリエベルグではティム・ウェレンス(ロット・スーダル、ベルギー)ら3人が抜け出して、前を行く追走グループに合流した。

©︎ SprintCycling

緊張感高まる状況で迎えた2回目のオウデ・クワレモント。先頭では序盤からの逃げが完全に崩壊し、タコ・ファンデルホールン(アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ、オランダ)が単独トップに立つ。その後ろではポガチャルが猛然とペースを上げて、メイン集団も崩壊。追走グループ、さらには逃げていたメンバーも全員パスして前線は大きくシャッフル。これには後方を走っていたファンデルプールら有力どころも慌ててポガチャルをチェック。直後にやってきたパテルベルグでは、ヤン・トラトニク(バーレーン・ヴィクトリアス、スロベニア)がアタックし、抜け出すまでには至らなかったものの集団の絞り込みには効果的な動きとなった。

©︎ PHOTO NEWS

こうした状況から、残り48kmでディラン・ファンバーレ(イネオス・グレナディアーズ、オランダ)とフレッド・ライト(バーレーン・ヴィクトリアス、イギリス)がうまく抜け出して、そのまま2人逃げを開始。メイン集団はいったん落ち着いたかに見えたが、直後のコッペンベルグの上りでまたもポガチャルがペースを上げると、ファンデルプールも応戦。この2人につけたのはヴァランタン・マドゥアス(グルパマ・エフデジ、フランス)ただ1人。バラバラになった後続では前回覇者のカスパー・アスグリーン(クイックステップ・アルファヴィニル、デンマーク)がメカトラブルでストップ。何とか再出発したが、この段階で完全に脱落した。

勢いづいたファンデルプール、マドゥアス、ポガチャルの3人は、残り37kmでやってきたターイエンベルグで先頭2人に合流。実質のメイン集団である後ろのグループも追撃ムードが高まり、アタックが散発するが前を行く5人との差は広がる一方。そのまま最後のオウデ・クワレモントを迎えることになり、優勝争いは最前線のメンバーから出ることは決定的になった。

ついにやってきた最重要区間。オウデ・クワレモントでスピードを上げたのはやはりポガチャル。ライト、ファンバーレ、マドゥアスと次々と遅れ、ファンデルプールとのマッチアップの様相へ。そのままパテルベルグにも到達し、両者ならんで急坂をこなす。この中腹でファンデルプールがバランスを崩してコースアウトしかけるも、うまくリカバリーしてポガチャルの先行は許さない。両者一歩も引かぬまま、最後の平坦区間へ。

©︎ PHOTO NEWS

先頭交代を繰り返すファンデルプールとポガチャル。どちらが仕掛けるでもなく、残り距離を着々と減らしていく。その後ろでは、ファンバーレとマドゥアスが第2パックを形成。こちらもペースが完全には落ちておらず、メイン集団が崩れたことによって生まれた第3、第4のパックの追走をかわす。

この形成のまま、レースは最終局面へ。残り1kmのフラムルージュ通過と同時にポガチャルがファンデルプールを前に出すと、そのまま牽制状態に。スピードを落として両者にらみ合いとなる一方で、最後まであきらめないファンバーレとマドゥアスが一気に迫ってくる。仕掛けるタイミングをギリギリまで待つファンデルプールとポガチャル。残り300mでマドゥアスがスプリントを開始するとファンバーレを引き連れて先頭2人に追いついたが、この瞬間を待って加速したのはファンデルプールだ。

土壇場で追い上げを許しながらも、やはりフィニッシュ前の強さでは一日の長があるところを見せつけたファンデルプール。先頭を一切譲ることなく、一番にフィニッシュへと飛び込んだ。驚異の追い込みを見せたファンバーレが2位、殊勲のマドゥアスが3位と続いたが、ファンデルプールとの勝負に持ち込んだポガチャルはスプリント開始が一瞬遅れたばかりか、追い上げてきた2人に左右を挟まれ加速しきれず。初のロンド参戦は4位に終わった。

©︎ PHOTO NEWS

ファンデルプールは、これが2年ぶりのロンド制覇。その時はワウト・ファンアールト(ユンボ・ヴィスマ、ベルギー、今回は欠場)とのマッチアップによる勝利だったが、今回は違った形で勝負をモノにした。昨年から続いた背部とヒザの故障でシーズンインが遅れたが、今季初戦のミラノ~サンレモ(3位)以降常時ハイクオリティの走りを披露。330日にはドワーズ・ドール・フラーンデレンにも勝っており、絶好調でクラシックシーズンを戦っている。今後は410日のアムステル・ゴールドレース、同17日のパリ~ルーベに参戦予定で、戦いのペースを緩める気は一切ない。

©︎ PHOTO NEWS

今大会は最終的に103選手が完走。レース前々日には雪が降るなど天候や寒さが心配されたが、好天のもと歴史的な一戦が行われ、現地フランドルのファンは大熱狂した。

©︎ Getty Images

ロンド・ファン・フラーンデレン優勝 マチュー・ファンデルプール コメント

©︎ PHOTO NEWS

「この結果を得るために全力を尽くした。少し前まではクラシックシーズンを戦えるかさえわからなかったから、勝てたことが本当に信じられない。

最終局面は後ろがものすごい勢いで迫ってきていたから、いつもより早めのスプリントを試みた。ポガチャルの強さに耐えるのが精いっぱいで、まさか後ろが追ってきているとは思わなかった。

オウデ・クワレモントとパテルベルグでのポガチャルの強さは考えられないものがあった。何度もあきらめそうになったけど、同様の経験は過去3度していて、その状況を乗り切る方法も心得ていた。だから、彼の動きだけに集中することにした。それでもやっぱり脚は痛くて、スプリント勝負で決めるしか手段はなかった。最後は残っていた力をすべて振り絞った。とにかくこの大成功を喜びたい」

ロンド・ファン・フラーンデレン2022 結果

1 マチュー・ファンデルプール(アルペシン・フェニックス、オランダ) 6:18’30”
2 ディラン・ファンバーレ(イネオス・グレナディアーズ、オランダ)ST
3 ヴァランタン・マドゥアス(グルパマ・エフデジ、フランス)
4 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア)
5 シュテファン・キュング(グルパマ・エフデジ、フランス)+0’02”
6 ディラン・トゥーンス(バーレーン・ヴィクトリアス、ベルギー)ST
7 フレッド・ライト(バーレーン・ヴィクトリアス、イギリス)+0’11”
8 マッズ・ピーダスン(トレック・セガフレード、デンマーク)+0’48”
9 クリストフ・ラポルト(ユンボ・ヴィスマ、フランス)ST
10 アレクサンダー・クリストフ(アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ、ノルウェー)

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PROFILE

福光俊介

福光俊介

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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