BRAND

  • FUNQ
  • ランドネ
  • PEAKS
  • フィールドライフ
  • SALT WORLD
  • EVEN
  • Bicycle Club
  • RUNNING style
  • FUNQ NALU
  • BLADES(ブレード)
  • flick!
  • じゆけんTV
  • buono
  • eBikeLife
  • Kyoto in Tokyo

STORE

MEMBER

  • EVEN BOX
  • PEAKS BOX
  • Mt.ランドネ

マチュー攻略がコースより重要!「アムステル・ゴールドレース」展望|ロードレースジャーナル

vol.35 本来のコース設定が復活!
ホームレースに燃える絶好調マチューを破る方法はあるのか!?

国内外のロードレース情報を専門的にお届けする連載「ロードレースジャーナル」。春のクラシックシーズンは、オランダやベルギー南部・ワロン地方を舞台とするアルデンヌクラシックへと移っていく。その第1弾が、4月10日にオランダで開催のアムステル・ゴールドレース。上れるスプリンターからパンチャー、スピードを有するクライマーまで、幅広い脚質にチャンスあり。そんなスペクタクルなレースの見どころをまとめておきたい。

特別措置により4月第2日曜日の開催に

アムステル・ゴールドレースが初開催されたのは1966年。オランダの丘陵地帯・リンブルフ州を開催地に、当時から田舎道を走り、急勾配や突如現れるコーナーといった特徴は現在へと引き継がれている。ちなみに初開催時のレース距離は302kmだった。

新型コロナウイルスによって世界的なパニックに陥った2020年は、やむなく中止。復活開催となった昨年は、フィニッシュ地点が置かれるファルケンブルフを基点とする周回コースが用いられた。

こうした出来事を乗り越えて、第56回目を迎える今回は本来のコース設定が帰ってくる。登坂区間は33カ所。うち、名所であるカウベルグは3回上る。かつてはカウベルグでの一発勝負の趣きが強かったが、2011年に同地で開催されたロード世界選手権やその後のマイナーチェンジを経て、現在は3回目のカウベルグ通過後に小周回へ。フィニッシュ前7kmで迎えるベメレルベルグ(登坂距離800m、平均勾配4.5%、最大勾配7%)が、最終の登坂セクションになっている。

数ある登坂セクションと、「1000のコーナー」とも称されるテクニカルなコースレイアウトが関係し、必ずしもカウベルグやベメレルベルグで決定打が生まれるわけではないのが、このレースのおもしろさ。昨年も、中止前の2019年も、早い段階でメイン集団は崩れている。

なお、通例であれば4月第3日曜日に開催されるこの大会だが、同第2日曜日に開催されるパリ~ルーベが開催地・フランスの大統領選挙第1回投票日に当たっているため、今年に限って両レースの日程が入れ替わり。第2日曜日の4月10日がアムステル・ゴールドレース、第3日曜日の17日がパリ~ルーベ開催となる。

©︎ Amstel Gold Race ’21

ホームアドバンテージもプラスのマチュー 絶対的存在を打ち破る策はあるか!?

今大会へは25チームが出場。本記執筆時点で判明している範囲で、参加予定の注目選手を挙げていこう。

まず何といっても、ホームレースとなるマチュー・ファンデルプール(アルペシン・フェニックス、オランダ)の存在が大きい。2019年大会では、驚異の追い上げからそのまま小集団スプリントを制する伝説級の勝利を挙げている。直近では、4月3日のロンド・ファン・フラーンデレンで優勝。3月からロードシーズンに入ったにもかかわらず、ロンドを含めてすでに今季3勝。それまで不安視されていた背部やヒザの故障はもう心配ない。

これまでの勝ち方から、独走でも、スプリントでも、あらゆる展開に対応するマチューには死角がほとんど見当たらない。過去にはシクロクロスからのライバルであるワウト・ファンアールト(ユンボ・ヴィスマ、ベルギー)らとにらみ合いが過ぎるあまり、他者のアタックを見逃してしまうこともあったが、今回はワウトが新型コロナウイルス感染により戦線離脱中。また、ロンドで激闘を演じたタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア)も今大会は回避。変化に富むアムステルのコースへの適性は証明済みとあって、“最強の敵”がいない今回こそ絶対的な優勝候補筆頭であることは間違いない。

2019年のこの大会では伝説的な勝ち方をしたマチュー・ファンデルプール(左)。強さを増した今、死角はほとんど見当たらない ©︎ Amstel Gold Race ’19

そんなマチューにどうやって土をつけるかが、ほか24チームの共通テーマになる。予想されるレースの流れとしては、アルペシン・フェニックスがメイン集団をコントロールする時間が長くなると考えられる。他が打てる手立てとしては、とにかく「マチュー一択」の同チームを消耗させるとともに、各チームのエースがマチューと対峙できるシチュエーションを確実に構築していくしかない。

前述したように、近年の傾向として早い段階でメイン集団が崩れており、レース終盤は各チームのエースクラスによるぶつかり合いになっている。また、有力選手の動きにはマチューが確実にチェックに動くであろうことから、集団が崩壊してからいかに最強の男の力を削っていくかがポイントだ。

パンチャーやアタッカー的な脚質の選手であれば、準エースクラスの選手を確実に前線に残したうえで集団の活性化を図り、最終盤のカウベルグやベメレルベルグでアタックを決めたいところ。独走に持ち込めなかったとしても、マチューだけは切り離したい。これができるとするなら、トーマス・ピドコック(イギリス)とディラン・ファンバーレ(オランダ)らが控えるイネオス・グレナディアーズ勢、ティシュ・ベノート(ユンボ・ヴィスマ、ベルギー)、カスパー・アスグリーン(クイックステップ・アルファヴィニル、デンマーク)、ミケル・ヴァルグレン(EFエデュケーション・イージーポスト、デンマーク)、マテイ・モホリッチ(スロベニア)とディラン・トゥーンス(ベルギー)のバーレーン・ヴィクトリアス勢、セーアン・クラーウアナスン(チーム ディーエスエム、デンマーク)、シュテファン・キュング(スイス)とヴァランタン・マデュアス(フランス)のグルパマ・エフデジ勢、ブノワ・コスヌフロワ(アージェードゥーゼール・シトロエン チーム、フランス)、マルク・ヒルシ(UAEチームエミレーツ、スイス)といった名が挙がる。

前回優勝争いを演じたトーマス・ピドコック(左)は今回も優勝候補。早めの仕掛けで集団を絞り込みたい ©︎ Amstel Gold Race ’21

一方で、スプリントで真っ向勝負、という手もある。確実に起きるであろう登坂セクションでのアタックの応酬をしのいで、最終局面に賭ける。もちろん、マチューと十二分に渡り合えるスプリント力を有することが前提になる。

スプリンター系の選手では、クリストフ・ラポルト(ユンボ・ヴィスマ、フランス)、ブライアン・コカール(コフィディス、フランス)、ジョン・デゲンコルプ(チーム ディーエスエム、ドイツ)、イヴァン・ガルシア(モビスター チーム、スペイン)、マイケル・マシューズ(チーム バイクエクスチェンジ・ジェイコ、オーストラリア)といったところ。彼らはとにかく、33ある登坂セクションを上り切り、さらに終盤に多発する強力なアタックの数々に耐えなければならない。

前回覇者のワウト・ファンアールト(左)は欠場。代わってクリストフ・ラポルト(右)らがチームとしてのタイトル防衛に挑む ©︎ Jumbo-Visma

こうして書いてきたが、もしかすると……この大会とパリ~ルーベの日程が逆転していることが何かを生み出す可能性も決してゼロではない。いつもであれば、ルーベを終えた後に「春のクラシック走り納め」として今大会に臨む選手が多かれ少なかれいるものだが、今年に限ってはルーベに照準を定めて右肩上がりのコンディションで乗り込んでくる選手の存在も頭に置いておくべきだろう。もちろん、2週あとのラ・フレーシュ・ワロンヌやリエージュ~バストーニュ~リエージュを見据える選手たちも。そうした中から、思わぬ伏兵がタイトルをつかむことだって、ない話ではない。

いずれにせよ、その後に控えるビッグクラシックにつながる重要な一戦であることは確か。絶対的な存在がホームアドバンテージを生かして強さを見せつけるのか、はたまた打倒に燃える選手たちがあの手この手で仕掛けて大仕事を成し遂げるのか。その答えをしっかりと見届けよう。

福光俊介

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

SHARE

PROFILE

福光俊介

福光俊介

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

福光俊介の記事一覧

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

福光俊介の記事一覧

No more pages to load