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ロードレーサーを襲う心臓への恐怖、競技全体での取り組み強化の願い|ロードレースジャーナル

vol.34 増え続けるロードレーサーの心疾患
コルブレッリのケースが規則を変えるきっかけになるか

国内外のロードレース情報を専門的にお届けする連載「ロードレースジャーナル」。ヨーロッパ各地で熱戦続くレースシーンだが、驚きや心配なニュースもわれわれの目や耳に飛び込んできている。なかでも、ボルタ・ア・カタルーニャ第1ステージのレース後に起きた、ソンニ・コルブレッリ(バーレーン・ヴィクトリアス、イタリア)の不整脈による一時的な心肺停止は、彼への心配を超えて命の恐怖を感じさせる出来事であった。すでにイタリアへと帰国し、植込み型除細動器(ICD)の装着手術も完了。2連覇がかかっていたパリ〜ルーベ(4月17日)の出場はかなわないが、今後は復帰に向けてトレーニングを再開するという。これからは、ロードレース界全体でこうした事態をできる限り防ぐための取り組みを、より一層強化する必要性が出てきたように思う。そこで、ロードレーサーと心疾患との関係性を探りながら、この先の競技の在り方を考えたい。

不整脈の原因解明を急ぐコルブレッリ

コルブレッリの身に起きた事態については、筆者による記事を参照されたい。

新城幸也のチームメートのコルブレッリ、レース後の心肺停止から回復したことをチームが発表

その後の動きとしては、3月26日にスペイン・ジローナの病院を退院し、イタリアに帰国。さらに、同31日にICDの埋め込み手術が成功したことをチームを通じて発表している。

一安心といったところだが、不整脈の原因が解明されていないのが実情で、これがはっきりしない限りレース復帰は難しいものと思われる。もっとも、イタリアではICDを装着したアスリートは競技復帰が認められていない、という実情もある。実際に、サッカー・セリエAのインテルに所属していたデンマーク代表クリスティアン・エリクセンがEURO2020で心停止して倒れたことで、その後ICDの装着手術に臨んだが、イタリアでの規定によりチームを退団している(現在はイングランド・プレミアリーグのブレントフォードでプレー。デンマーク代表にも復帰している)。

コルブレッリは今後レース復帰に向けたトレーニングを再開するとしているが、エリクセンの事例などを考えると、イタリアでのレース出場は難しいとの見方が強い。

©︎ Sprintcycling

持久系スポーツに多いアスリートの心疾患

ロードレースと心疾患との関係は切っても切り離せないもので、毎シーズン数件は心臓にまつわる何らかの理由によって戦線離脱する選手が出ている。引退を余儀なくされた選手も少なくなく、2016年にはマイケル・ロジャース(オーストラリア)が、2014年にはシクロクロスで2度世界王者になり、当時28歳だったニールス・アルベルト(ベルギー)が突如キャリアの終了に追い込まれるケースもあった。

近年では、ロベルト・ヘーシンク(現ユンボ・ヴィスマ、オランダ)が2014年に、2021年にはエリア・ヴィヴィアーニ(現イネオス・グレナディアーズ、イタリア)やゼネク・スティバール(クイックステップ・アルファヴィニル、チェコ)らが手術や治療のために一時的に戦列を離れたほか、最近ではティム・デクレルク(クイックステップ・アルファヴィニル、ベルギー)が心筋炎の治療のために2月以降レースから遠ざかっていた(3月30日のドワーズ・ドール・フラーンデレンでレース復帰)。

2021年のツール・ド・フランスではアシストとして大車輪の働きを見せたティム・デクレルク。最近まで心筋炎で戦列を離れていた ©︎ A.S.O./Charly Lopez

スポーツにおける心疾患の問題は持久系スポーツに多く、ロードレースに限らず、マラソンやサッカーといった「心臓が鍛えられる」競技に発生しやすい傾向にある。最悪、死に至ることもあり、ロードレースでもレース途中にバイクから落ちるようにして倒れた選手が実際は心臓麻痺を起こしており、そのまま息を引き取った例もある。

生活環境によって心臓への負荷がかかっているとの見方も

スポーツ選手の心疾患には、いくつかのパターンに分かれているといわれる。代表的なものとして、コルブレッリのケースに該当する不整脈型心筋症や、左室肥大を特徴とする肥大型心筋症が挙げられる(その他のタイプも存在する)。

また、なかには遺伝性の心疾患を潜在的に有しており、それに気づかずに競技を続けた結果、問題が発生したというものもある。現在、B&Bホテルズ KTMでチームスタッフを務めるジミー・テュルジス(フランス)は、2020年のシーズン序盤に重度の心疾患を持つことが判明。その2年前には弟が同様の症状で引退していた経緯があり、それらが遺伝性のものであることがわかったという。

2020年に心疾患がわかり引退を強いられたジミー・テュルジス。その2年前には弟も心疾患により引退。遺伝性の心疾患を有していることが判明した © B&B HOTELS – KTM

前述したように持久系スポーツに多いアスリートの心疾患だが、マラソンやサッカーと比較して“自転車乗り”がこうした問題に陥りやすいという話もある。

過去の調査結果によれば、都市部で自転車通勤をすると肺や心臓に負担がかかりやすい、との報告がなされている。自転車通勤者の肺には、徒歩通勤者に比べて2.3倍もの炭素が含まれており、その原因は自動車の排ガスから放出される煤の微粒子だという。この煤が心肺機能低下させる要素になっており、大気汚染の中で自転車に乗るのは心臓病の発生を助長しているとの見方もあるのだとか。

ロードレースはいささか事情が変わってくるだろうが、数時間バイクにまたがる日々のトレーニングやレースの中で、大なり小なり心臓に負担がかかっていることはまぎれもない事実。そうでもしないと強いライダーになれないことは確かだが、身体的な要因や生活環境によって、気づかぬうちに必要以上の負荷を心臓にかけている可能性は否定できない。

心疾患に対する明確なプロトコルが必要か

国内外のトップライダーから聞かれる心疾患の話題。医療の進歩とともに、これまでわかりにくかった症例も次々と見つかるようになってきた。こうした問題に悩む選手たちができる限り長くキャリアを続けられるように、さらには命の危険にさらされることがないように、取り組んでいくことも必要になるだろう。

具体的には、野球やサッカーなどと同様に心臓を含んだメディカルチェックをチームに義務付けたり(すでに行っているチームは多いと思われる)、脳震盪やCovid-19のように症状発生時や競技復帰にかかるプロトコルの作成などが挙げられる。

生身の人間がバイクを操り、限界に挑戦する姿は美しい。だからこそ、思わぬアクシデントは可能な限り防いで、この競技のすばらしさを堪能したい。選手も、関係者も、そしてファンも、誰もが納得し不安を和らげる手立てを考える時が来た。コルブレッリのケースは、それくらい影響の大きなものだったと思う。

コルブレッリのケースをきっかけに心疾患にかかるプロトコルの作成は必要ではないか。ロードレーサーの心臓トラブルを未然に防ぐ取り組みは間違いなく必要だ(写真はパリ〜ニース2022より) ©︎ A.S.O./Alex Broadway

福光 俊介

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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福光俊介

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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