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ベローナが逃げ切りでプロ初勝利、マイヨジョーヌはログリッチへ移動|クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ

ツール・ド・フランス前哨戦、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネは現地6月11日に第7ステージが行われた。超級の上りを2つ越える本格山岳コースでのレースは、前半に決まった逃げグループのメンバーによるステージ優勝争いに。最後はカルロス・ベローナ(モビスター チーム、スペイン)が独走に持ち込み、逃げ切りでプロ初勝利を飾った。個人総合争いも大きく変動し、首位の証であるマイヨジョーヌはワウト・ファンアールト(ベルギー)からプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)へ、ユンボ・ヴィスマ内で移動している。

トップチーム所属10年目で初めてのビッグレース勝利

ここまで丘陵ステージと個人タイムトライアルで進んできた大会は、いよいよ終盤戦にセッティングされた本格山岳ステージへ。サン=シャフレからヴォジャニーまでの135kmで争われたこの日は、2つの超級山岳が待ち受ける。リアルスタートから早々に名峰ガリビエ峠(登坂距離23km、平均勾配5.1%)の上りを開始。その後長い下りを経て、2つ目の超級山岳クロワ・デ・フェール峠(29km、5.2%)へ。標高2000m級の上りを2つこなした選手たちは、フィニッシュラインが敷かれるヴォジャニーへの2級山岳を最後に上ることになる。最終盤の5.7kmは平均勾配7.2%。しかし、途中の下りも含まれていることから、実際は10%超の登坂をこなさなければならない。マイヨジョーヌ争いに大きな変化が起きることが予想された。

スタートを前に、クリストファー・フルーム(イスラエル・プレミアテック、イギリス)が体調不良のため出走しないことを発表。かつての王者が大会から姿を消すこととなった。そうした中でスタートが切られたレースは、リアルスタートからハイペースで進行。5.2km地点に置かれた中間スプリントポイントは、イーサン・ヘイター(イネオス・グレナディアーズ、イギリス)が1位で通過している。

©︎ A.S.O./Aurélien Vialatte

なおも出入りが繰り返された前半戦。ガリビエ峠の上りでは状況が落ち着くことがなく、ポジションを前後させながらもうまくタイミングを合わせたピエール・ロラン(B&Bホテルズ KTM、フランス)が頂上を1位通過。山岳賞トップを守るべく、この日もポイントを加算した。

この後の下りでようやく逃げが決まり、ロランら5人が先行すると、さらに集団からブリッジを仕掛けた選手たちが合流。最大で18人の先頭グループが形成された。

それからは先頭で散発的に単独で前をうかがう選手が現れたものの、独走するまでには至らず、飛び出しては戻って、という状況が繰り返される。メイン集団は、リーダーチームのユンボ・ヴィスマがペーシングを担って進行。3分30秒前後の差で残り距離を着々と減らしていった。

©︎ A.S.O./Aurélien Vialatte

先頭グループに変化が見られたのは、2つ目の超級山岳クロワ・デ・フェール峠に入ってのこと。グレゴール・ミュールベルガー(モビスター チーム、オーストリア)のアタックに、ロラン、ケニー・エリッソンド(トレック・セガフレード、フランス)、ヴィクトル・ラフェ(コフィディス、フランス)、そしてベローナが続く。その後も何度かミュールベルガーがアタックしたが、決定打にはならず、そのまま頂上へ。ここはロランがしっかりとトップで通過して、山岳ポイントを伸ばしている。

©︎ A.S.O./Aurélien Vialatte

タイミングを同じくして、メイン集団では個人総合12位につけていたエンリク・マス(モビスター チーム、スペイン)が脱落。さらに頂上を目前にマイヨジョーヌのファンアールトが遅れる。彼らの集団復帰を阻むべく、バーレーン・ヴィクトリアスがペースアップを図りながら峠を通過。先頭までとは2分程度の差まで縮まった。

©︎ A.S.O./Aurélien Vialatte

下りに入ると先頭ではベローナが抜け出し、これをエリッソンドが追いかける。フィニッシュまで残り10kmとなったところでエリッソンドが追いつき、2人逃げの態勢へ。この流れで最後の2級の上りへと入ると、すぐにベローナがエリッソンドを引き離すことに成功。ここから、ステージ優勝をかけての独走が始まった。

©︎ A.S.O./Aurélien Vialatte

メイン集団は最後の上りに入ってグルパマ・エフデジが牽引を開始。ダヴィド・ゴデュ(フランス)の上位進出を狙って終盤を組み立てる。残り3kmで数回のアタックが起きると、今度はヨナス・ヴィンゲゴー(ユンボ・ヴィスマ、デンマーク)が前へ出てさらにペースアップ。これで集団が7人に絞られると、残り2kmを切ったところでログリッチが満を持してアタック。ユンボ・ヴィスマ勢をマークしていたベン・オコーナー(アージェードゥーゼール・シトロエン チーム、オーストラリア)がこれを追ったが、ログリッチのパンチ力に差は広がる一方。完全に勢いづいたログリッチは、ただひとり逃げ続けるベローナへ急激に迫った。

©︎ A.S.O./Aurélien Vialatte

最後は13秒まで縮まったタイム差だったが、ベローナも失速することなくフィニッシュまでやってきた。前半からの貯金を生かし、最後まで逃げ切ってみせた。トップチームでの活動10年目、29歳にしてプロ初勝利。これまで何度か勝利に迫ったことがあったが、ついに大仕事をやってのけた。

©︎ A.S.O./Aurélien Vialatte

ベローナに続いてやってきたのはログリッチ。総合系ライダーでは先着となるステージ2位を確保。マイヨジョーヌをファンアールトから引き継ぐことが決まった。さらに、この日の立役者であるヴィンゲゴーも3位と続き、ログリッチを追い続けたオコーナーは4位で終えた。

これらの結果から、個人総合首位にログリッチが浮上し、総合タイム差44秒でヴィンゲゴーが続く形に。ユンボ・ヴィスマ勢がワン・ツーを占め、1日を残して盤石の態勢へ。この2人を追うのが、総合タイム差1分24秒のオコーナー。この6秒差でテイオ・ゲイガンハート(イネオス・グレナディアーズ、イギリス)、さらに2秒差でダミアーノ・カルーゾ(バーレーン・ヴィクトリアス、イタリア)と位置し、個人総合3位以下は僅差となっている。

全8ステージで争われるドーフィネは、現地12日に最終日を迎える。サン=タルバン=レイスからプラトー・ド・ソレゾンまでの137.5kmに設定される第8ステージは、スタートから1級と3級の上りを立て続けにこなし、一度平坦区間へ。後半に入ると、1級山岳コル・ド・ラ・コロンビエールを越えて、大会全体のフィナーレとして超級山岳プラトー・ド・ソレゾンへ。登坂距離11.3km、平均勾配9.2%。上りの入口が10%超で、中腹以降も8~9%の勾配が続く。最後の登坂でドラマが待っているか。ここを上り終えた時点で、今大会の勝者が決定する。

ステージ優勝 カルロス・ベローナ コメント

©︎ A.S.O./Aurélien Vialatte

「プロとして12年間走ってきて、年々強くなっていると思っていたが、なかなか勝つことができなかった。ただ、近年は自信がついてきて、ツール・ド・フランスやブエルタ・ア・エスパーニャでステージ上位に入れるようになっていた。逃げている間は“絶対に今日は勝たないといけない”と思ったし、ツールの山岳をイメージして走るよう努めた。ミュールベルガーが逃げグループで素晴らしい働きをしてくれたことに心から感謝したい。今日は脚もあって、最高の成績が手に入った」

個人総合首位 プリモシュ・ログリッチ コメント

©︎ A.S.O./Aurélien Vialatte

「今日はレースを楽しむことができた。数年前のツールで初めてステージ優勝した地でもあり、今日も良い走りができた。ステージ優勝を逃したことは残念だが、それが最優先ではなかったので気にはしていない。何よりカルロス(ベローナ)が今日一番強かった。

明日がクイーンステージだと思っている。もちろんリーダージャージを守りたいし、勝負は決していないので、緊張感をもって走らないといけない。ツールに向けた足がかりとしてドーフィネを走っていて、個人としてもチームとしても順調に調整できている。日々状態の良さを実感しているし、自信をもって走れている」

クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2022 第7ステージ結果

ステージ結果

1 カルロス・ベローナ(モビスター チーム、スペイン) 3:53’35”
2 プリモシュ・ログリッチ(ユンボ・ヴィスマ、スロベニア)+0’13”
3 ヨナス・ヴィンゲゴー(ユンボ・ヴィスマ、デンマーク)+0’25”
4 ベン・オコーナー(アージェードゥーゼール・シトロエン チーム、オーストラリア)+0’27”
5 トビアス・ヨハンネセン(ウノエックス・プロサイクリング チーム、ノルウェー)+0’39”
6 エステバン・チャベス(EFエデュケーション・イージーポスト、コロンビア)+0’40”
7 ダヴィド・ゴデュ(グルパマ・エフデジ、フランス)ST
8 ルイス・メインチェス(アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ、南アフリカ)
9 テイオ・ゲイガンハート(イネオス・グレナディアーズ、イギリス)+0’48”
10 ジャック・ヘイグ(バーレーン・ヴィクトリアス、オーストラリア)+0’56”

個人総合時間賞

1 プリモシュ・ログリッチ(ユンボ・ヴィスマ、スロベニア) 25:22’08”
2 ヨナス・ヴィンゲゴー(ユンボ・ヴィスマ、デンマーク)+0’44”
3 ベン・オコーナー(アージェードゥーゼール・シトロエン チーム、オーストラリア)+1’24”
4 テイオ・ゲイガンハート(イネオス・グレナディアーズ、イギリス)+1’30”
5 ダミアーノ・カルーゾ(バーレーン・ヴィクトリアス、イタリア)+1’32”
6 ダヴィド・ゴデュ(グルパマ・エフデジ、フランス)+1’40”
7 トビアス・ヨハンネセン(ウノエックス・プロサイクリング チーム、ノルウェー)+2’05”
8 マッテオ・ヨルゲンソン(モビスター チーム、アメリカ)+2’06”
9 ジャック・ヘイグ(バーレーン・ヴィクトリアス、オーストラリア)+2’12”
10 ルイス・メインチェス(アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ、南アフリカ)+2’16”

ポイント賞

ワウト・ファンアールト(ユンボ・ヴィスマ、ベルギー)

山岳賞

ピエール・ロラン(B&Bホテルズ KTM、フランス)

ヤングライダー賞

トビアス・ヨハンネセン(ウノエックス・プロサイクリング チーム、ノルウェー)

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PROFILE

福光俊介

福光俊介

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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