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濃かったツール・ド・フランス第1週と移籍の噂|小玉 凌のツール取材記

気鋭の若手サイクルジャーナリスト、小玉 凌さんがキャリア2回目となるツール・ド・フランス取材に赴いている。熱を帯びる日々のステージとともに進んでいく3週間の旅。レースそのものにとどまらず、その傍らで起こった出来事や、“ここだけの話題”なども日本のファンに向けてレポートする。

その第3回は、酷暑広がるフランスと移籍の噂でにぎわった第1休息日について。

急激な暑さのクレルモン=フェランで過ごす休息日

ツール・ド・フランスは最初の休息日を迎えました。総合優勝争いは秒差を争う熱戦。スプリントステージでは調子を上げる選手も現れ、後半も目が離せなさそうです。

-第7ステージ- クセのあるステージでも止まらないフィリプセン

山岳ステージとスプリントステージがテンポ良く現れる今ツール。

モン・ド・マルサンからボルドーへの約170kmはヤスペル・フィリプセン(アルペシン・ドゥクーニンク、ベルギー)が3度目の勝利を飾りました。

フィリプセンが今大会3勝目、カヴェンディッシュ最多勝利記録更新はおあずけ|ツール・ド・フランス

フィリプセンが今大会3勝目、カヴェンディッシュ最多勝利記録更新はおあずけ|ツール・ド・フランス

2023年07月08日

そしてこのグリーンジャージに続いて2位に食い込んだのはマーク・カヴェンディッシュ(アスタナ・カザクスタン チーム、イギリス)​​。フィニッシュ目前のバンプでバイクが跳ねると、弾みでチェーンが暴れてしまう。満足なシフティングでスプリントに挑めなかったそう。それでも初速の伸び方は際立っており、勝ちきる可能性を感じました。

そして3位にはビニヤム・ギルマイ(アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ、エリトリア)​​が入るも、フィリプセンにスプリントラインを奪われる形で不満げにラインを通過。

これにアンテルマルシェ・サーカス・ワンティや、トップが降格で繰り上がり勝利がちらつくアスタナ・カザクスタン チームは決着に首をかしげる。ただ入念にチェックされたVARは覆らず、判定そのままでリザルトが残りました。

ただ、このスプリントでの落車が無かったことは幸いでした。ボルドーに5年住んでいたブライアン・コカール(コフィディス、フランス)は、道の狭さやフィニッシュ前の様子は知っていたと語っており、転倒しないことを最優先に考えていたと言います。

-第8ステージ- ピーダスンの快勝とマークの退場

ここまで鳴りを静めていたマッズ・ピーダスン(リドル・トレック、デンマーク)が勝利し、ヤスペル・フィリプセン(アルペシン・ドゥクーニンク、ベルギー)の連勝を止めました。

カヴェンディッシュがリタイア、衝撃の1日はピーダスンが勝利|ツール・ド・フランス

カヴェンディッシュがリタイア、衝撃の1日はピーダスンが勝利|ツール・ド・フランス

2023年07月09日

逃げ切りのプランを持って、ステージ序盤からアタックに加わっていたため、スプリントに切り替えての勝利には驚きでした。リドル・トレックとしては総合上位狙いも雲行きが怪しくなり、なんとしても勝ちたいステージであったはずです。

Photo: Ryo KODAMA

そして大きなニュースはもう一つ。

カヴェンディッシュをシャンゼリゼで見ることができなくなりました。残り64km地点でバイクを降り、車に乗り込むことになります。最多勝利数の更新が期待されましたが、残念ながら見ることはできません。

また、これを受けてアスタナ・カザクスタン チームを率いるアレクサンダー・ヴィノクロフ氏は「2024年のツール・ド・フランスで35回目のステージ優勝を目指して戦うかは本人に委ねる」とレキップ紙で話しており、来季の現役続行を認める意図を示しました。

カヴェンディッシュは今年のジロ・デ・イタリアでは期間中に会見の場を設け、「家族との時間を取りたい」と話していました。どんな結果でも引退する覚悟を持っていたと思いますが……それにしても悔しい幕引きです。

Photo: Ryo KODAMA

-第9ステージ- ピュイ・ド・ドームでも迫ったポガチャル

レイモン・プリドールの故郷であるサン・レオナール・ド・ノブラからプイ・デュ・ドームまでをめぐる182.4kmは「追憶の旅」などと報じられました。

そしてこのステージをプリドールの孫にあたるマチュー・ファンデルプール(アルペシン・ドゥクーニンク)がたどることに意味があります。かつてのプリドールのファンと若いマテューのファンが混在するツール・ド・フランスに歴史の長さを感じました。

Photo: Ryo KODAMA

 

Photo: Ryo KODAMA

この日の争いは逃げ切り集団からマイケル・ウッズ(イスラエル・プレミアテック、カナダ)がツール初勝利。

ウッズが超級山岳を制す。ヴィンゲゴーが首位キープ|ツール・ド・フランス

ウッズが超級山岳を制す。ヴィンゲゴーが首位キープ|ツール・ド・フランス

2023年07月10日

そして総合優勝をめぐる2人の戦いはタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア)に軍配があがり、タイム差を17秒まで縮小。

迫るポガチャルに対してヨナス・ヴィンゲゴー(ユンボ・ヴィスマ、デンマーク)はレース後「戦略的には成功している」と発言。先に数名をフィニッシュさせ、ポガチャルにボーナスタイムを与えなかったこと、そして彼に向いているコースを最小限のタイム差で終えたことには納得しているようです。

-最初の休息日-

ピュイ・ド・ドームの戦いを見届け、第11ステージのスタート地点であるクレルモン=フェランで休息日(7月10日)を過ごすことになりました。

宿泊地では、同日の観測史上最高気温を記録するほどの猛暑。そんな中をまた選手たちが走り出すことに頭が上がりません。再び始まる熱戦に備えてたっぷり休みたいところですが、プロサイクリストは責務を果たすべく準備に追われていました。

そして追われるレースリーダー、ヨナス・ヴィンゲゴー(ユンボ・ヴィスマ、デンマーク)とユンボ・ヴィスマは2週目以降の出方を問われています。ポガチャルの攻撃を防ぎ切れるのかという問いには、「今年もイエロージャージを持ち帰る秘策はあるが、教えることはできないし、結果が示してくれる。」と発言。気丈にコメントを残しますが、猛暑が続くピレネーで暑さに強いポガチャルをどう振り切るのでしょうか。

Photo: Ryo KODAMA

また、移籍の噂も徐々に明るみに出ており、第9ステージ終了時点で個人総合4位につけているカルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアーズ、スペイン)のモビスター チームへの移籍が有力視されています。活躍目覚ましい若手選手が、チャンス拡大の場を求めたのでしょう。

そして移籍の話は自転車だけではありません。フランスの地ではもっぱらこの若いアスリートの動向に注目が集まっています。2023年のフランス最優秀フットボーラーであるキリアン・エムバペ。

パリに残るのか、新天地に向かうのか。

プロアスリートのキャリアは短いため、カルロス・ロドリゲス同様に自己実現と成長を見込める選択をしてほしいです。彼の去就が明らかになった頃にはツールもパリに到着し、総合優勝者も決まっているのでしょう。

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ロードバイクからMTB、Eバイク、レースやツーリング、ヴィンテージまで楽しむ自転車専門メディア。ビギナーからベテランまで納得のサイクルライフをお届けします。

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