肉料理に奥行きを出す柑橘使いのセオリーと3つのレシピ
buono 編集部
- 2020年03月02日
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魚料理に柑橘類が合うのは言わずもがなだが、肉料理にも柑橘類はもちろん合う。一概に柑橘といっても、日本独自の和の要素を感じさせるものから、海外の品種を使ったものまで種類はさまざまだ。どんな柑橘が牛肉料理には合うのか、今回はその方程式を紐解いてみた。早速紹介してみよう。
プロが教える、柑橘使いの方程式!
「肉料理に柑橘類を合わせると、味わいに爽やかさや深みが出て、料理に奥行きが加わります」
そう教えてくれたのは、飲食店がひしめき合う三軒茶屋に店を構えるビストロ『アンビリカル』の小野貴裕氏だ。
「魚料理には、カボスやスダチ、レモン、柚子など酸味があり、香りが強いものが相性が良いです。ポン酢に代表されるように、果汁を搾ったものをつけて食べたり、皮を擦りおろして使うことが多いですね。その一方、肉料理と合わせやすいのは、果肉そのものをいただくオレンジなど甘みのある柑橘類です。鴨にオレンジを合わせたり、鶏にレモンを合わせた料理は、フレンチの王道的な組み合わせ。ソースにはもちろん、ジャムなどにして肉料理に添えることが多いですね」と語ってくれた。小野氏の柑橘の使い方を分類したマトリクスを作成したので見てほしい。
これで一目瞭然!『柑橘活用法マトリクス』
【1】サラダにぴったりな味のバランス
甘夏やはっさく、伊予柑などの柑橘類は、甘みと酸味のバランスが良く、ほんのりと舌に残る苦味が特徴。このほど良い苦味を活かして、サラダのドレッシングや具材にアクセントとして使いたい。
【2】デザートとしてそのままがベスト
香りのインパクトがそこまでなく、甘みが強いデコポン、温州みかん、瀬戸内地方で栽培されるせとかなどはフルーツとしてそのままいただくのが一番美味しい食べ方。冬のビタミン補給に欠かせない果物だ。
【3】強めの酸は魚料理と相性抜群
生の魚料理に合うのは酸味があり、香りの強い柑橘類。ヴィネガーの代わりに柑橘の果汁を搾って、生臭さを消し爽やかな酸味をプラスしてくれる。果肉を使うものより果汁や皮を使用することが多い。
【4】肉料理には甘みのある柑橘を
肉料理と合わせたいのは、芳醇な香りがありながらも、甘みが強い柑橘類。ジャムやソースにして味わいを立体的にのせていく役割を果たしてくれる。果肉そのものを使うことが多いが、香り足しに皮も役立つ。
マトリクスを紐解いてみると、例外はもちろんどの料理にもあるが、図の右上部分は魚料理、右下部分は肉料理と考えるのが基本的な相性だ。また、肉の部位によって柑橘の組み合わせを考えるのも良いだろう。牛バラなどの脂身が多い部位の料理では、こってりとしたソースをかけると重くなってしまうが、さっぱりと飽きずにいただくために酸味のある柑橘を使ったソースにする。また、タンやロースなどの部位なら、さっぱりといただきたい時は酸味のあるもの、コクを出したい時は甘みの強いものを使うなど、肉の味わいと柑橘の味わいを想像しながら料理を構築していくのも楽しい。
では、小野氏がおすすめする柑橘×肉の料理レシピを紹介しよう。
すだちをヴィネガーに見立てて肉にコクと爽やかさを!
『和牛とカキのタルタルすだち風味』
すだちをヴィネガーに見立てた香り高いマヨネーズが肉にコクを与えながらも爽やかに仕上げる。
【材料】2〜3人分
和牛もも肉……120g
生食用カキ(中)……2個
牛乳……適量
すだちマヨネーズ……15g
グラスドビアン(フォンドボーを煮詰め旨味を凝縮したもの)……5g
エシャロット……5g
塩……適量
黒コショウ……適量
すだち皮……適量
マイクロクレソン……適量
すだちマヨネーズ
フランスの伝統的なメニューにコクを足すため、カキを使用。カキとすだちの相性は抜群で、脂の多いモモ肉もさっぱりといただける。「テクニック」すだちは果汁も皮も異なる効果を発揮。すだちの果汁はマヨネーズに入れる。香りが強い皮の部分は直接タルタルに入れて、香りの相乗効果を楽しむ。削ったすだちの皮のほのかな苦みが、タルタルの味わいのアクセントとなる。
【材料】
卵黄……1個
マスタード……15g
サラダ油……150g
すだち果汁……20g
塩……適量
白コショウ……適量
【作り方】
1.肉に塩、コショウをふる。
2.表面に香ばしい焼き色がつくまで、強い火で全面をしっかり焼く。
3.ペーパーの上で余分な油を切ってから、冷蔵庫で冷ます。
4.鍋に水と牛乳を入れて沸かし、沸いたら火を止めて牡蠣を30秒入れ、氷水にとり、粗熱が取れたら水気をきる。
5.肉、牡蠣を粗めのサイコロ状にカットする。
6.すだちマヨネーズ、グラスドビアン、エシャロット、塩、黒コショウで和え、すだちの皮を削り香りをプラス。皿に盛り付け、上にマイクロクレソンを飾る。
柑橘の二段使いで甘みと酸味を重ねていく!
『牛バラ肉の赤ワイン煮込みオレンジの香り』
スパイスとも相性が抜群なオレンジとレモンを赤ワインとともに煮込み、仕上げの香りづけとしてオレンジの皮を散らした一皿。
【材料】2〜3人分
牛バラ肉……1㎏
ニンニク……5個
玉ねぎ…1/2個
ニンジン……1/2本
リーキ……1/4本
トマトペースト……10g
赤ワイン……400ml
フォンドボー……150ml
水……200ml
オレンジ皮……1個分
オレンジ果汁……1個分
レモン皮……1個分
クミン……1g
コリアンダーシード……3粒
黒胡椒……5粒
クローブ……2粒
ローリエ……2枚
塩……適量
黒コショウ……適量
ソース用赤ワイン……200ml
【作り方】
1.牛バラ肉を150g~200gくらいの塊にカットし塩、コショウをしっかりと振り、強火のフライパンで全ての面を焦げ目がつく直前くらいまで焼き、ザルに引き上げ余分な油をきっておく。
2.鍋にニンニクを入れ香りが出てきたら、玉ねぎ、ニンジン、リーキをしっかりとソテーする。
3.トマトペーストを入れ野菜にしっかりと絡めながらソテーし、トマトの酸味をとばす。
4.そこに牛バラ肉、赤ワイン、フォンドボー、水、オレンジの皮・果汁、レモンの皮、スパイスを入れて肉がやわらかくなるまで4~5時間煮込む。
5.肉がやわらかくなったら一旦引き上げ、煮汁を漉す。
6.鍋で赤ワインをしっかりと煮詰め、そこに煮汁を入れ、少し煮詰めてソースを作る。
7.肉をソースの中で温め、皿に少し緩めのマッシュポテト、肉を置きソースをかけて、オレンジの皮を少し削り、ごぼうの素揚げ(分量外)を上に飾る。
【ポイント1】オレンジの華やかな甘みとレモンの酸味のダブル使い
赤ワインにオレンジやレモンなどの柑橘類を入れたサングリアからヒントを得た一品。脂の多いバラ肉に加熱したオレンジの甘みを加えることで、重くなりがちな肉料理も爽やかに仕上がる。
【ポイント2】最後の香りづけも忘れずに!
牛バラ肉は柑橘でマリネしてしまうと、柑橘のえぐみが出てしまうので、煮込む直前に入れたい。最後の香り出しで、器に盛った後、オレンジを削った皮をかけることで香りが増す。
自家製の柚子レモン塩でフレンチ仕立てに
『牛タンのロースト 柚子レモン塩を添えて』
焼肉店の定番であるネギ塩牛タンを分解して再構築した一品。柚子レモン塩がアクセントとなり、ワインも進む味わいだ。
【材料】2〜3人分
牛タン……180g
塩・コショウ……適量
焼きねぎピューレ……適量
柚子レモン塩……適量
ごま油パウダー……適量
焼きねぎピューレ
【材料】
長ネギ……3 本
バター……15g
生クリーム……50cc
【作り方】
1.長ネギを5cmくらいにカットし焼き網で表面に焦げ目がつくくらいまで焼く。
2.フライパンにバターを引き、焼いたネギをとろとろになるくらまでゆっくりソテーしていく。
3.生クリームを入れ、沸いたらミキサーにかける。
柚子レモン塩
【材料】
柚子皮……2個分
レモン皮……2個分
粗塩……15g
【作り方】
1.柚子、レモンの皮をすりおろし、さらに広げ水分がとぶまで電子レンジにかける。
2.粗塩と合わせる。
ごま油パウダー
【材料】
ごま油……10g
マルトセック……6〜7g
【作り方】
1.ボールにごま油を入れ、そこに少しずつマルトセックを入れよく混ぜ合わせる。
【作り方】
1.牛タンに塩、コショウをしてフライパンで全面に薄く焼き色をつける。
2.200°Cのオーブンに5分入れ、暖かいところで5分休ませる。
3.2の作業を2セット繰り返して、牛タンに火を入れる。
4.皿に温めた焼きねぎピューレを引き、カットした牛タン、柚子レモン塩を置き、ごま油パウダーをかける。
【ポイント1】定番の組み合わせに苦みを追加する
「焼いた牛タンにはレモン!」というほど定番の組み合わせだが、柚子を入れることで、ほのかな苦みがプラスされワインと合う大人の味わいに変身する。
【ポイント2】長期保存が可能な柑橘調味料
柚子の皮とレモンの皮を削ってからしっかりと乾燥させて水分を抜き、塩を混ぜた柚子レモン塩は1カ月ほどもつので、常備しておきたい。
爽やかさを演出してくれる柑橘を使った肉料理は、パーティーのメイン料理としても最適。是非一度、チャレンジしてみてほしい。
教えてくれた人
小野貴裕
代々木上原のフレンチ『gris』や恵比寿の『ビストロ シロ』でスーシェフの経験を積み独立。2016年に高校時代の同級生と三軒茶屋に『アンビリカル』をオープン。
アンビリカル
住所/東京都世田谷区三軒茶屋2-15-3
電話番号/03-3413-3478
営業時間/18:00~24:00(L.O.23:00)、金・土・祝前日18:00〜26:00(L.O.25:00)
定休日/日曜 ※月曜、祝日の場合は日曜営業、翌月曜休み
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PROFILE
buono 編集部
使う道具や食材にこだわり、一歩進んだ料理で誰かをよろこばせたい。そんな料理ギークな男性に向けた、斬新な視点で食の楽しさを提案するフードエンターテイメントマガジン。
使う道具や食材にこだわり、一歩進んだ料理で誰かをよろこばせたい。そんな料理ギークな男性に向けた、斬新な視点で食の楽しさを提案するフードエンターテイメントマガジン。