【作ってみよう】自宅で日本最高の生パスタを打つ方法 後編/パスタを味わう
buono 編集部
- 2020年08月27日
▼『Base』河村耕作さんによるボローニャ式生パスタの生地づくり、成形編はこちら。
パスタを味わうために存在する究極のシンプル料理
Baseのドアを開けるとガラス張りのパスタ工房を横目に見ながら、脇を抜けた奥にあるのは、わずか7つの客席と小さなキッチン。友人宅のダイニングを訪れたような、リラックス感に包まれている。
パスタ打ちの仕事の傍ら、河村氏が打ったパスタを自ら料理して提供しているこの店には、料理のメニューはごく限られている。中でも「Tagliatelle in bianco(白のタリアテッレ)」は究極にシンプルながら五感に訴えかける何かをもっている。使用するパスタは、ボローニャ仕込みの河村氏にとって、スペシャリテと呼ぶべき「タリアテッレ」。それをオイルとチーズ、ブラックペッパーという、「伝統のパスタを食べてみろ」と言わんばかりのド直球な調理法で食べさせる。
「この仕事について以来、僕は師匠から言われて、ミートソースをスパゲッティで食べたことは一度もありません。それほど、タリアテッレはボローニャのパスタ打ちにとって特別なもの。ボローニャでは5〜7mm幅程度が基本ですが、10mmでも15mmでも、これがうちのタリアテッレだと言えばそれもアリなところがイタリア人らしさ。また、乾燥パスタのタリアテッレは、とても割れやすいですが、あれは機械製のため。ちゃんとした職人が作ったものだと、お湯に入れるただけで綺麗にほぐれるものもあるんです」
カウンターに座り、「パスタひとつに赤ワインください」と頼むと、コップになみなみと注がれた赤ワインが静かに置かれる。ボウルにオリーブオイルを入れた鍋の茹で汁を注ぐと、茶せんを取り出し、まるでお茶を点てているかの風情で乳化を始める。ソースができたら、鍋にパスタを投入してわずか30秒。ザルにあげられたパスタはつややかな光沢を放つ。出てきた皿は極めてシンプルで美しく、まるで禅の世界のような佇まいだ。フォークに巻きつけるだけでわかるエアリー感に驚きつつ口に運ぶと、ふんわりと軽く歯触りの良さに衝撃を受ける。
「料理と言うほど凝ったことはしないので、オイルやチーズは美味しいものを使っています。ただ、僕は料理人ではなくあくまでも材料屋なので、うちの店ではパスタの食感を一番に伝えたい。だから、生地の粉や卵は美味しさで選ばない。いま日本で手に入る粉で、最も理想的な食感の生地に仕上げるための、作業効率と利便性で選びます」と河村氏は言う。
こんなタリアテッレを女性に食べさせることができたら、「こんなの初めて♡」は確実。手打ちの世界はやはり奥深い。
粉へのこだわり
パスタといえば「デュラムセモリナ粉」と思いがちだが、これは乾燥パスタで使用されているため。ボローニャのある北部では、「00」と呼ばれる軟質小麦の中心部分を細かく挽いた小麦粉が、手打ちパスタに用いられる。逆に南部では生パスタでも、細かく挽いたリマチナータのセモリナ粉を使用することが多いのだとか。これらに比べ、日本の小麦粉は質感が重く、河村氏いわく「打ち粉も広がりにくく、生地としても作業しにくい」という。河村氏が作業効率の良さから、現在使っているのは、Molino Spadoni社製の『Farina di Grano Tenero Tipo “00”』。甘みや香りも様々あるので、自分好みを見つけたい。
Tagliatelle in biancoのレシピを紹介
【材料(1人分)】
タリアテッレ…75g
湯…4L
塩…200g
EXVオリーブ油…30ml
A
パルミジャーノ・レッジャーノ(24ヵ月熟成)…適量
ブラックペッパー…適量
【作り方】
1 鍋で沸かしたお湯に対し、0.5%の塩を入れてかき混ぜる。すまし汁程度の塩分を目安にする。
2 パスタが入る程度の大きめのボウルに、EXVオリーブ油と①の茹で汁を15mlずつ入れる。
3 2を茶せんでよく混ぜて乳化させる。茶せんがない場合は、泡だて器でも問題なし。
4 手打ちのタリアテッレを①の鍋に入れ、30秒程度でザルにあげて水気をきる。
5 3のボウルに湯切りしたタリアテッレをに入れて、まんべんなく丁寧に絡める。
6 器に盛り、パスタの上からAとEXVオリーブ油15mlを回しかけて完成。
教えてくれたのはこの人!
河村耕作さん
ボローニャのパスタ学校を卒業後、レストランでの製麺担当や母校で講師を務めた後、2015年に『Base』を開業。『PRONTO』のパスタメニューの開発を手掛けるなど、手打ちパスタの伝道師として幅広く活躍。
Base
住所/東京都文京区小石川5-34-10 長島ビル1F
TEL/03-5844-6992
http://www.pasta-base.com/
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PROFILE
buono 編集部
使う道具や食材にこだわり、一歩進んだ料理で誰かをよろこばせたい。そんな料理ギークな男性に向けた、斬新な視点で食の楽しさを提案するフードエンターテイメントマガジン。
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