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百瀬あゆち氏に聞く、日本酒事情 in 香港

東京から2700km。世界でも随一の食通が集まる都市として知られている香港で、ここ数年、日本酒熱が高まっている。日本酒の輸出量は、アメリカに次いで世界2位。そんな香港の日本酒事情を、香港における日本酒のオピニオンリーダー的存在である百瀬あゆち氏を案内役に現地レポートする。

酒サムライ、唎酒師 百瀬あゆち
NYの和食レストラン『酒蔵』で日本酒ソムリエを務め、2010年より香港に移住。翌年、セントラル地区に日本酒バー『地酒処 吟』を構え、日本酒の啓蒙と情報発信を行う。

香港で日本酒が選ばれるには理由がある

百瀬氏曰く、ここ9年ほどで香港の日本酒シーンは大きく様変わりしたという。数年前までは「獺祭」や「久保田」「十四代」など一部の超有名銘柄しか出回っていなかったが、日本食が確固たる地位を得てからは、地酒専門のバーや居酒屋も増え、中華やイタリアンといった他ジャンルの店でも日本酒を提供するなど、香港人が多様な日本酒に触れる機会は増すばかり。

百瀬氏は蔵元のエプロンをリメイクしたバッグと財布を愛用。「このスタイルで市場で買い物していると、『Sake Lady!』と店の人から声をかけられるんです(笑)」

「香港で日本酒は大きなビジネスになる」ことを決定づけたのが、酒税の完全撤廃だ。2008年、香港ではアルコール度数パーセント未満の酒類に対し酒税がかからない法律が制定され、日本酒の価格は下がり、美味しい高品質な酒も香港に入ってくるようになった。

「それまでは日本酒専門の代理店は6〜7社程度。酒税がゼロ、酒類の輸入ライセンス取得不要になってからは、新規会社が生まれたり、既存のワイン会社が日本酒部門を新スタートさせたりと、現在日本酒を扱う代 理店は30社くらいに急増し、競争も激しくなっています」

NYでも同じく日本酒ブームだが、米食文化の香港にとって、料理と日本酒のペアリングはより受け入れやすい。

「香港ではタイムラグなく、旬の酒や料理で日本の季節を感じることができます。四季がある日本酒の楽しみ方を、さらに浸透させていきたいですね」

『吟』では、季節によっても変わるが常時100種以上の酒が揃う。
「渡舟」は百瀬氏にとって不動のNO.1。一度は衰退した酒米「渡船」を復活させた杜氏・山内氏との出会いが、日本酒への道を決意させた。

香港人は、香りに敏感なんです

中国茶の本場としても知られる香港。慣れ親しんだ中国茶と同じように、日本酒も味わいだけではなく、香りも存分に楽しむ傾向にある。数ある中でも、甘くフレッシュ感のある吟醸香が人気。逆に苦手という人が多いのは、酸を感じるしっかりした香り。

左の「風の森 純米大吟醸 しぼり華」は、生ならではのフレッシュ感を追求。右の「七田 純米大吟醸 無濾過」は、ふくよかに清楚な吟醸香が立つ。

中華料理と日本酒の相性は?

アジア圏の多くは、米が主食。よってブドウから造られたワインよりも、同じ米を原料とした日本酒の方が料理と合うのは納得の理屈。料理をどんな風に食べたいか、さらに味をどう変化させるかという組み立て方が、中華と日本酒のペアリングでは重要だとか。

上海蟹×古酒

蟹の卵や味噌がもつ濃厚な味わいには、熟成した辛口古酒を。冷酒だと卵の油が口中に残るので、常温で合わせる。

麻婆豆腐×本醸造酒/にごり酒

辛いもの好きは本醸造酒を。酒が甘く感じて高級感が出る。牛乳やヨーグルトと同様に、にごり酒は辛さをマイルドにさせる。

北京ダック×純米酒/本醸造酒

カリカリの皮、ジューシーな肉、その間に挟まれた脂身が醍醐味。純米酒を燗に付けると鴨の旨味が引き立つ。苦手な人は本醸造の冷酒で脂を洗い流すイメージ。

日本酒の旬を楽しむ人が増えている

空輸技術の向上によって、季節の生酒も香港に居ながらオンタイムで楽しめる時代に。『地酒屋 吟』では、季節の日本酒で乾杯する唎酒会を定期的に開催。通年暑く四季がない香港でも、日本酒と料理を通じ、日本の四季を味わうことができる。

この日の季節酒 「ひやおろし」は香港でも大人気。「米の種類や地域ごとの飲み比べができて楽しかった」と参加者たち。
酒のラベルを一面に貼った壁は圧巻。

 

SAKE BAR GINN -地酒処 吟-
住所/Unit 4C Ho Lee Commercial Building, 38-44 D’Aguilar Street, Lan Kwai Fong, Central, Hong Kong
TEL/+852-2536-4355
営業/17:30〜翌2:00(キッチンクローズ24:00) 木・金・土曜〜翌 3:00(キッチンクローズ翌1:00)
休み/日曜
http://www.sakebarginn.com/

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buono 編集部

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使う道具や食材にこだわり、一歩進んだ料理で誰かをよろこばせたい。そんな料理ギークな男性に向けた、斬新な視点で食の楽しさを提案するフードエンターテイメントマガジン。

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