本気で鶏鍋を極める! 神田「鳥つね自然洞」に専門店のワザを教わった
buono 編集部
- 2021年01月29日
数ある鍋料理の中でも、世代を問わず人気の高い鶏鍋。ジューシーな鶏肉の旨味が溶け込んだスープは身も心も温まる。鶏の名店を訪れて厨房を覗いてみると、そこには試してみたくなる技やコツが数多くあった。この冬、本気で鶏鍋を極めてみるのはいかがだろう。
輝くスープが唯一無二の地鶏鍋。
大正創業100年。『鳥つね 自然洞』を訪れると、店の暖簾をくぐりやってくる配送業者の数に驚かされる。段ボールの中身は、日本中から送り届けられるあらゆる食材たちである。店を任された約35年前からずっと、店主の佐々木久哉氏は素材選びにこだわり続けてきた。その探究心は未だに途切れることなく、現場へと足を運び続けているという。信頼できる生産者との交流が、鶏鍋の美味しさにつながっていると言えよう。
まずはなんといっても鶏肉。日齢160〜180日のメスは、卵を産み出す月齢で脂がのっている。ちょうどその頃合いの比内地鶏と名古屋コーチンのメスを使用。比内地鶏は、活発な運動量により野性味溢れる味。一方、コーチンは穏やかで臆病な性格ゆえ、繊細でやわらか。どちらも甲乙つけがたい、魅惑の味わいである。鶏は内臓を除いた瞬間から、あっという間に鮮度が落ちていく。カットした肉などもっての他だという。鳥つね自然洞には、毛をむしって血抜きしただけの状態で届けられる。〆た翌日に冷蔵状態で受け取れる “クール便” が登場した32年前より、現在の2種を採用している。「新鮮なままの美味しい鶏を直送してくれるところを探し、行き着いた軒とやり取りしている」という。
鶏だけではない。野菜ひとつとっても、産地との長年の絆、そして佐々木氏の熱意が伝わる。鶏鍋に欠かせないネギもそのひとつ。ネギの産地、埼玉県越谷市で栽培される「元吉葱」は、かつてネギ専門の種苗業者だった生産者が親子三代にわたり育成している。巻きが強く、火を通すとやわらかな食感なのが特徴だ。店では、贅沢にも外側を三枚以上剥がし、よりやわらかな内側のみを鶏鍋に使用する。他にも、修善寺産原木栽培の椎茸、淡路島の玉ねぎ、喜多方の白菜など、厳選された野菜を使用。あくまでも鶏がメインの「スープ炊き」ではあるが、それを支える素材たちはどれも主役級である。
「スープ炊き」の要であるスープは、届いたばかりの鶏を捌くところから始まる。ガラや頭、皮など調理に使わない部位を、ゆっくりじっくりと 時間かけて煮込んでいく。アクを丁寧に取り、つきっきりで “世話” をしていくと、表面の油がキラキラと光り、透明な黄金のスープが出来上がる。しかし、土鍋で煮込んでいくうちに煮詰まっていくため、 客席に出すスープは水で薄められたもの。それに具材から出るだしが加わって、自らの手で鶏鍋を完成に導いていく。最高の素材が集まった、至高の鶏鍋がここにある。
「スープ炊き」は食べる程に進化する!
一、まずは鶏そのものを味わってみる
二種類の鶏は、全く異なる味わい。まずはそのままシンプルに。スープはまだ薄めなので、鶏の味をしっかりと感じられる。
二、たたきと野菜から旨味がたっぷり
たたき(つみれ)は、主人自ら包丁で叩いてつくる。野菜の甘みも加わり、旨味も倍増。
三、旨味爆発のスープ
素材すべての旨味が集まった。ついついスープを飲みたくなるが、後半戦に備えてグッと我慢。
四、こだわりの卵を回しかける
親子丼の名店としても名高い鳥つね自然洞。もちろんこだわりの卵を使用している。
五、スープを受け止める雑炊
力強いスープを受け止める米は、福島県喜多方市の農家から取り寄せる無農薬のコシヒカリ。
教えてくれた人
店主 佐々木久哉
同店を切り盛りして約35年。 繊細な手仕事とこだわりが、現在の人気を支える。
鳥つね自然洞(とりつねしぜんどう)
住所/東京都千代田区外神田5丁目5-2
TEL/03-5818-3566
営業/11:30〜13:30(L.O.)、17:30〜22:00(L.O.21:00)
休み/日曜・祝日
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PROFILE
buono 編集部
使う道具や食材にこだわり、一歩進んだ料理で誰かをよろこばせたい。そんな料理ギークな男性に向けた、斬新な視点で食の楽しさを提案するフードエンターテイメントマガジン。
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