3大ちゃんぽん、全部知ってる? 名店の味の秘密を検証
buono 編集部
- 2023年03月03日
定番ちゃんぽんは、子どもからお年寄りにまで愛されてきた庶民の味。シンプルな作り方ゆえに素材が大切だ。日本が誇る郷土の味、長崎・山陰・彦根、3つのちゃんぽんの美味しさの秘密を、それぞれ伝統の味を守り受け継ぐ名店に教えてもらった。
長崎ちゃんぽん by 中華料理 四海樓
『四海樓』は明治32年、初代店主の陳平順氏がはじめた中華料理店。中国人留学生の食事を改善したいと生まれたのが「ちゃんぽん」だ。名前の由来にはいくつか説があるが、中国の福建語で「吃飯(シャポン又はセッポンと発音で、ご飯を食べるという意味)」から来ているという。長崎近海で捕れる海産物と野菜をたっぷり使い、鶏ガラスープと豚骨スープを合わせたコクのあるスープと太麺は、瞬く間に日本人にも人気が広がっていった。皿うどんや豚骨ラーメンのルーツでもある、この長崎のちゃんぽん。118年前のレシピをそのままに味わえる幸せを噛みしめたい。
海山の幸を彩りよく食べやすい細切りで
具材は、豚肉、小海老、イカ、キクラゲ、キャベツ、もやし、ネギ、蒲鉾、錦糸卵。麺との絡みをよくするため、すべて細切り、短冊切りに長さと幅を揃えておく。錦糸卵は仕上げにトッピングする。キャベツともやしは手のひらいっぱいにたっぷりと。
唐灰汁入りのつるりとしたやわらか麺
幅5mmほどの極太麺はかん水ではなく、唐灰汁を使ったもの。当初の「支那饂飩」というメニュー名を彷彿させる麺だ。つるりとしてやわらかく、程良いモッチリ感が特徴。細切りにした具材とよく絡み合い、食べごたえも十分。
初めて豚骨を使った白濁スープ
スープは鶏ガラスープをベースに、豚骨スープを加えたもの。臭みはなくまろやかなコクがある。鶏ガラをよく煮込むことで白濁したスープになる。豚骨をスープに使用したのも四海樓が最初といわれ、九州地方に豚骨スープが広まったのは長崎がルーツと言われる。
中華鍋ひとつで炒めから煮込みまでを仕上げる
調理工程はおよそ2分間のスピード勝負。レシピは118年前の創業当時と同じだ。
1 中華鍋を熱しラードを入れる。中火でキャベツ、もやし以外をサッと炒める。火を通しきらない程度でキャベツ、もやしを入れる。
2 スープ500cc程度を入れる。薄口醤油(長崎県産)大さじ1、色付けに濃口醤油を入れスープの味と色を出す。
3 麺を入れる(生麺だが製造過程で一度茹でてあるもの)。材料を煮込み、麺がほぐれ少しず つ浮いてきたら完成。
皿うどんはちゃんぽんの派生形
当時、日持ちをよくさせるために麺を焼いたのが「皿うどん(972円)」。四海樓が発祥で、ウスターソースで味の変化を楽しむ。
教えてくれた店
中華料理 四海樓(ちゅうかりょうり しかいろう)
住所/長崎県長崎市松が枝町4-5
TEL/095-822-1296
営業/11:30〜15:00、17:00〜21:00(L.O.20:00)
休み/不定休
代表取締役社長 陳 優継
曾祖父がはじめた四海樓を受け継ぐ四代目。「明治から愛されてきた味を変えることなく維持しています」
山陰ちゃんぽん by 大連
野菜は本場長崎と同じように細切り。スープは基本、塩味。しかし、とろりとした見た目はあの長崎のちゃんぽんではない。麺も細打ちの縮れ麺。鳥取、島根に広く存在する「山陰ちゃんぽん」はあんかけだ。店主の徳中氏の話では初代の父が店を始めた30年前には、すでに「ちゃんぽんと言えばあんかけ」だったという。スープも白濁したものではなく、シンプル塩味や醤油味。『大連』ではまかないから始まった「みそちゃんぽん」や「カレーちゃんぽん」も人気を博している。なぜあんかけになったのかという謎は、「どうもルーツは関西らしい」という説はあるものの、はっきりしない。いつまでも熱々で、ゆっくりと味わえるのは、山陰のゆったりとした人間性にぴったりなのかもしれない。
たっぷり野菜がお見事!
各100gずつあるというたっぷりのキャベツ、もやしに、豚肉、海老、キクラゲ、ニラ、玉ネギ、筍水煮、人参。いずれも細切りに揃える。あんかけのとろみや細麺との絡みも良い。麺よりも圧倒的に野菜と具材が多くヘルシーなちゃんぽんになる。
細めの縮れ麺が餡と具材によく絡む
太さ1.5mmほどの細縮れ麺は生麺で130g。細切り具材やあんかけによく絡む。やや少なめに調整されており、たっぷりの具材でもあっという間に完食してしまうほど。ラーメン鉢の底に沈んでいるので、最初に具材とあんかけとよく混ぜ合わせよう。
透明な鶏ガラ・牛骨に調味料で味の変化を
鶏ガラと牛骨で取った透明なスープがベース。
「ちゃんぽん」は塩味にするが、「みそちゃんぽん」はラー油小さじ1、豆板醤小さじ1、味噌大さじ1、自家製醤油と胡麻油を適量加えて味を調える。ピリ辛でコクがある。
たっぷりの野菜を煮込んで片栗粉と溶き卵でとろみを
1 中華鍋を中火で熱し豚肉を入れ、すぐにラー油と豆板醤を入れ炒める。豚肉の色が変わったら、他の具材を全て入れる。
2 軽く火が通ったらスープを注ぎ、味噌と自家製醤油を入れて煮込みながら味を調える。野菜がしんなりしたら片栗粉でとろみを付ける。最後に溶き卵をかけ回し風味付けの胡麻油を入れる。
3 この間に麺を茹でて水気を切り鉢に盛る。鉢にスープを注ぎ最後にネギを添える。最初はあんかけのとろみが強いが次第に野菜の水分が出て飲みやすくなる。
大山豚を入れたガッツリ系
人気の「餃子(7個350円)」は大山豚をブレンドした国産豚肉とニンニクがたっぷり。薄めの皮でお酒に合うことこの上なし。
教えてくれた店
大連(だいれん)
住所/鳥取県米子市末広町149
TEL/0859-22-4895
営業/11:00〜14:00、18:00〜21:00(L.O.20:30)
休み/日曜
店主 徳中太慈
米子駅そばにある人気店の二代目店主。「このあたりでは、子どもの頃からちゃんぽんと言えばあんかけです」
彦根ちゃんぽん by 麺類 をかべ本店
彦根ちゃんぽんは鰹節と昆布で取る出汁がベースの和風ちゃんぽんだ。初代が店を開いたのは58年前の昭和38年。初代店主は長崎へ修行に行き、長崎ちゃんぽんを習得したのち彦根に店を開いた。しかしまったくの閑古鳥。白濁した濃厚なスープは、関西の味に慣れ親しんでいた彦根の人達には受け入れられず、店主は試行錯誤を重ねて、黄金色の和風出汁に辿り着いた。「細切りの具材をスープで煮込むところはちゃんぽんのやり方が残っていますが、スープや麺は中華そばと同じなんですね。関西と九州がそれぞれの良さを出し合っています」と店主の小川氏。彦根市民は、子どもの頃から家族揃って、賑やかな商店街にあった「をかべ」にちゃんぽんを食べに行くことが楽しみだったという。
ネギ、ニラは使わない、優しい味わい
キャベツ150g、もやし、豚肉、人参、水菜、キクラゲは適量で。キャベツは食感を楽しむため大きめのザク切りに、ほかの具材は細めに切る。ネギの代わりに水菜を最後にトッピングする。ネギ、ニラを入れないのであっさりとして優しい味わい。
彦根だけの昆布と鰹節ベースの和風
本来の鶏ガラ・豚骨の白濁スープを捨て、関西人が好む鰹節と昆布で取った出汁がベースのスープ。塩、みりん、砂糖、ラード少々に旨味のある隠し味を加えた黄金色のスープに仕上げる。具材を煮込むことで野菜の甘さが加わり、さらにまろやかになる。
和風スープに合う細打ちのストレート麺
直径1.5mmほどの細打ちストレートの生麺。使用するのは120g。長崎のちゃんぽんとは異なり、煮込まずに湯がいて、鉢に麺を入れた上に具材とスープを注ぐ。やわらかくなりすぎないように茹で、スープを注ぐことでつるりとした喉越しになる。
出汁ベースのスープで具材の甘みを出す
1 スープ600ccを沸かす。沸いてきたらまず肉を入れ火が通ったら、あらかじめ切っておいた野菜のうちキクラゲ、水菜以外の材料をすべて入れ煮込む。現在店では行っていないが、いきなり煮込まず具材を炒めて香ばしさを出してから煮込んでも良い。
2 同時に麺を茹でて、鉢に盛っておく。スープの野菜がしんなりとしてきたら、麺の上から注ぐ。
3 水菜とキクラゲをトッピングし完成。途中で酢を少しかけ回し、味を変えて楽しむのもおすすめ。
同じスープと麺で違う味わいを
「中華そば(680円)」のスープ、麺は「チャンポン」と同じ。ただ具材を煮込まないためスープはよりすっきりと出汁の風味を感じられる。
教えてくれた店
麺類 をかべ本店(めんるい をかべ ほんてん)
住所/滋賀県彦根市銀座町4-27
TEL/0749-22-8604
営業/11:00〜15:00、17:00〜20:00
休み/木曜
店主 小川邦夫
四代目店主。『をかべ』は後継者がなく店主は歴代、他店から来て「彦根ちゃんぽん」の味を引き継いでいる。
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PROFILE
buono 編集部
使う道具や食材にこだわり、一歩進んだ料理で誰かをよろこばせたい。そんな料理ギークな男性に向けた、斬新な視点で食の楽しさを提案するフードエンターテイメントマガジン。
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