BRAND

  • FUNQ
  • ランドネ
  • PEAKS
  • フィールドライフ
  • SALT WORLD
  • EVEN
  • Bicycle Club
  • RUNNING style
  • FUNQ NALU
  • BLADES(ブレード)
  • flick!
  • じゆけんTV
  • buono
  • eBikeLife
  • HATSUDO
  • Kyoto in Tokyo

STORE

  • FUNQTEN ファンクテン

MEMBER

  • EVEN BOX
  • PEAKS BOX
  • Mt.ランドネ
  • Bicycle Club BOX
ボンディングオクタ

「ボンディングオクタプロジェクト」誕生秘話~帝人フロンティアの最先端テクノロジーが、ティートンブロスとの共同開発でさらにアップデート!

適度な保温力を備えつつ、通気性にも優れるので、激しく動いてもオーバーヒートしない——。

そんな特性が秋冬のアウトドアアクティビティにマッチし、人気沸騰中の「Octa」
その新バージョンをTeton Bros.と共同開発中との情報を得て、ホーボージュンが製造工場に潜入取材を敢行した!

文◉ホーボージュン
写真◉熊原美惠(スタジオ写真)、小関信平(人物・工場写真)
取材協力◉帝人フロンティア、第一編物、山口ニット

帝人フロンティア × ティートンブロスが共同開発。
「ボンディングオクタプロジェクト」

この数年、アウトドアアパレルを席巻している素材がある。それが「Octaオクタ

帝人フロンティアが開発した高機能素材で、適度な保温力と高い通気性を併せ持っている。読者のなかにはすでにそのパフォーマンスをフィールドで体感している人もいることだろう。

そんななか、オクタのさらなる可能性を推し進めるプロジェクトが進行している。それが帝人フロンティアとティートンブロスがタッグを組んで行なう「ボンディングオクタプロジェクト」だ。
これは表地とオクタを直接接着した一枚生地。今回は富山県の関係工場を訪ね、この新プロジェクトを取材してきたので、その詳細を報告したい。

帝人フロンティア オクタ
▲今回は帝人フロンティアの西村茉由さん(奥)のご協力のもと、オクタの製造現場を子細に取材させていただいた

話題の新素材オクタとは、いったいなんなのか?

さて、本題に入る前にまずはオクタそのものについて解説しておこう。

オクタとはニット生地や構造体の名称だが、もともとはポリエステル繊維(糸)そのものに付けられた名称だ。「より軽いポリエステルの開発」をテーマに2008年から開発が始まり、’10年に完成・ローンチされた、わりと歴史のある繊維なのだ。

商標の「Octa」とは古代ギリシャ語で「8」を表す。その名のとおり1本1本の繊維に8本のフィンが生えていて、さらに繊維の内部が中空になっている。顕微鏡写真を見てもらえばわかるようにかなり独特の形状で、次のような特性がある。

オクタ Octa 素材
▲これがオクタの原糸だ。12本のフィラメントが緩やかに絡まって一本の糸を形成する。フィラメントの断面はわずか28㎛で、複雑な形状をしている

ひとつ目は中空構造のために同じ太さのポリエステル繊維に比べ、重量が2分の1程度しかないことだ。これによって非常に軽く、アクティブスポーツ向きの生地が作れる。

ふたつ目は繊維内部に加えて、8本フィンの隙間にもたくさんの空気をため込むことだ。大量のデッドエアを蓄えるので、断熱効果と保温効果が高い。

三つ目は異形断面の繊維が複雑に絡まることによってその空隙(スキマ)で毛細管現象が起こり、汗の吸い上げがよいことだ。そのため吸湿速乾性に優れたウエアが作れる。

このオクタの製造方法だが、まずはドロドロに溶かしたポリエステルポリマーに圧力をかけ、金属製ノズル(口金)から大気中に押し出す。このノズルには12の微細な異形断面孔が空いていて、そこから12本のフィラメント(単糸)が同時に押し出される(例えていえばシャワーヘッドから12本の水流が吹き出すようなイメージ)。
これを冷却固定しながら引っぱり、より細く延伸しつつ、12本を絡めて1本の糸に束ねていくのである。

つまり一本の原糸となる段階ですでに内部に複雑な空隙を有していて、これが優れた保温性能とウィック性能を発揮するのだ。
なおそれぞれのフィラメントの直径はわずか28ミクロンしかない。これは髪の毛の1/3以下という極細サイズだ。その一本一本が中空で、かつ周囲に8本フィンをもつというのだから、このテクノロジーの微細さには舌を巻く。

オクタ 工場
▲左)編み工程に入る前の準備作業。巨大なジュラルミン製ビーム(糸巻き)に使用する原糸を巻き取っていく。このビームには一列に430本ものオクタ糸が巻かれていた。右)編み機に糸の端末をセットする。オクタ糸は透明で微細なのでほとんど見えない。緻密な職人技を必要とする作業だ
オクタ 素材
▲左)トリコット編み機。高速で細かなニットが編める。右)オクタcpcpのトリコット生地。このあとに起毛機に掛けて片面を起毛させる
第一編物 工場
▲左)ダブルラッセル編み機。速度は遅いが複雑で立体的な柄を編み立てることができる。右)1インチあたり22本の編み針がビッシリ列んでいる。上の針が左右に首を振りながら厚みのある立体構造を編むのだ
ダブルラッセル 生地
▲左)編み上がったオクタのダブルラッセル生地。生機の状態で厚みは30mmほど。右)長さ10mもある特殊なベルトナイフを使って、幅4.5m、長さ100mもの編み物を半分にスライスする

それを劇的に変えたのが、2014年の「オクタcpcp」という製品だった。

これはオクタ糸を使ったトリコット生地。トリコットというのはタテ編みの一種なのだが、その一部にオクタ糸を使う。そして編み上がったあとにこれを起毛機にかけ、オクタ糸の部分だけを掻き出して起毛させるのだ。すると片面はフラットなメッシュなのに、反面にはオクタ糸がフワフワと起毛したユニークな生地ができあがる。

この生地は風を通すにもかかわらず、起毛部に空気を溜め込むため「適度な保温力をもちながらも、激しく動いてもオーバーヒートしない」という独特の特長をもっていた。そしてちょうどこのころからアウトドア界に浸透してきたアクティブインサレーション(動的保温着)というコンセプトにうまく合致したため、海外トップブランドに採用されるようになったのである。

「オクタcpcpはニット製品なので中綿の吹き出しや偏りがなく、厚みや柄の設計自由度が高いというのも利点でした。起毛感が密だったり、逆に通気性を重視してかなり疎に編んだものがあったり、数え切れないほどの品番を作ってきました」と担当者は言う。

山口ニット 諸江孝之 林芳則
▲オクタ製品のニッティングを担当する山口ニットの諸江孝之さん(右)と林芳則さん(左)。この富山工場ではトリコット機68基とダブルラッセル機12基、センターカット機1基が稼働中だ

ダブルラッセルで作る「サーモフライ」の登場。
「動的保温」のコンセプトに合致し、オクタの人気は爆発的に高まった

第一編物 庄川工場
▲左)こちらは第一編物・庄川工場内のようす。これは高圧染色機で、高圧高温下でオクタ生地を染めていく。長さ800mの生機を一度に染めることができる。右)染め上げた生地に起毛されやすいように前処理を行ない巨大乾燥機を使って乾かす

その後オクタはさらに大きな進化を遂げた。それが2020年にデビューした「サーモフライ」だ。
これもニット生地なのだが、ことさらユニークな構造をしていた。

具体的にいうと、まずポリエステル糸をダブルラッセル生地に編む。ダブルラッセルとは天地2枚の編み地の間にそれらをつなぐ糸が配されている3層構造体で、この部分にオクタ糸を使用する。そして編み上げたあとに真んなかを
カッターで半分にスライスして切り開くのだ。すると外側はフラットだが、内側にはオクタ糸が立毛した生地ができ上がる。

前述のオクタcpcpと大きく異なるのは、起毛させず、スライスしたままの状態を保つことだ。切断されたオクタはクルリと捲縮(けんしゅく)するため見た目はパイル地のように見えるのだが、この捲縮したオクタの異形断面が優れた吸湿速乾性と豊かなロフトを発揮する。

さらにおもしろいのは、立毛部分がダイヤ柄やハニカム柄になっていること。空間の部分は通気性がいいのでオクタcpcp同様に「適度な保温力を持ちながら、激しく動いてもオーバーヒートしない」という特性を生み出す。
現在アウトドアで大ヒットしているオクタとは一般にこの「サーモフライ」のことである。

今回、僕はサーモフライの製造現場を見学させてもらったが、長さ100mもあるラッセル生地をわずか15㎜にスライスして開く技術には舌を巻いた。また大型のラッセル編機には何千本もの原糸が掛けられているのだが、そのどれもが髪の毛よりはるかに細く、肉眼ではほとんど見えない。それを職工さんたちは一本ずつ編み針に掛けたり張りの調整をしたりしているのである。針間が1㎜もない微細な隙間に、見えない糸を掛ける作業は、僕には魔法にしか見えなかった。

起毛機
▲左)160℃以上の温度で規定の生地密度にセットする。幅2.9mだった生地が3.8mまで広がる。右)起毛機。オクタcpcpはこの起毛機にかけてフワフワにする。1機あたり24本の針付きローラーが高速で回転していて、その上に巻き付けるように生地が密着され、細かなカギ針によって起毛し、梳き上げられる

優れた環境性能と圧倒的なパフォーマンス

IAAZAJホールディングス 第一編物 旅家秀暁 辻実
▲オクタ製品の染色や起毛などのいわゆる「後加工工程」を担当するIAAZAJホールディングス・第一編物の旅家秀暁さん(右)と辻実さん(左)。自らもBCスキーを楽しむアウトドアーズマンだ

さて、そんな超高度技術によって作られるサーモフライにはもうひとつ美点がある。それは高い環境性能だ。
長繊維を編み込んで作り、起毛処理もしないので洗濯しても繊維が抜け落ちにくく、海洋へのマイクロファイバーの流出を抑制し、地球環境に優しいのだ。

世界に先駆けてこのサーモフライを自社製品に採用したティートンブロス代表の鈴木ノリさんは、当時の状況をこう語る。
「当時はアウトドアウエアの環境性能や脱フリース化が大きな課題になっていました。私たちも冬季用のアクティブワームスには海外メーカーの環境対応素材を使っていたんですが、まだまだ毛ヌケが多くてどんどん生地が痩せちゃうんですよね……。これは環境面にも悪影響がありますが、私たちにとってはロフトの低下と本来のパフォーマンスが維持できないことのほうがより深刻な問題でした。そんなときに開発中のサーモフライの存在を知り、帝人フロンティアにサンプル反をもらってさっそくテストを開始したのです。それが2018年のことです」

テストの結果は良好で、繊維ヌケも少なく高いパフォーマンスが維持できた。また単品で使えば動的保温着に、上に気密性の高いシェルやビレイジャケットなどを着込めば静的保温着になる汎用性の高さも気に入ったそうだ。

こうして2019年秋冬シーズンから採用を開始し、現在ではトレラン用からBC用までさまざまなアイテムを開発・製造している。おそらく世界的に見ても相当オクタに精通したブランドだろう。これを機にオクタはコアな層にも広く受け入れられるようになった。

オクタcpcp
▲左)オクタcpcpのアップ。起毛面のオクタはこんなにフワフワしている。右)右が染色前のサーモフライ生地で左が染色・洗浄・乾燥後の生地。カットされて立毛したオクタ糸が加工後には捲縮しているのがわかる
オクタcpcp 素材
▲左)ダブルラッセル機は厚さやガラの形状を自在に変えられるので、このようにさまざまなバリエーションのサーモフライが編める。右)フラット面はこんなに薄い。そのため激しく動いてもオーバーヒートしないのだ

新しい扉を開けるボンディング開発

鈴木ノリ ティートンブロス
▲ティートンブロス代表でデザイナーの鈴木ノリさん。現役のアウトドアアスリートとして実践を重んじたウエア作りを続けている

そんな鈴木さんが次に考えたのは「オクタを表地に直接貼り付けられないか?」という発想だった。これまで表地に針と糸で縫製していたオクタを、ダイレクトボンディング(接着剤による貼付け)で一枚の生地に仕立てるのである。

鈴木さんは言う。「最大の狙いは透湿性の向上です。これまで表地とオクタ生地の間にあった空間をなくすことで、オクタが吸い上げた汗や水蒸気をダイレクトに表地に渡し、これまでよりも素早く拡散して蒸発させることができると考えました。もうひとつのメリットは動きやすさです。裏地がズレないので、下に摩擦係数の高いベースレイヤーを着ていても引っかかりにくくなり、運動性能が向上します」

鈴木さんはこのアイデアを帝人フロンティア側に提案し、ボンディングオクタプロジェクトが始まったのだ。

接着材や接着方法の詳細は公開されていないが、帝人フロンティアの開発陣によると今回のボンデングオクタプロジェクトにはかなりの苦労があったそうだ。
「まずは表地の選択がカギでした。今回採用した素材はよく伸びる糸を使った軽量のストレッチ織物です。この織物にオクタを貼り合わせたときの“相性”を見極めるのが難しく、糸の段階からさまざまな選択肢を検討しました。接着剤の選択や塗布方法については、加工場の職人技に頼る部分が大きかったです。軽く、暖かく、それでいて通気性が高いというこのミッションをていねいに説明し、品番一つひとつの特徴に合わせて貼り方を工夫していただいて、今回の製品に結びつきました」

今回取材した製造現場では編み立て、染色、半裁などのすべての工程でこの“職人技”を目の当たりにしたが、ボンディング工程も最後は職人技。最先端素材の生産現場もさまざまな“匠の力”によって支えられているのだ。

ボンディングオクタを使ったパイロットモデルがこれだ!

ティートンブロス ホバックスーツ
▲長期に渡る雪山遠征やバックカントリースキー、プロガイドの常用着として作られたワンピースミドラー。前身頃と太腿前側、 臀部にボンディングオクタプロジェクト製品を採用し、その他の部分には薄いフリースを使ったハイブリッド構造だ。着替えることなく24時間行動ができるように、さまざまなノウハウが込められている。写真はプロトタイプで、市販のパイロットモデルは七分丈の裾の処理がシャーリングではなくパイピングになる。カラーはカーキ1色だ

こうして生み出された生地を使ってティートンブロスはワンピースのミッドレイヤー「ホバックスーツ」を製作。昨年2023年秋からパイロットモデルとして限定200着を販売するとともに、契約アスリートやガイドによるフィールドテストを本格化させている。

しかし、一般的にはなじみのないワンピースを選んだのはどういう理由だろう……?
「このツナギはもともと保温材にプリマロフトを採用していたのですが、山小屋で働く人や山岳ガイド、スキーガイドにとても人気があったんですよ。胴回りを締め付けないので血行を阻害しないし、内部で対流するのでヌクヌクと暖かい。こういった冬山のプロは行動中はもちろん、山小屋やテント内でもずっと着っぱなしでヒートロスを防ぎ、夜はそのままシュラフに入ります。ティートンブロスとしてはそういった厳しいプロの目に晒してブラッシュアップをしていきたい。苛酷な環境での24/7テスト(1日24時間、7日間連続で行なう通しテストのこと)をつうじてこのプロジェクトで作った生地の性能と可能性をリコンファームしたいですね」

パイロットモデルの発売は昨年秋からはじまっている。雪山での活躍と大きな可能性を秘めたボンディングオクタプロジェクトのこれからに、ぜひ期待したい。

「ホバックスーツ」は
こちらからチェック

Teton Bros. Hoback Suit ティートンブロス/ホバックスーツ
¥35,200
SIZE XS-XL

ティートンブロス Hoback Suit
▲左)太腿の両サイドにはベンチレーションジッパーを備え、運動量の多い状況に対応。右)着用したままトイレができるように腰の後ろにオープンジッパーを備える
オクタ サーモフライ
▲左)内面はオクタのサーモフライ。透湿性の最大化を狙って大きめのダイヤ柄を採択した。右)表面はストレッチするポリエステルの織物。手触りがフラットなのでレイヤリングしやすい

SHARE

PROFILE

フィールドライフ 編集部

フィールドライフ 編集部

2003年創刊のアウトドアフリーマガジン。アウトドアアクティビティを始めたいと思っている初心者層から、その魅力を知り尽くしたコア層まで、 あらゆるフィールドでの遊び方を紹介。

フィールドライフ 編集部の記事一覧

2003年創刊のアウトドアフリーマガジン。アウトドアアクティビティを始めたいと思っている初心者層から、その魅力を知り尽くしたコア層まで、 あらゆるフィールドでの遊び方を紹介。

フィールドライフ 編集部の記事一覧

No more pages to load