
東京オリンピック開催前に知っておきたいサーフィン5つのこと。

NALU 編集部
- 2019年04月10日
INDEX
東京オリンピックの開催がいよいよ一年後に迫っている。史上初となるオリンピック競技としてのサーフィン。そこで開催を迎えるにあたって、ここに挙げる事前に知っておきたいことに目を通しておこう。
東京オリンピックのサーフィン基本情報
オリンピックでサーフィンの競技が行われるのは初めてのこと。だからこそまずはサーフィン競技についてここまでアナウンスされている基本情報を抑えておこう。
開催される期間は?
東京オリンピック自体の開催期間は7月24日から8月9日までの17日間。その中でサーフィン競技は26日から29日までの4日間となる。
男女共通で7月26日は7時~16時20分、27日は7時~17時40分、28日は7時~15時で準々決勝と準決勝、29日は8時~13時で決勝が行われる予定。
開催場所はどこ?
サーフィン競技の開催地は広大な九十九里の南部に位置する千葉県一宮町の日本屈指のサーフスポット釣ヶ崎海岸で決まった。
一時はケリー・スレーターが開発した人工波施設「サーフランチ」が日本にも建てられ、そこで行われるのでは?という噂も挙がったが、公式に釣ヶ崎海岸ということがアナウンスされている。
試合のフォーマットは?
サーフィンの実施種目は、男女ともにショートボードのみだ。残念ながら、同じように波に乗るロングボードやボディボードは実施種目には含まれないことになっている。
出場できる選手は男女でそれぞれ20名ずつ。そうなると当然ながらオリンピックのサーフィン競技に出られない国もでてくることになる。
選手の選考基準は?
2019年のCT(Championship Tour)でメンズトップ10位、ウィメンズトップ8位以内に入れば基本的には派遣選手に選ばれる。また2019年と2020年のISAワールドサーフィンゲームズの結果も選考基準となる。
日本のみ以上の基準を満たす選手がいない場合は、開催国枠として男女各1名が確保されている。
釣ヶ崎海岸の波を知ろう
大会会場に決まった釣ヶ崎海岸は日本屈指のサーフスポットだ。一年を通じてコンスタントに波が割れるこの海岸について解説する。
釣ヶ崎海岸、通称「志田下」はサーファーの間では広く知られたサーフスポットで、特に関東近辺に住んでいる人であれば、一度は訪れたことのある場所だろう。九十九里海岸の南端付近に位置し、千葉の房総半島が太平洋に大きく突き出しているため、幅広い範囲のうねりをキャッチする。年間を通じて豊富に波がブレイクし、サーフィンできない日は年に数えるほどしかない、とも言われている。そして、そんなコンスタントな波のコンディションがゆえに多くのトッププロがここから輩出されている。波とハイレベルなサーフィンの環境を求めてこの地に移住するプロサーファーも多数。エピックコンディションの日にはプロたちによる国内最高峰のセッションが繰り広げられ、ゆえに釣ヶ崎海岸は伝統的に「波乗り道場」とも呼ばれている。
波は典型的なビーチブレイクながら、条件が整えばチューブも巻く。西~南西の風をオフショアとし、特に波がよくなるのは5~11月の間だ。
サーフィン団体の違いについて
日本が関連する主要なサーフィンのイベントを主催する団体は3つ。それぞれどんな違いがあるのか、ここで確かめておこう。
オリンピックは世界的な総合スポーツ大会だ。アマチュアリズムを基本とするためもともとプロ選手は参加していなかったが、1980年代から1990年代にかけてプロ化が進行。そういった背景が、オリンピックのサーフィン競技に異なる団体が関係している要因となっている。
具体的に関係する団体はISAとWSL、JPSAだ。ISAは基本的にはアマチュアサーフィンを統括している団体。WSLは国際的なプロのサーフィンツアーを主催している団体。JPSAは国内のプロサーフィンを統括している。
なお、国内のアマチュアサーフィンを統括するNSAという団体も存在しており、ISAに紐付けされた国内の連盟という立ち位置で、オリンピックのサーフィン競技において国内の実質的な取りまとめを行っている。
これらの団体が密接に連携し、オリンピックを盛り上げようと動いているのだ。
ISA
インターナショナルサーフィンアソシエーション(国際サーフィン連盟)の略。世界のアマチュアサーフィンを統括している国際的な団体。サーフィンがオリンピック競技に決定したのはISAの働きによるもの。
WSL
ワールド・サーフ・リーグの略。国際的なプロサーフィンを統括し、世界最高峰のツアーを主催する。オリンピックの出場選手はWSLのサーファーが主体となる。
JPSA
ジャパン・プロ・サーフィン・アソシエーション(日本プロサーフィン連盟)の略。国内のプロサーフィンを取りまとめ、基本的に日本各地を転戦するプロサーキットを主催する
ハイスコアの出るライディング
オリンピックで初めて競技としてのサーフィンを目にする人も多数いるはず。だからこそどんなサーフィンが高評価につながるのか知っておこう。
サーフィンは採点競技だ。波に乗り、演技を点数化して優劣を競う。競技としてのサーフィンを見慣れない人には、なにがすごいライディングなのか、わかりづらいかもしれない。だが、例えばWSLでは採点基準をウェブサイトで公式に発表し、見る人がなるべく理解できるように努めている。
ライディングの評価の上でポイントとなるのは5つだ。1つが難易度の高さ。2つ目がマニューバの革新性。3つ目がマニューバのコンビネーションの豊富さ。4つ目がマニューバのバラエティの豊かさ。5つ目がスピード、パワー、および流れの美しさだ。
つまり、波の切り立った難しいセクションで、さまざまな革新的マニューバを流れるようなスピードで何回も繰り出せば、高い点数がつけられることになる。簡単に言ってしまえば、より難しいことをやればいいということ。ただし、画面で見ているとカメラが追っているので、ライディングのスピードがわからないということも覚えておこう。
各国の有力選手たち
非常に卓越したサーフィンスキルを持つ人たちがオリンピックに出場する。ここでは出場が見込まれる各国のメダル候補を見ていこう。
オリンピック選手の選考基準は発表されたものの、2019年の3月時点で各国の代表選手は1人も決まっていない。
しかし、現在WSLのCTで上位にいる選手は代表に選ばれる確率が非常に高く、メダル獲得も期待されている。それはCTが世界最高峰のツアーであり、スキル的にも、経験的にもレベルの高いサーファーが集まっているからだ。
最もメダルに近いサーファーは、近年CTでワールドタイトルを獲得しているサーファーと言えるだろう。その意味ではブラジルのガブリエル・メディーナが最右翼。波のサイズの大小を問わず高い実力を発揮でき、釣ヶ崎海岸のビーチブレイクも苦にしないはずだ。
対抗は2016年と2017年に世界チャンピオンに輝いたハワイのジョンジョン・フローレンス。彼の革新的サーフィンは見ものだ。
ブラジルのフィリペ・トレドもキレのあるサーフィンでメダルの可能性は十分。日本の五十嵐カノアはダークホースとして注目を浴びるだろう。
Gabriel Medina (BRA)
エアリアル系マニューバの安定感が非常に高く、総合的に最も優れているサーファーの1人。ミスが少ないというところも特筆すべき点だ。
Michel Bourez (PYF)
タヒチのミチェル・ボレーズはサーフィン大国以外のサーファーで高い評価を受ける1人。パワフルなライディングが特徴の選手だ。
Jordy Smith (ZAF)
南アフリカのジョディ・スミスは大きな体格を生かしてダイナミックなサーフィンを展開。それでいてスムーズなライディングを見せる。
John John Florence (USA)
ビッグウェーブでのサーフィンのみならず、高い打点のエアリアルもジョンジョンの強み。カービングもうまく、すべてでハイレベル。
Julian Wilson (AUS)
サーフィン大国の1つ、オーストラリアで今一番チャンピオンに近いサーファーがジュリアンだ。ラインの太いサーフィンが魅力だ。
Filipe Toledo (BRA)
躍進めざましいブラジル勢の中で、ガブリエルに迫る勢いなのがフィリペ。キレキレのターンとエアリアルの両方で高いスキルを持つ。
Kanoa Igarashi (JPN)
2018年のCTランキング10位。日本人として最も結果を残しているのが、五十嵐カノアだ。試合運びのうまさにも定評がある。
2020年、1年後に迫った東京オリンピックで、史上初開催となるサーフィン競技。日本屈指のサーフスポット釣ヶ崎海岸に、世界最高峰のスキルを持った一流のサーファーが集まり、しのぎを削る。今から開催が待ち遠しい。
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NALU 編集部
テーマは「THE ART OF SURFING」。波との出会いは一期一会。そんな儚くも美しい波を心から愛するサーファーたちの、心揺さぶる会心のフォトが満載のサーフマガジン。
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