日本ロングボード紀行【伊良湖】
FUNQ NALU 編集部
- 2021年12月11日
海に囲まれた日本列島には、日々、大海原からうねりが押し寄せる。豊かな海岸線、峻嶺な山々から注ぐ大河に恵まれ、さまざまな波を生み出している。四季折々、津々浦々で、今この瞬間も波が生まれては消えていく。そこには、その波をこよなく愛し、守り、慈しむサーファー達の姿がある。そう、日本は世界に誇るサーフアイランドなのだ。この連載では、ロングボードを切り口に、各地のサーファーコミュニティと彼らの地元の波への思いを伝えていきたい。
今回、足を運んだのは愛知県・伊良湖。果たして、どんなサーファーと波が待っているだろうか?
◎出典: NALU(ナルー)no.119_2021年1月号
サーフィンが身近にある暮らし
海から上がり駐車場を見渡せば、あたり一面TOYOTAのハイエースに囲まれていることもよくある光景。
世界のTOYOTAがある愛知県。TOYOTAがある豊田市から1時間。名古屋からも1時間半前後でクルマでこれる伊良湖エリアは東西に約45キロの海岸線があり、週末になると多くのサーファーが海に訪れる。海岸線すべての駐車場が無料なこともあり、翌日も波がよさそうだとクルマで一晩過ごして朝一を狙う人も多く、広い室内でゆったりと車中泊できるハイエースは伊良湖サーファーには大人気。伊良湖でサーフィンを始めたらサーファー=ハイエースであり、憧れのクルマだ。
▲緑あふれる海岸線は東西に45キロもあり、人工的な建物がないので海から見える風景は格別
▲フェリーとともに眺めるサンセットはここでしか味わえない
伊良湖は、豊橋市と田原市の海岸線の総称。豊橋市はお菓子で大人気のブラックサンダーを製造する有楽製菓があり、530(ゴミゼロ)運動発祥の地。街中も海岸も清掃活動されている。田原市は、サーフタウン構想を打ち出し行政も積極的にサーファーを誘致しており、国際的なコンテストも行われている。花やキャベツなどの農産物出荷額が日本一であり、TOYOTAの田原工場もあり、農業も工業も盛んだ。
▲日本一の名産で作る田原駅前の立体花壇が旅人を出迎える
国際的な大会も頻繁に行われていることもあり、メジャーポイントでは駐車場やトイレ、シャワーも奇麗に完備され地形も比較的安定している。過去にも、CJ・ネルソン、ハーレー・イングレビーなど世界で活躍するロングボーダーも訪れている。外洋に面しウネリがダイレクトに入るため、ウネリに敏感に反応し、ベストシーズンは4月~11月。12月~3月までは西高東低の冬の気圧配置で、強烈な北風で波が立つ日が少なくオフシーズンだ。
▲CJネルソン、ハーレー・イングレビー、カシア・メーダー等、多くの世界のスターも伊良湖でのサーフィンを楽しんでいった
個性豊かなレジェンドサーファーたち
ウネリの向きや風の吹く方向もあるが、レギュラーブレイクに乗りたいならロコポイント、グーフィブレイクに乗りたいならロングビーチ、三角でコンパクトな波に乗りたいなら新日、全日ポイント(ここ数年ロングボーダーには新日と全日の間の中日ポイントが人気)、混雑を避け目の前に割れる波に集中したいなら、赤羽根エリア以外の海岸線を探してみると自分だけの貸し切りウェイブに辿り着ける時もある。
▲自分だけのサンドバーを探しに探検しよう。他のサーファーがいない貸切ウェイブに出合えるかもしれない
台風シーズンで表浜の海岸がクローズし始めたら、渥美半島の先ちょの先端ポイント。グーフィパラダイスだが強烈なカレントが発生することも多く、海底に岩もある。ローカルが波がブレイクするのを楽しみに大切にしているポイントでもあるので、要注意。また先端にある灯台茶屋で名産の大アサリを食べたり、伊良湖のビッグウェイブブポイント石門を見学してみるのも一見の価値があります。
▲この景観が50年後も100年後も残っていてほしい
伊良湖のロングボードシーンで、語らずにいられないのは故パンダさん。ロングボードで次々とチューブをメイクしていく衝撃的な姿が今でも脳裏に焼き付いている。そんなパンダさんに一子相伝された息子のハマ君は、今では伊良湖一番のチューブハンターだ。
▲不可能を可能にした故パンダさんは、ロングボードでのチューブライディングを次々とメイクしていた
▲伊良湖一番のチューブハンターのハマ君。故パンダさんから一子相伝されたチューブライディングは必見
72才現役バリバリな武藤さんを始め、旅人プロロングボーダージャンボさん、唯一無二のPIPPEN、漁師でプロロングボーダーのケンちゃん、JAFで働くクルマの救世主ミッチーをはじめ、個性豊かなスタイリッシュなサーファーが伊良湖に多い。そんな姿に憧れて、近年ロングボーダーも増えつつある。
▲72才現役バリバリの武藤さんは、ロコポイントのスペシャルな日には必ずラインナップにいて、その日1番の波をメイク
▲ヨーロッパのサーフシーンに誰よりも精通し、フォーカスし続けるジャンボさん
▲STYLE=PIPPENと海の辞書に書き込まれていそうなほどスタイリッシュなPIPPEN 。国内外に多くのファンを持つ世界的サーファー
▲プロロングボーダーのケンちゃんも伊良湖に魅了されて移住してきた
▲どんな波でもチャージする伊良湖期待のアップカマーのミッチー。今後も楽しみな一人
伊良湖の海帰りには、是非、道の駅に寄ってみては。日本一の農産地で採れた新鮮な野菜や花などが市場よりも格安で買え、家で待つ家族や恋人も喜ぶこと間違いありません。伊良湖にまた来週も野菜や花買いに行ってくるよ、と海に行く口実になりますよ(笑)。
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PROFILE
FUNQ NALU 編集部
テーマは「THE ART OF SURFING」。波との出会いは一期一会。そんな儚くも美しい波を心から愛するサーファーたちの、心揺さぶる会心のフォトが満載のサーフマガジン。
テーマは「THE ART OF SURFING」。波との出会いは一期一会。そんな儚くも美しい波を心から愛するサーファーたちの、心揺さぶる会心のフォトが満載のサーフマガジン。