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ジェリーロペスが語る「バド・ブラウン」との物語|PART2

サーフィンの神様とまで言われ、世界中から尊敬を集め慕われ続けるジェリー・ロペス。そんな彼は、ストーリーテラーとしても貴重な存在である。めったにメディアには出てこないが、サーフィンの歴史に大きな影響を与えたサーファー達や海から学ぶ様々な教えを、シンプルな文体で私達に伝えてくれる。早速、その物語に耳を傾けてみよう。
◎出典: NALU(ナルー)no.120_2021年4月号

ジェリー・ロペスとバド・ブラウンの最後の映画製作

1972年バドと私は『ゴーイン・サーフィン』 という映画の撮影をした。これは彼の最後の映画となったものだ。それ以前にも何度も一緒に撮影をしていたが、この時彼には新しい計画があった。彼は私にパイプラインのチューブのなかにカメラを持って入って欲しかったのだ。波が良かったある朝、彼はカメラとハウジングを持ってビーチに現れ、私に使い方や注意点を伝授した。カメラは彼が初期に使っていた8ミリカメラで、ハウジングは、なんというか彼の独特なデザインと構造だった。プレクシグラスのレンズが端っこにボンドで接着されたオートバイのタイヤのインナーチューブでできていて、それをゴムのバンドで締 めてレンズやカメラが動かないようにするというシステムだった。チューブのもう一方の端はまだ開けてあってそこからカメラにアクセスできるようになっていた。バドはそこを折り返しゴムバンドで締めて密閉させた。
これで水に漏れないのか聞いてみると、彼はいつものぶっきらぼうな喋り方で「たぶん大丈夫」と答えた。そしてカメラに紐を結び、自分のズボンの半インチくらいの細さのベルトを抜いてそのヒモに結びつけた。「これは万が一カメラを落とした時のためだ、でももし撒かれたらカメラを抱えて守るほうがいい」

カメラをくわえてパイプラインへ

彼がカメラのスイッチをオンにするやり方を説明しているのを聞きながら私はだんだん自信がなくなってきた。バイクチューブの中にあるボタンを探って押す、見えないけど一回押すだけ、何度も押してはいけないと言われた。オーケー、でもパドルする時どうやってこのカメラを持てばいいんだい? と聞くと、ここを歯で噛んでおけば大丈夫という答えが返ってきた。その部分を見ると彼の歯型がついていたので、彼がこれまでに何度もいろいろ試してこの方法を考案したことが理解できた。まあいいか、やって見るだけやってみよう、と私はカメラの命綱であるベルトを締めて思った。バドは私を、頑張れよと送り出した。私は 若かったし、バドを信頼していた。カメラは実際には結構軽かったし歯で噛んで持って行くのも難しくなかったのでアウトに向かってパドルしていった。
その日は波がそれほど大きくはなかったけれどたまに8フィートくらいのセットがくるコンディションで人も少なかった。

仲間とのセッションをカメラで撮影

最初の波にパドルし、立ち上がりドロップを決め、カメラを手に持ちスイッチを手探りで探した。スイッチを見つけ、ちょうど波が目の前で巻き上がっていく時にそれを押した。波から出てきた時、もう一度スイッチを探り、押してオフにした。前の部分から覗き込むと小さなライトが見えてそこでスイッチがオン、あるいはオフになっているかどうかがわかるようになっていた。のぞいて見るとライトがついてなかったのでオフになっていることがわかった。自分が上手くやってのけたのだろうと安心した。何本か乗るうちにだんだん慣れてきて、ドロップの時に既にオンにしてしっかりカメラアングルを自分と波に合わせるようとする余裕も出てきた。
何回かは仲間と一緒に波に乗り、自分の前や後ろにいる仲間を取ることもできた。彼らのアクションがフレームの中心になるように心がけたけれど、そのどれがうまくいくかはまったくわかっていなかったがとりあえずいろいろ試してみた。
とうとうバドがビーチから手を振ってるのが見えたので最後の波にテイクオフした。バドは機材を回収し、濡れたベルトをそのまままたズボンに通して、軽くありがとうと言って帰っていった。

バドの考案したギアは完全に時代を先取っていた

次に彼に会った時、彼はあの時の映像でいくつかいいのがあった、とは言っていたが、映画が完成されるまで映像を見ることはなかった。
上映会で初めてその映像を見た時私は感激した。アングルも全体の様子も素晴らしかった。特にその位置から見たアクションは今までサーフフィルムで見ることがないものだった。そのなかでも同じ波に乗った他のサーファーたちを撮ったものは一番良かった。いまでは GoProですべて簡単にできてしまうけど、当時はバドの考案したギアは完全に時代を先取っていた。
バドはパイプラインが決まった日にはだいたいいつもラインナップの常連で、自作のウォーターハウジングを持って水中撮影をしていた。とにかく泳ぎに長けていたので他にも水中カメラマンがいたとしても彼は必ず一番ピークに近い位置にいた。というか、一番波の危険な場所にいた。私が波に乗ることに集中してボードにさっと立ち上がり、スティープなドロップを決めてすぐターンに入り、巻いてくる波のすぐ下、リップの下に潜り込むようにポジショニングし、そこでやっとチューブの先にある出口の方を見るとそのトンネルの先にバドがしっかりカメラを構えているのが見えるということがよくあった。
抜けた時そこに彼がいるだろうと予想はしてたが、一度チューブを抜けた瞬間1フィートも離れていないところに彼がいたことがあった。波に乗り終わってパドルして戻ってくる時に彼が泳いで近づいて来たので近くに行きすぎて危険だったことを謝ったら、彼は彼らしい言い方で「次はもっと近づけるかやってみてくれ」と答えた。まさにバドらしいコメント!

ジェリーロペスが語る「バド・ブラウン」との物語|PART1

ジェリーロペスが語る「バド・ブラウン」との物語|PART1

2021年11月12日

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FUNQ NALU 編集部

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テーマは「THE ART OF SURFING」。波との出会いは一期一会。そんな儚くも美しい波を心から愛するサーファーたちの、心揺さぶる会心のフォトが満載のサーフマガジン。

FUNQ NALU 編集部の記事一覧

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