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伝説の映画『フリーライド』知られざる真実。 ~追悼:ビル・デラニー監督~

これまで数多くのサーフィン映画が制作されてきたが、その金字塔といえば『フリーライド』だろう。この作品を観た当時の若者は、作品に魅せられて、波乗りの世界に惹きこまれた。そんな傑作を手がけた監督ビル・デラニーが今年の冬に逝った。隠された真実が今、明らかに。
◎出典: NALU(ナルー)no.114_2019年10月号

監督のクリエイティビティとセンスが前面に押し出された芸術的な作品

2019年を迎えてすぐに、ビル・デラニーが逝去したというニュースが、カリフォルニアから届いた。その名前を聞いて、ピンときたとしたら、かなりのコアなサーファーだろう。だが、その名前を知らずとも、彼が手がけ1977年に登場した映画『フリーライド』は、サーファーだったらその名を耳にしたことがあるだろう。

作品を観たことがない読者に説明するとしたら、世界チャンピオンに輝いたショーン・トムソン、ラビット・バーソロミューそしてマーク・リチャーズが登場するサーフムービーとなるだろう。だが、それではこの作品を観てサーフィンを始めた「フリーライド・チルドレン」とも言うべき往年のサーファーから叱責を受けるだろう。『フリーライド』は、それまでのサーフィン映画の常識をくつがえす、革命的な作品だった。デラニーは、ウォーターカメラマンに、後に巨匠となる無名のダン・マーケルを起用。超高速度撮影のスローモーションを作品に取り入れた。そしてテーマソングには、サーフムービー史上、最高傑作曲との呼び声も高いパブロ・クルーズの『ゼロ・トゥ・シックスティ・イン・ファイヴ』を使用。さらにナレーションは、後の人気サーフムービー『ビッグ・ウェンズデー』の主役マット・ジョンソンを演じる人気俳優ジャン=マイケル・ヴィンセントが担当した。マイケル・ヴィンセントは、デラニーのかつてのルームメイトでサーフィン仲間だったのだ。それまでのサーフムービーはどちらかと言えばドキュメンタリータッチの記録的な映像作品の域に留まっていたが、『フリーライド』は、まさに監督のクリエイティビティとセンスが前面に押し出された芸術的な作品だった。

百聞は一見にしかず。実際に作品を観て、そのバイブレーションを体感してほしいと言いたいが、それは不可能だ。77年の有志による上映後、今はなきベータ版のビデオ、レーザーディスクのファイナルエディションのリリースを最後に、再び日の目を見ることはなかった。一部のアメリカのサーフィンメディアは、その理由を音楽の権利上の問題によるものだと報じた。デラニーはその憶測記事に怒り、報道元のジャーナリストは謝罪することになった。1990年に遺作となる『サーファーズ』を最後に、デラニーは、サーフィン業界を後にしていた。そして、『ロード&トラック』というメジャーなクルマ雑誌のアートディレクターにステップアップして大きな成功を収めていたのだ。生活には何の不自由もないし、金銭欲もない。デラニーとしてみれば、自分の処女作で大きな成功を収めた愛すべき作品は、大切にしまっておきたかったのだろう。

封印された名作。秘密裡のプロジェクト

だが、2011年、ある日本人の言葉が、彼の頑な思いを前に動かすことになった。レイドバック・コーポレーションの代表、茂木亮氏だ。茂木氏は、サーフィン映画を国内にディストリビュートし、故ブルース・ブラウンやトーマス・キャンベルとも太いパイプを持っている。デラニーとも旧知の仲だった。

「『フリーライド』は間違いなくサーフィン映画の名作。当時、これを超える作品が出てくるのかとずっと期待していたのだけど、大ヒットにはいたっていない。それでビルに『フリーライド』を新しくよみがえらせないかと提案したんです」

当時のサーフィン映画は、アナログのネガフィルムで撮影されていた。時代とともに経年変化し、画質の劣化は避けることはできない。そこで現代のデジタル技術で当時の映像を今によみがえらせて、リリースしようと企図したのだ。2011年に秘密裡にプロジェクトはスタートした。だが、その前途は多難だった。秒間24コマ、その一コマ一コマを、ハイクオリティなデジタルスキャンしてゴミやノイズを消去して、画像を修正していくのだ。『フリーライド』は90分に及ぶ大作だから、その作業量は想像を絶する。デラニーは敏腕なアシスタントを雇いプロジェクトに専心したが、2016年、カリフォルニアに訪れていた茂木氏をベンチュラの自宅に呼んだ。「ごめん。もう続けることができない……」

この時、既にデラニーの体は重い病に蝕まれていた。完璧に仕上がっている映像はまだ13分足らずだった。

「ビルはすごく才能があった。いつか新しいサーフィン映画を作りたいと言っていたのに……」

茂木氏は、デラニーへの追悼として、彼の遺作となった『サーファーズ』の上映会を行う予定だ。機会があれば、いつか未完成の13分の高解像度の『フリーライド』も上映したいと言う。ファンならずとも、ビル・デラニーの最後の息吹を感じたいことだろう。

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FUNQ NALU 編集部

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テーマは「THE ART OF SURFING」。波との出会いは一期一会。そんな儚くも美しい波を心から愛するサーファーたちの、心揺さぶる会心のフォトが満載のサーフマガジン。

FUNQ NALU 編集部の記事一覧

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