イタリア・オルコに滞在した3週間。「Green Spit」に取り組んだ6日間とさまざまな出逢い|筆とまなざし#300
成瀬洋平
- 2022年10月26日
3週間のクライミングトリップで出逢った魅力的なルート、そしてちょっとした海外生活を楽しんで。
オルコに滞在したのは3週間と少しでした。その間「Green Spit」には計6日取り組みました。最初の3日間は湿度が異様に高かったものの、残りの3日間は良いコンディションに恵まれました。クライミングトリップに行ってひとつのルートに何日も取り組むということは初めての経験でした。トライの度に修正点を見つけることができましたが、完登には及びませんでした。単純に圧倒的な力不足でした。それと同時に限られた日数のなかで岩と自分のコンディションを調整しながら取り組むことの難しさを実感しました。ちなみに、以前この連載で「初登者のディディエによって8bというグレードが与えられた」という内容の記事を書いたのですが、正確にはディディエは8b+(5.14a)とグレーディング、その後の再登者によって8bとダウングレードされました。いずれにせよ、世界的なクラックの一本であることはたしかだし、それがどんなものなのかという素朴な疑問を身をもって経験できたことは新鮮な経験でした。
そのほかで印象に残っているのは、オルコの「Separate Reality(ヨセミテにある有名なルーフクラック)」といわれる「Lego land(7b)」。こちらはオンサイトすることが出来ました。メインのルーフクラックは2ピッチ目にあって1ピッチ目は6bながら侮れないスラブに走ったフィンガークラック。そして件のルーフクラックは岩が積み重なっただけのまさにLEGOのような状態で、よくもここを登ろうと思ったものだと、それ以前によく崩れないものだとおどろいてしまいました。最終日は午前中だけ登る時間があったので、トポの写真を見て気になっていた「Non so chi mi Tenga (7a+)」というルートへ。強傾斜のクラックでスタートはキャメロット6番サイズ。徐々に狭くなって一旦閉じたクラックはふたたび抜け口で6番サイズになるという短くも個性的なルートでした。オルコには、まだまだこんな個性的なルートがたくさんあります。
ひとつのルートをきっかけに出かけた今回の旅。だれもいない岩場で、カウベルの音を聞きながら一本のルートと向き合うのはとてもぜいたくな時間でした。アプローチで採ったキノコで作るパスタもおいしかったし、アパートに滞在することで日に日に村の人たちと顔見知りになり、出会えば手を振り、いっしょにバーでプロセッコを飲んだりしたことはとても良い思い出。みんなフレンドリーでとても親切な人ばかりでした。ちょっとした海外生活を楽しむことができ、これは癖になりそうです。
再訪するかどうか、いまはまだわかりません。けれども、ひとまず旅を終えて感じることは、魅力的なルート、絵になる風景、陽気な人々、美味しい食べ物、出会ったすべてにGrazie mille!!
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