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クライミングジム「エッジ・アンド・ソファー」での展覧会にて、キャンバスにアクリル絵の具を使った作品を出展|筆とまなざし#371

小川山と瑞牆山。近くにありつつも、それぞれ異なる印象をもった岩場の風景。

長野県伊那市のクライミングジム「エッジ・アンド・ソファー」で今週水曜日から始まる展覧会で、小川山の絵と並べて瑞牆山の絵を展示する。奥秩父の西端に位置する瑞牆山。花崗岩の岩峰がひしめくこの山は、深田百名山として登山者に人気だが、いわずと知れたクライミングのメッカでもある。奥秩父主稜線の北側にあるのが小川山で、南側にそびえるのが瑞牆山。同じ花崗岩の岩場なのだが、このふたつの岩場はぼくのなかでみごとなコントラストを見せている。そのコントラストを端的に表す風景が、朝日の小川山と夕日の瑞牆である。

小川山の岩場は、廻り目平を取り囲む岩峰群を指す。小川山のピーク自体はそれよりも西側の稜線に位置しており「廻り目平周辺の岩場」といったほうが正確なのだが、昔からクライマーの間では小川山という名前で親しまれている。この岩場は小川山や金峰山に取り囲まれた谷間に広がっており、主稜線の北に位置している。さらに、そのシンボルである屋根岩は谷の西側に位置しているため、朝、山の端から昇る太陽の光は真っ先に屋根岩の上部を明るく照らす。やがて谷間にも日が当たってくるのだが、晩秋など凍える朝にはどれだけこの光がありがたいことかは、小川山に通うクライマーならだれしもが知っていることだろう。逆に夕方になると太陽は屋根岩のうしろに沈んでしまうので夕日には染まらない。いっぽう、瑞牆山は主稜線の西に位置するため朝日はしばらく届かないのだが、西面に開けており夕日に染まる。登り疲れて下ってきた時、白い花崗岩の壁が朱色に染まる光景には思わず立ち止まって見惚れてしまう。

このふたつの山は、景観はもちろんクライミングルートにおいても似て非なるところが多い。小川山はそれほど大きくはない岩峰がまばらに点在しており、スラブが多いのも特徴だ。傾斜が緩いぶん比較的易しめのルートが多く、ビギナーやファミリーにも親しみやすいフレンドリーな岩場である。ボルトや支点もよく整備されている。瑞牆より標高が高く、森はどことなく清々しい印象である。それとは対照的に、山の南西面を向いた瑞牆は雨も多いのだろう、全体的に深い森に覆われていて鬱蒼とした雰囲気である。十一面岩に代表される標高差300mに達する壁が屏風のように密集しており、その威圧感と迫力は小川山にはない。岩は全体的に傾斜が強く、フェイスはもちろんクラックも被っているものが多い。そのため総じてグレードは高め。開拓者の思想を色濃く反映した、ミニマムボルトのルートも多い。瑞牆には熟練したクライマーしか寄せ付けないワイルドさがある。

朝日を浴びる爽やかな小川山と夕日に染まる気高い瑞牆山。今回の展覧会では、近くにありつつもそれぞれ異なる印象を持った岩場の風景を、その印象を頼りに描いた絵を並べて展示する。画材も水彩紙に透明水彩といういつもの絵とは違い、25号(約880×730mm)のキャンバスにアクリル絵の具を使った。キャンバスは木枠のないカットキャンバスを用い、額装せずに四隅に古いロープでループをあしらって展示できるようにした。画材、サイズ、描き方、展示方法。多くの点で新しい試みの展覧会であり、同時にこれからの旅と制作において大きな可能性を示唆してくれるものになるはずだ。展示期間は短いけれど、ぜひ多くの方々にご覧いただけたら嬉しい。

展覧会情報

クライミング/山×ものづくり

成瀬洋平×Arts and Climb
会期:4月17日(水)~21日(日)
場所:クライミングジム「エッジアンドソファー」伊那店

https://www.edgeandsofa.jp/blog/2024/03/20244.php

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PROFILE

成瀬洋平

PEAKS / ライター・絵描き

成瀬洋平

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

成瀬洋平の記事一覧

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

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