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和歌山県最高峰の”低山”を歩く|龍神の山とふもとの温泉旅 #1(和歌山県田辺市)

和歌山県最高峰の龍神岳と護摩壇山を気軽にハイキング。ふもとには日本三美人の湯と称される龍神温泉があり、トロリとした泉質で肌がすべすべに。山と温泉をめぐりながら紀伊半島の自然や歴史を紐解く旅をしてみよう。

アウトドアスタイル・クリエイター 四角友里さん
「山スカート」を日本に広めた女子登山ブームの火付け役。2023年秋、自身のオリジナルアウトドアブランド「MOUNTAIN DAISY PRODUCTS」を立ち上げる。
Instagram@yuri_yosumi

▲連なり押し寄せる波のような紀伊半島の山々。いつか高野山と熊野本宮大社を結ぶ熊野古道の「小辺路」も歩いてみたいと思わせる。

龍神岳(りゅうじんだけ)/標高1,382m
和歌山県最高峰の山だが、山頂直下まで高野龍神スカイラインが通っているため、駐車場から往復一時間ほどで歩くこともできる。高野龍神スカイラインは冬季通行規制があり、夜間は全車両通行止めに。日中も冬用タイヤ着用などが必須。事前に交通情報を確認しよう。

聖なる熊野の山々を見渡す、和歌山の龍神岳へ

紀伊半島の南部にある和歌山県田辺市は、知る人ぞ知る低山の宝庫。世界遺産の道、熊野古道をはじめ、高尾山にひき岩群、百間山渓谷と、私も幾度かに渡って田辺の山々を味わってきた。里山にもかかわらず、八ヶ岳や尾瀬といったフィールドのように何度もリピートしたくなるのは、信仰、偉人、海、ミカンや郷土菓子、純喫茶やグルメなど、田辺の山は里の魅力をかけあわせた旅のアレンジが多彩にできるから。

今回の訪問は、山と温泉を求め龍神村へ。和歌山県最高峰の龍神岳と千三百年以上の歴史をもつ龍神温泉を有するエリアを訪ねる。

▲田辺市内でアウトドアショップ「STOCK OUTDOOR」を営む新田浩司さん。関西近郊の山を中心に登山ガイドとしても活躍し、『自然とつながり感動を分かち合う』をコンセプトに、やさしい人柄で山へ海へ川へと誘ってくれる。

森林公園林間広場で、案内してくださるストックアウトドア店主の新田浩司さんと待ち合わせ。

「正面に見える護摩壇山がずっと県内最高峰と言われていたんですが、2000年に国土地理院が再計測すると、当時は名のなかったとなりの峰のほうが10m高いことが判明し、公募で龍神岳と命名されたんです」

たしかに、東側の山のほうがちょっと高そう。そうか、今日は新旧の最高峰、和歌山ナンバー1と2を一度に味わえるんだ。そうそう、2024年の干支の辰年にちなんだ写真撮影も、目的のひとつ。

▲ヒメシャラの幹の模様。

尾根道へ入ると、木漏れ日が優しい。ブナやミズナラが紅葉し始め、あちこちに落ち葉やどんぐりの実が。シロヤシロやシャクナゲなどもあり、花が咲くころの景色も想像しながら森をめぐった。「ほっとしますね」と広葉樹の森のなかで、うれしそうに目を細める新田さん。古くから林業で栄え、杉や檜の植林が多い紀伊半島。けれど、高野龍神国定公園の一帯は豊かな天然林が広がり、紅葉と新緑が美しいエリアなのだそう。「天空三部」といい、尾根筋を含む山の上部3割は人工林にせず、自然のままにしておくように、という先人たちの教えもあったようだ。木々の幹の模様や鳥の声にも足を止め、歩くだけで心が満ち足りていく尾根道だった。

▲キラキラそよぐ森の光をあびながら休憩タイム。温泉を使って焙煎された珈琲で龍神村とつながるひととき。

道中、ちょうどよいベンチでしばし休憩。ふもとの龍神温泉街で購入した「豆んと森珈琲」さんの焙煎豆「ドラゴンウォッシュロースト」を教わった方法で淹れてみる。山に芳醇な香りが広がる。まろやかできれいな味。深煎りなのに苦味がなくまろやか。甘さと軽やかさも纏っている。

この味の秘密はなんと温泉水!昨晩、私の肌をぷるんと潤してくれた日本三美人の湯と称される龍神温泉は浸透効果が高く、皮脂や角質が落ちやすい泉質。その温泉水で生豆を洗うことで雑味の原因になる薄皮や汚れを取り除き、クリアな風味を引き出せるのだそう。焙煎士の中川政寿さんは山を愛するトレイルランナーでもあり、幻の熊野古道「奥辺路」復興の活動もされている。お店には紀州の特産品である備長炭を使うための炭火焙煎機もあり、地域に対する想いがひしひしと伝わってきた。

弘法大師や紀州徳川家に縁をもつ龍神温泉。趣きある「上御殿」の建物の立つ古い温泉街に、湯けむりのごとく焙煎の煙が漂うようすは、新しい風が龍神村の魅力や情熱を循環させ、土地を耕しているように感じられた。

――ああ、おいしい。一杯の珈琲を通して、龍神村をより立体的に知れた感じ。地元の魅力的な人やお店に出会えると、それだけでいい旅ができたな、と思えてくる。

温泉、人、食。自然とつながる里山の旅

▲みかんの皮をくり抜いて「2024」と今年の年号を。辰年にちなんで、龍神岳に登りこんな写真を撮ってみては!?

龍神岳に到着すると、ススキが輝いていた。西陽に照らされた稜線が奥へ奥へと続いている。決して高くはないけれど、押し寄せるさざ波のような迫力ある紀伊半島特有の山並み。和歌山の聖地、高野山と熊野本宮大社とを結ぶ信仰の道を抱く山々だった。

地元の方が〝しわくちゃ〞とも表現する、地殻変動によって圧縮された急峻な地形。景色を眺めながら、深く刻まれたシワの奥に息づくこの土地の魅力を振り返ると、龍神村とこれまでの旅で出会った田辺の人々が思い浮かぶ。きっと山も町もおなじ。一つひとつの木々や小さな生きものたちが関わり合って豊かな森を形成しているように、すてきな地域には個性豊かな店や人が在る。

▲龍神岳より10m低い護摩壇山。護摩壇山の名の由来は、源平争乱の中で落ちのびた平維盛がここで護摩を焚き、平家の行く末を占ったという言い伝えによる。山の名前から地域の歴史を紐解いていくのも興味深い。

低山とは軽いハイキングのための場所と捉えることもできるけれど、私にとっては低山ハイクこそが旅。人里とのつながりが近い身近な山だからこそ、歴史や信仰、文化や営みが色濃く映し出されていて、その物語をゆっくり紐解いていくことこそが、低山ハイクの魅力だと思うのだ。

歩行時間:約3時間5分
森林公園林間広場 →(50分)→ 森林公園入口 →(20分)→ 護摩壇山 →(20分)→ 龍神岳 →(15分)→ 護摩壇山 →(10分)→ ごまさんスカイタワー →(30分)→ 森林公園入口 →(40分)→ 森林公園林間広場

アクセス
JR 紀伊田辺駅から森林公園林間広場まで車で約1時間30分。龍神温泉まで約35分。

※高野龍神スカイライン(国道371号)の高野町高野山~田辺市龍神村龍神字大熊の区間は、2024年3月25日(月)7:00まで冬期通行規制あり。

>>>田辺・龍神の立ち寄りスポット|龍神の山とふもとの温泉旅 #2(和歌山県田辺市)

田辺で楽しむ山旅をまとめた「田辺の低山とまちを歩く旅のはじまり」はこちらから!

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ランドネ 編集部

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自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。

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