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春のステージレースはスロベニア旋風、そして舞台はミラノ~サンレモへ|ロードレースジャーナル

vol.32 強さ際立ったログリッチとポガチャル
ワウトら含め戦いの場はミラノ~サンレモへ

国内外のロードレース情報を専門的にお届けする連載「ロードレースジャーナル」。最高峰のUCIワールドツアーは、主要ステージレースのパリ~ニースとティレーノ~アドリアティコが終了。それぞれプリモシュ・ログリッチ(ユンボ・ヴィスマ)、タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)と、現在のプロトンを代表するグランツールレーサーが頂点に立った。そして何より、ともにスロベニア人ライダーという共通項も。この2人の強さが際立った両レースを振り返るとともに、次なる舞台であるミラノ~サンレモへ思いをはせるべく、今回は有力選手たちの動向をチェックしていきたい。

やっぱりユンボ・ヴィスマは強かった! パリ~ニース

まずは開幕が先だったパリ~ニースから。詳しいレース内容は筆者が執筆したレポートを参照されたい。

ログリッチ悲願の個人総合初優勝! S・イェーツが最終日勝利で総合でも2位に|パリ~ニース

ログリッチ悲願の個人総合初優勝! S・イェーツが最終日勝利で総合でも2位に|パリ~ニース

2022年03月14日

今大会を一言で表すなら、「ユンボ・ヴィスマはやっぱり強い」。第1ステージでのワン・ツー・スリーフィニッシュを皮切りに、ステージ3勝。会期中は常にマイヨジョーヌとマイヨヴェール(ポイント賞)を保持し、大会を完全支配した。

大会前からのチームミッションは、ログリッチを個人総合優勝に導くこと。第1ステージのサプライズで好位置に配備すると、あとはどのタイミングでマイヨジョーヌを着せるかだけだった。第4ステージの個人タイムトライアルで2位とまとめ、その翌日には労せずマイヨジョーヌを着用。1級山岳コル・ド・チュリーニを上った第7ステージでは、ライバルの猛攻をしのいでステージ優勝。この時点で、個人総合優勝が手の届くところまで到達した。

悲願のパリ〜ニース個人総合優勝を果たしたプリモシュ・ログリッチ ©︎ A.S.O./Alex Broadway

山岳・TTとハイクオリティのログリッチはもとより、ユンボ・ヴィスマというチームの高いレベルを象徴するシーンも、この大会では多く見られた。前述の第1ステージでは、新加入のクリストフ・ラポルト(フランス)の急加速から上位独占が生まれたし、ログリッチが調子を落とした最終・第8ステージでは、それまで調整的な走りに終始していたワウト・ファンアールト(ベルギー)が本領を発揮。名峰・エズ峠でのペーシングはさながらクライマーで、完璧ともいえる山岳アシストによってログリッチの失速を防いだ。

クリストフ・ラポルト(先頭)の加入で、ユンボ・ヴィスマの戦力に厚みが増した ©︎ A.S.O./Alex Broadway

スーパーエースのログリッチに「半分は人間で、半分はモーターだね」と評されたワウトのマルチぶり。また、スプリンターでありながらレース構築も担えるラポルトの加入効果。そして、すっかりレース構築に慣れたアシスト陣の安定感と、ログリッチを押し上げるためのベースは年々高まりを見せる一方である。これまでフランスのレースではトラブルに見舞われがちだったログリッチ自身も、これで“呪い”を払拭。昨年はクラッシュで順位を落とした“鬼門”の最終日は今年も苦しんだが、それを補えるだけのチームワークを今大会では証明した。

大会最終日にピンチを迎えたログリッチを救ったワウト・ファンアールト。さすがの万能ぶりを見せた ©︎ A.S.O./Alex Broadway

ユンボ一強状態だった8日間だが、ファビオ・ヤコブセン(クイックステップ・アルファヴィニル、オランダ)が第2ステージでスプリントを制したり、最後までユンボ勢に抗ったサイモン・イェーツ(チーム バイクエクスチェンジ・ジェイコ、イギリス)があわや総合大逆転かと思わせる最終ステージの独走劇など、他の見どころも多かった。エガン・ベルナル(コロンビア)の戦線離脱で戦力整備を急ぐイネオス・グレナディアーズは、総合表彰台の一角を押さえたダニエル・マルティネス(コロンビア)にメドが立ったことは大きな収穫だったといえよう。

パリ〜ニース個人総合上位3選手。2位にはサイモン・イェーツ(左)、3位にはダニエル・マルティネス(右)が入った ©︎ A.S.O./Alex Broadway

危機感を力に変えるポガチャルの強さ ティレーノ〜アドリアティコ

続いてティレーノ~アドリアティコ。こちらもレース内容は筆者が執筆したレポートを参照されたい。

ポガチャルが個人総合2連覇! 最終ステージはバウハウス勝利|ティレーノ~アドリアティコ

ポガチャルが個人総合2連覇! 最終ステージはバウハウス勝利|ティレーノ~アドリアティコ

2022年03月14日

完全な「ポガチャル独り舞台」である。本人は「私は無敵なんかではない」と謙虚に語るが、そこには「誰かが追いついてきて攻撃されるのではないかという危機感を常に持っている」という背景がある。

ステージで2勝を挙げたが、その勝ち方は異なった。リーダージャージを得ることとなる第4ステージは、最後の600mだけ“本気”を出した上りスプリント。実際に狙っていたのは第6ステージで、マルコ・パンターニが練習コースとして愛したモンテ・カルペーニャの2回登坂でライバルを圧倒。それも、「寒さをしのぎたかったのと、頂上通過後の下りにリスクがあったから、だったら1人で走ろうと思った」のが独走に持ち込んだ理由なのだから、ステージレーサーの域を超越している感がある。

ティレーノ〜アドリアティコ第6ステージで圧勝したタデイ・ポガチャル。寒さをしのぎたい一心でのアタックだったことを明かしている ©︎ LaPresse

もっとも、7日間のシナリオは第1ステージから上方修正をしていた。13.9kmの個人タイムトライアルで、トップのフィリッポ・ガンナ(イネオス・グレナディアーズ、イタリア)から18秒差の3位にとどめた。個人総合のライバルであり、TTに強いレムコ・エヴェネプール(クイックステップ・アルファヴィニル、ベルギー)に対しては7秒のビハインドで済ませた。ポガチャル自身は「20秒程度差をつけられても後から取り戻せる」と考えていたというが、結果として小差で終えられたことはその後の戦いを楽にしたのだった。

タデイ・ポガチャルにとって、第1ステージの個人TTで好位置につけたことがその後の戦いを楽にしたという ©︎ LaPresse

これまで数少ない不安の1つだった山岳アシストについても、ベテランのラファウ・マイカ(ポーランド)に加えて、今季加入のマルク・ソレル(スペイン)が機能したことで先々が明るくなった。パリ~ニースに回ってステージ1勝を挙げたブランドン・マクナルティ(アメリカ)や、総合エースとして走るジロ・デ・イタリア後にアシストへ回る予定のジョアン・アルメイダ(ポルトガル)、21日開幕のボルタ・ア・カタルーニャを走るジョージ・ベネット(ニュージーランド)らも控えており、レース全体を支配できるだけの戦力がそろった。ティレーノはその一端を見せる場となり、ライバルに対して威圧感を与える十二分なアピールとなった。

山岳アシストも充実し、より強さを増したUAEチームエミレーツ。スーパーエースのポガチャルをツール3連覇へ導くための戦力整備は完成形に達している ©︎ LaPresse

UAEチームエミレーツと同様に注目されるユンボ・ヴィスマは、この大会にヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク)を送り込み個人総合2位。結果的に、昨年のツール・ド・フランスの再現となった。ポガチャルの強さには屈したものの、敗因を「個人タイムトライアル(第1ステージ)での出遅れ」を挙げ、今後へ向けて全体的なレベルアップを目指すと宣言。レース内容自体には満足しているといい、ログリッチとの共闘を予定するツールへの手ごたえをつかんでいる。

個人総合2位にまとめたヨナス・ヴィンゲゴー。昨年のツールで見せた強さをここでもしっかり発揮した ©︎ LaPresse

個人総合3位のミケル・ランダ(バーレーン・ヴィクトリアス、スペイン)も、「自信になった」7日間だった。第6ステージではポガチャルより先にアタックを試みたが、「彼との実力差を測るために、あえて先に攻撃を仕掛けている」とその意図を説明。総合タイム差2分33秒差で終えたが、結果は受け入れている。

表彰台を占めた3人に対し、ポガチャルとの直接対決が注目されたエヴェネプールは、肝心の第6ステージで“バッドデイ”。結局、個人総合11位に沈んだ。第5ステージではポガチャル、ヴィンゲゴーと集団から抜け出してステージ優勝も視野に入れたが、まさかのミスコースでチャンスを逸している。ツキにも見放されたが、ステージごとの調子の波を最小限に抑えていくことがグランツールレーサーを目指す今後の課題に。とはいえ、まだ22歳。経験値を重ねながら、飛躍するタイミングを探っていく段階だ。

第6ステージでの失速で個人総合11位に終わったレムコ・エヴェネプール。経験を積んで安定感を身につけたい ©︎ LaPresse

ミラノ~サンレモ展望

次なるビッグレースは、19日のミラノ~サンレモ。ここから、シーズンは由緒あるワンデーレースが次々と開催される。

とりわけこの大会は春の訪れを観るものに感じさせることから、“ラ・プリマヴェーラ”(春)との愛称もある。まさに春の大一番、毎年大激戦が繰り広げられる。

ミラノからサンレモまで、毎年300km近いレース距離が設定されるが、今年は293kmで争われる。中盤のパッソ・デル・トゥルキーノ、終盤のチプレッサとポッジオは、いついかなる時でも健在である。

特にチプレッサ(登坂距離5.6km、平均勾配4.1%、最大勾配9%)と、ポッジオ(3.7km、3.7%、8%)は、レースの行方を左右する最重要区間。チプレッサを前にメイン集団のペースが一気に上がり、ポッジオで優勝候補たちのアタックがかかるのがいつもの流れ。そして、サンレモ・ローマ通りへの一気のダウンヒル。これらを経て、前線の人数が絞り込まれているのか、はたまた一団なのかで、優勝争いは大きく変わる。昨年は17人の小集団でヤスパー・ストゥイヴェン(トレック・セガフレード、ベルギー)が制し、一昨年はワウトがジュリアン・アラフィリップ(クイックステップ・アルファヴィニル、フランス)とのマッチアップに勝ち、それぞれ優勝している。

今年はその様相に変化があるかもしれない。ポガチャルの参戦で、予想がさらに難しいものになっているのだ。ティレーノは前述のとおりで、その前にはストラーデ・ビアンケで驚異の50km独走。未舗装の丘越えで見せた超人的な走りをミラノ~サンレモでも演じる可能性がある。本人は「さすがに勝手がまったく違う。スプリンターでもクライマーでもチャンスがあるからこそ、勝つには一番難しいレース」と述べる。と言いつつ、早めの独走もありそうと思わせるのが、最近のポガチャルの強さ。これに他のチーム・選手たちがどう対応するかが見ものとなる。

ストラーデ・ビアンケでは50km独走で勝ったタデイ・ポガチャル。ミラノ〜サンレモをどう攻略するか ©︎ LaPresse

2度目の優勝を狙うワウトは、パリ~ニースで順調な調整ぶりを披露。共闘のログリッチが「今度はアシストに回る」と宣言しており、両者のコンビネーションが終盤の丘越えで見られそう。

プリモシュ・ログリッチ(中央)とワウト・ファンアールト(右端)はミラノ〜サンレモでも共闘。今度はログリッチがアシストにまわり、ワウトで勝利を狙う構えだ ©︎ A.S.O./Alex Broadway

2017年の勝者ミハウ・クフィアトコフスキ(イネオス・グレナディアーズ、ポーランド)は、若武者トーマス・ピドコック(イギリス)との2枚看板。重要な局面では、ガンナが集団先頭に立ってペースメイクをするはずだ。

スプリンターでは、カレブ・ユアン(ロット・スーダル、オーストラリア)が一番手。この冬には登坂力強化を行い、終盤の上りにも対応できる脚を作った。2016年に勝っているアルノー・デマール(グルパマ・エフデジ、フランス)やジャコモ・ニッツォーロ(イスラエル・プレミアテック、イタリア)、マイケル・マシューズ(チーム バイクエクスチェンジ・ジェイコ、オーストラリア)も終盤まで残れば勝機がやってくる。今季好調のヤスパー・フィリプセン(アルペシン・フェニックス、ベルギー)は、マチュー・ファンデルプール(オランダ)が抜けている穴を埋められるか。

スプリンターではナンバーワンのカレブ・ユアン。冬場の登坂力強化が生かされるか ©︎ LaPresse

有力どころがそろうなか、3年前の覇者であるアラフィリップ(クイックステップ・アルファヴィニル、フランス)はティレーノ〜アドリアティコ後に気管支炎を患い、出走を取りやめ。次の目標へ向けて、プログラムの修正を図ることになる。

今シーズン限りでの引退を発表しているフィリップ・ジルベール(ロット・スーダル、ベルギー)は、モニュメント全制覇がこの大会にかかっている。すでにロンド・ファン・フラーンデレン、パリ~ルーベ、リエージュ~バストーニュ~リエージュ、イル・ロンバルディアで優勝。これまでのキャリアでマイヨアルカンシエルなど、数えきれないほどのタイトルを獲ってきた39歳にとって、残された勲章はミラノ~サンレモ、ただ1つになっている。

福光 俊介

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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